「16番ゲージ」とは?
ところで天賞堂がメインにしているのは、16番ゲージと呼ばれる線路幅が約16.5mmの鉄道模型だ。この線路幅の鉄道模型はHOゲージと呼ばれることもあるが、これは線路幅が1435mmのものを線路幅16.5mmに縮尺した、約1/87スケールのものを指す言葉だ。ご存知の方もいるかもしれないが、線路幅の狭い日本国鉄(現在はJR各社)の在来線車両を線路幅16.5mmの鉄道模型に合わせると縮尺は約1/80になり、本来のHOゲージとは縮尺が違ってしまう。そのためこれをHOゲージと呼ばないマニアも多い。天賞堂のWebサイトを見ても、HOゲージではなく「1/80 16.5mmゲージ」と記載されている。もちろん、載せて走らせる線路はHOゲージ用のもので問題ない。
音を出すことで臨場感を演出
最近の増えてきたのが、音が出る仕組みを備えた車両だ。天賞堂では「カンタム・サウンド・システム」と呼ぶシステムを搭載した製品を用意している。鉄道模型で音を鳴らすシステムはかなり昔からテープを利用したものなどがあったそうだが、現在のシステムはとてもコンパクトで、車両に内蔵したスピーカーから音が出る。手元のスイッチでオン/オフが可能で、汽笛や走行音などさまざまな音を手軽に再現可能だ。
このカンタム・サウンド・システムは電源があれば停まった状態でも慣らすことができるので、走らせなくてもディスプレイした状態で鳴らして楽しめる。音は実際の同じ車両から録音したもので、音の録音には同社社員が出向くことも多い。録音のために社員旅行の行き先をあるローカル線に決め、車両を貸り切ってみんなで録音したこともあるそうだ。これまで録音してきたサウンドライブラリーは相当な数になるという。
今年は、天賞堂が鉄道模型を始めて65周年にあたる。精密なディティールで飾ってより、走らせてよし、さらに音も楽しめる天賞堂の鉄道模型、手元にひとつ置いてみてはいかがだろうか。筆者も取材をしていて、とても欲しくなってしまった。
(文/湯浅英夫、写真/中村宏)