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【私説・論説室から】

沖縄知事選のフェイク監視

 国政与野党の代理戦の様相を呈し、主要二候補の陣営が県土を二分する激戦を展開した九月末の沖縄県知事選。熱波は会員制交流サイト(SNS)など電脳空間にも及び、仁義なき“論戦”が繰り広げられた。

 発端は告示前の同月初旬。立候補予定の二人の支持率に関し、複数の「世論調査」結果がメールなどで出回った。どれも、一方が他方を大差で上回るとの内容だ。

 地元紙の琉球新報は、調査元とされる新聞社や政党に確認。「そもそも調査もしていない」「事実無根」との回答を得て、八日朝刊で「虚構のダブルスコア」と報じた。

 その後も、SNSなどの知事選関連情報を検証する記事を掲載。選挙戦の最中に引退した県出身の歌手安室奈美恵さんが特定候補を支持しているとして拡散された投稿には、最初の投稿者を突き止めた上、名指しされた陣営にも取材し偽(フェイク)と判定した。

 候補者が犯罪に関わったかのような真偽不明情報が、影響力の大きい首長経験者や国会議員のシェアによって広がった現象も追い、名誉毀損(きそん)などに当たる可能性を指摘した。

 「真偽の判別には困難もあったが、投票前に有権者に正しい事実を伝えなくてはと考えた」と知事選取材班の滝本匠(たくみ)キャップ(45)。沖縄タイムスも同様の取り組みを見せ、疑わしい情報六十件の検証結果を公表した。報道機関の新たな使命を感じる。 (白鳥龍也)

 

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