日本人に「脱・現金払い」は本当に定着するか

世界に後れを取るインフラ整備と意識

現金を取り扱う煩わしさやリスクから解放される日は来るのか(写真:izusek/iStock)

クレジットカードや各種の電子マネーなど、小売店や飲食店などで現金を使わずに、代金を支払う「キャッシュレス化」の波が、日本でも少しずつ広がってきている。スマホでQRコードやバーコードを使って決済ができるコンビニなども登場してきた。

ただし、世界はもっと先を行っている。2016年のデータを見ても、キャッシュレス決済の比率は日本が19.8%。一方、韓国は96.4%(野村総合研究所、経済産業省)に達し、イギリスも68.7%、オーストラリア59.1%、アメリカ46.0%などに遠く及ばず、ドイツの15.6%よりわずかながら高いぐらいだ。2015年のデータだが、中国でも約60%に達している。

技術革新が生んだ新キャッシュレス時代?

背景には、世界中がITと金融を融合した「フィンテック」を進めている動きと大きな関係がある。スマホや仮想通貨といった新しいイノベーションが次々と生み出され、現金を取り扱う煩わしさやリスクを回避しているのだ。

そもそも、キャッシュレス化というとクレジットカードを思い出す人も多いと思うが、世界中で拡大しているキャッシュレス化の波は「電子マネー」の活用だ。たとえば、中国の屋台でも行われている「QRコード支払い」は低コストで、中小の店舗などでも簡単に導入できる。

アメリカの若者の間で爆発的に流行をしている「Venmo(ベンモ)」はペイパルの子会社が手掛ける新しい決済システムだが、技術的にはこれまでのものとほとんど同じ。スマホにアプリをダウンロードして、銀行口座を登録すれば、友人同士、家族同士など、手数料なしでお金のやり取りができる。そのベンモを使った決済は、2018年4~6月期に142億ドル(1兆5700億円)と、前年同期比8割増と急拡大している。「クレジットカード消滅か?」と報道されているほどだ。

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  • NO NAME8fa05962634b
    ①政治献金や政務調査費が現金および手書きの領収書での決裁となっていて、既得権益の恩恵にあずかる議員さんたちが、本気でキャッシュレス化を推し進めていくとは思えません。

    ②日本は地震大国であり、北海道胆振地震の直後においては現金を所持していなかったものは何も買えなかったという事実があります。

    ③居酒屋関係は、支払いは割り勘の客層が圧倒的に多いですから、現金決済ができなくなれば、仕事帰りにちょっと一杯といった飲み会も、どんどん廃れていくことになるでしょう。会社と自宅の移動手段が自家用車しかないような地方中小都市では、飲み会の習慣すらあまりないのかもしれませんが、都市部ではよくある光景ですよね。上司から万札を何枚か渡され、端数は割り勘で払うことにするとか、いろいろな支払い方法が可能であるのも現金決済のおかげです。

    以上の①〜③により、日本ではキャッシュレス化も限度があるかと思います。
    up53
    down9
    2018/10/8 07:01
  • NO NAME7fc180ad61b7
    ハッハッハッ、サイゼリヤは無理だよ。中学生だけや、高校生だけのグループが圧倒的に多いんだよ。クレカなんか持っているわけないだろ。
    up31
    down8
    2018/10/8 07:11
  • NO NAMEb11cf8c2107c
    日本では塾帰りに飲食をする小学生も多い。これだけ消費活動を行う小学生は、世界的に珍しいとは思うが、小学生による飲食や文具の購入は現金によるしかないだろう。
    up24
    down10
    2018/10/8 07:56
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