はじめに
2020年の東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集ページのユーザーインターフェースに問題があるという指摘が出ている。例えば、神田敏晶氏による2018年9月27日の記事「むずかしすぎる!五輪大会ボランティア応募フォーム」では、募集に応じるにあたって、「精神的苦痛を強いられる」ほど入力がややこしいことが記されている。また、楽しいBADUIの世界というWebサイトの「BADUIの要因全盛りで熱意と技術力が試される東京オリンピック・パラリンピック2020ボランティア募集ページ」という記事にも、ボランティア募集ページのユーザーインターフェース上の問題がたくさん指摘されている。
使用できる言語の選択肢に「手話」
楽しいBADUIの世界の記事でも指摘されていたのだが、ボランティア募集ページには、応募者が使用できる言語を記入するフォームがあり、その選択肢に「手話」がある。
ここで、選択肢に「手話」が挙げられているのは大いに問題がある。フォームの中で「マルタ語」、「ミャンマー語」などと書かれているのと並んで「手話」とあると、手話がマルタ語やミャンマー語などと同じく1個の言語を表すように見えてしまう。
しかし、「手話」という単一の言語が存在するわけではない。実際には日本手話やアメリカ手話などさまざまな言語が存在する。それは、音声を使った言語で、ロシア語やドイツ語などさまざまな言語が存在するのと同じことである。
よって、「手話」という選択肢しか出てこないのは、言語の選択欄で「ロシア語」や「ドイツ語」を選ぶことができず、「音声言語」しか選べないようなものである。
「音声言語」ができると記入しても、そのできる音声言語がロシア語ならば、ドイツ語話者とは話が通じない。だから「音声言語」しか選択できないようだと困るのである。同様に「手話」ができると記入しても、その手話が日本手話ならば、アメリカ手話の話者とは話が通じないので、困ってしまう。
こうしたことを防ぐためには、言語の選択肢の中で「日本手話」や「アメリカ手話」など具体的な言語名を挙げるべきである。
英語版でも「手話」しか選べない
ちなみに、東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集ページには、英語版の入力フォームもある。この入力フォームでも言語の候補として “Sign language”(手話)が出てくる。これもまた日本語版と同じような問題を抱えている。