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【社説】

週のはじめに考える 未来を拓く答えがある

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 高齢者の自立した生活をどう支えていくのか。注目されている大分県での介護支援の取り組みを通して、知恵と工夫の大切さを考えてみました。

 高齢者がなるべく介護保険サービスを使わずに、元気で暮らし続ける。そのために介護事業者や自治体、住民が一体となってその実現を目指す。大分県での取り組みはまさにそうです。

 大分市のデイサービスセンター「楽(らく)」はバリアー(障害)ばかり。段差があるし階段は急で室内には手すりもありません。歩くことを促しています。

 主に要介護度の軽い人が利用するデイサービスの多くは昼食や入浴などを提供し、利用者はレクリエーションを楽しみます。

◆リハビリに励む施設

 でも「楽」は違いました。踏み台昇降器などが並び利用者はリハビリに励んでいます=写真。利用者は「畑に行きたい」「買い物をしたい」などの思いを目標にしています。杖(つえ)をつきふらついていた人が数カ月のリハビリ後、すたすたと歩きだします。介護の必要度の軽い利用者でみると九割が改善したといいます。

 運営する事業者「ライフリー」の佐藤孝臣さんは、体を動かす機能を作業を通して改善させる作業療法士です。かつて勤務した病院で退院後に状態が悪くなりまた入院してくる人の存在が気になりました。体を動かす機会が減り足腰が弱ることに気付きました。

 高齢者の負担を減らす「お世話型介護」では状態を悪化させてしまいがちです。そこで佐藤さんはこの施設の運営を始めました。

 体を動かすことを求められるリハビリに抵抗を感じ利用初日でやめてしまう人はいます。一方で、元気になった“卒業生”を見て来る人もいるようです。

 自治体も支えます。介護保険サービスの利用はケアマネジャーがその人に合ったケアプランを作るところから始まります。プランは効果的に自立を支えるものにする必要があります。

 その点検は介護保険を運営する市町村の役目です。大分県の市町村はケアプランを個別に点検する関係者の会議を開いています。

 特徴は管理栄養士や歯科衛生士、作業療法士など多職種が参加すること。さまざまな専門家の目で利用者の状態を把握し一緒に考えます。できたプランは利用者を支えることになります。

 自立支援の強化に最初に動いたのは県でした。高齢化で介護費が増加、六年前に保険料をそれまでより約三割引き上げる必要に迫られました。初めて県平均で月五千円を超え、「衝撃が走った」と県福祉保健部の長谷尾雅通部長は明かします。県が専門職の団体に働き掛け市町村につなげました。

 財政課題はどの市町村も同じだからこそ危機感の共有が大切、都道府県の役割も小さくありません。財政難を嘆くのではなく、どう介護保険と高齢者の自立を支えるか、自治体はよく考えてほしい。

◆「元気の循環」がある

 自立支援はまだあります。

 例えば、人口約二万八千人の国東市は体操教室や住民の食事会、畑作業の手伝いなど助け合いの場をつくっています。運営は住民たち。リハビリで元気になった高齢者が出番を得て元気を保てます。

 「楽」の職員には“卒業生”もいます。自立できれば介護の支え手にもなれます。

 自治体が高齢者を元気にするプランを考え、事業者が実践し、住民が支えています。もし、ひとつでも滞ると元気が失われます。元気は循環するのです。

 その効果でしょう。要介護認定を受ける高齢者の率は、二〇一一年度末に県平均20・1%でしたが、一六年度末以降18%と全国平均の18・4%を下回りました。

 もちろん重度の人や疾患を抱える人は介護が必要です。費用の抑制が目的でもありません。

 「自立の押しつけ」はできません。「楽」はそうしていますが、本人の希望と同意を尊重し、リハビリが可能か見極める手法の活用も必要です。支援を広げるのなら、この精神と技術がセットでなければなりません。

 要介護認定数は全国で約六百四十六万人、うち軽度の要支援は約百七十七万人います。もはや介護保険だけで支えきれません。

 高齢者が元気な地域の実現はどの自治体でも大きな課題です。介護と高齢者に対する考え方を元から見直してみる。人材不足と財政難に向き合いながらどう取り組むのか、未来を拓(ひら)く答えのひとつになるのではないでしょうか。  

 

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