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要点をざっくり
- コープさっぽろは6日、札幌市内で理事会を開き、胆振東部地震による大規模停電(ブラックアウト)で発生した損害の賠償を北海道電力に請求する方針を固めました。
- 食品廃棄による損害は9億6千万円に達しており、取引先の企業、団体と連携し、近く北電に賠償請求の書面を送るとしています。
- 北海道電力は、復興費用も含め、多額の費用が重なり経営破綻となる可能性が極めて高くなりました。
コープさっぽろが北海道電力に損害賠償を請求
北海道新聞によりますと、コープさっぽろ(札幌、組合員数170万人)は6日、札幌市内で理事会を開き、胆振東部地震による大規模停電(ブラックアウト)で発生した損害の賠償を北海道電力に請求する方針を固めたと報じています。
食品廃棄による損害は9億6千万円に達しており、取引先の企業、団体と連携し、近く北電に賠償請求の書面を送るとしています。
道内の流通大手がブラックアウトによる損害賠償請求に動くのは初めてとみられています。
ちなみにコープさっぽろでは、電力自由化で「トドック電力」という、電力会社を立ち上げています。
また、コープ以外でも、停電で深刻な打撃を受けた企業や団体の中には、北電の責任を追及する動きがあり、一部の農協では、生乳廃棄などの被害に対し賠償を求める声が上がっているほか、道内に工場を持つ食品関連メーカーも損害額の算定を急いでいるということです。
戦後初めてのブラックアウト
9月6日午前3時8分、北海道胆振地方を震源とする震度7の地震が発生しました。
地震発生直後、震源地近くにあった北海道電力最大の火力である苫東厚真発電所(厚真町)の1、2、4号機がすべて停止。
供給力の4割強が一気に喪失。
そして玉突き現象で、北海道全域で電力が止まる『ブラックアウト』が起き、道内全世帯に当たる295万戸が一斉に停電しました。
ブラックアウトの発生は、戦後の9電力体制(現在は沖縄電力を含めて10電力)がスタートして以来、初めてのことです。
6年前から予測されていた「ブラックアウト」
2012年7月6日に、北海道大学大学院の永田晴紀教授が、電力インフラのあるべき姿を常識的に考えれば、現時点ですでに北海道電力の電力供給能力は「足りてない」とツイートで指摘していました。
苫東厚真発電所4号機に不具合が起これば、すぐにどこかを停電させる必要が生じる、「1回のトラブルにも対応できない状況」としています。
同僚の北海道大学・奈良林直教授が、この問題に対して北電に働きかけを行っていたにもかかわらず、改善されていませんでした。
2回目の経営破綻危機
今回、北海道全域で停電するブラックアウトをもたらした原因は、苫東厚真発電所への一極集中にあると指摘されています。
しかし、元をたどれば、かつてピーク時の電力需要の4割超を賄っていた泊原子力発電所(泊村)が、2011年の東日本大震災後、安全性の審査が進まず、12年以降動いていないことが原因です。
参照:北海道電力HP
この時に、原発依存度が高かった北電は、経営危機におちいりました。
原発の稼働停止により、火力発電所の燃料費や他社からの電力購入費が急増。
3期連続の赤字となり、15年3月期以降も赤字が続けば、純資産が底をつき、負債が資産を上回る債務超過になってしまい、経営破綻は時間の問題となりました。
この経営危機を、政府系金融機関や電気料金値上げなどの政府の救済策でなんとか乗り切りました。
救援策の副作用で顧客離れ
しかし、2度にわたる電気料金の値上げで、北海道の電気料金は全国でも最高水準となりました。
電気料金の高い負担を嫌った顧客は、比較的安価な新電力へと流れていき、北電の減少率は電力10社の中で一番大きい7.5%減となり顧客離れが顕著に。
コープさっぽろやセブン-イレブン・ジャパンも、道内の大半の店舗で新電力に変更しました。
今回のブラックアウトで、北電離れが一段と加速するのは必至。
地震に伴う復興費用も含め、ただでさえ経営状態のよくない北電の経営が火の車になることは必定と見られています。
さらに、コープさっぽろやその他企業からの損害賠償も加わると、経営破綻、一時国有化、その後泊原発の再稼働を軸とした再建となる可能性が極めて高くなりました。