「天賞堂」をご存知だろうか? 天賞堂は銀座に本店を構える貴金属、宝飾、時計などを扱う店で、創業は明治12年という歴史ある企業だ。この天賞堂の製品の中でも特に有名なのが鉄道模型。「16番ゲージ」と呼ばれる線路幅が約16.5mmの鉄道模型をメインに製造しており、その精密な作りは日本だけでなく海外でも名を知られている。この天賞堂の鉄道模型の歴史やこだわりについて話を伺ってきた。

銀座に本店を構える「天賞堂」と、今回お話を伺った天賞堂 模型営業部 銀座店 店長の中山智晴さん。店の角にいる天使像が目印。地下1階と地上1階は時計や宝飾品売り場。2~4階が鉄道模型売り場で、自社製品以外の鉄道模型や中古品まで手広く扱っている
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鉄道模型は社長の趣味から

 天賞堂は明治12年(1879年)に印鑑を作る印房として創業。その後、時計や貴金属などを扱うようになった。鉄道模型を手がけるようになったのは昭和24年で、当時の社長が鉄道模型好きだったからだという。そういう経緯もあってが、そのころは「自分たちがほしいものを作って、希望するお客様に“お分けする”」と表現していたそうだ。

 昭和24年ということで、最初は進駐軍や米国向けの製品が中心だったようだ。国内向けの販売が増えてきたのは昭和30年代ごろからで、当時の花形である151系特急車両がヒットし、ロングセラーになった。しかし、どちらかというと天賞堂は蒸気機関車、電気機関車などの“機関車”を得意としており、マニアからは「カマ屋」と呼ばれることもあるそうだ。

正確な年代は不明だが、鉄道模型を扱い始めた初期のころの蒸気機関車
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最初は米国向けが中心だったこともあり、こうした海外の鉄道車両の模型が多かったという
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ロングセラーになった151系特急車両の模型。今でも人気が高く売れ筋なのは、1960年代~70年代の国鉄時代の車両だという
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ずらりと並ぶ機関車の模型。同形の機関車であっても個体や時期によって細かな違いがある。そうした部分の再現にもこだわるという
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社内の棚で保管されている鉄道車両。天賞堂の鉄道模型は昔から銀色の箱に入ってることから「銀箱」とも呼ばれる。なぜ銀色の箱にしたのかは、今となっては分からないという
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