沖縄知事選での大敗に見舞われつつ船出した、第4次安倍改造内閣。このままいけば来年8月には佐藤栄作政権を超えて戦後1位、11月には桂太郎政権を超えて日本憲政史上最長政権も見えてきたが、じつは安倍政権にはもう一つ、「史上初」の課題が待ち受けている。政界きっての理論派、田中秀征・元経済企画庁長官が語る。
――注目されたふたつの選挙、自民党総裁選挙と沖縄県知事選挙が終わりました。まずは先月30日に投開票された沖縄県知事選挙の結果をどう受け止めていますか?
田中:まず、大型台風24号の上陸と重なってしまったにもかかわらず、投票率が63.24%と前回より1%下回ったに過ぎないことに驚きました。
次に、投票で重視した政策が、辺野古移設問題が48%と半数に及び、経済振興25%の倍近かったことも驚きでした(毎日新聞世論調査)。
端的に言うと、辺野古移設に反対する意思表示のために、沖縄県民は台風をものともしなかったということでしょう。
それに、当選した玉城デニー氏の約39万票は過去最多得票で、次点の佐喜真淳氏の約31万票に大差をつけました。ふつうなら、今回の台風のような最悪天候の場合、組織選挙を展開する与党候補が圧倒的に有利なはずです。
玉城氏は無党派層の7割から支持されたと調査結果が示しています。ふつうは無党派層は天候に左右されることが多いのですが。いろいろな点できわめて異例な選挙でした。
――この選挙結果は当然、今後の沖縄基地問題に大きな影響を与えると思いますが、この点についてはどうですか?
田中:はっきりしていることは今まで通りにはいかないということです。日本政府も米国もこの選挙結果を真摯に受け止め、誠実に対応すべきです。
NYタイムズ電子版のオピニオン欄ではこう言っています。沖縄県民は「日本で最も貧しい」ので「不公平で不必要で危険な負担を押しつけることはできない」と。そしてこういう結果が出たからには「安倍首相と米軍の司令官は公平な解決策を見いだすべきだ」と。
幸い、前知事の故翁長雄志氏や玉城デニー氏の母体である「オール沖縄」は、「沖縄の基地をなくせ」とは言っていません。地政学的に沖縄が東アジアの要衝を占めていることは認めているわけです。
2009年に自民党政権が民主党政権に代わったとき、私は(1)基地の縮小、(2)負担の軽減、(3)危険性の除去、(4)環境の保全、(5)地位協定の改善、以上5点からもう一度検討し、交渉すべきだと主張しました。鳩山由紀夫首相の「少なくとも県外」という不用意な発言で混乱を深めただけに終わりましたが、今度はそのよい機会だと考えています。
そもそも「基地は住民の理解と協力が不足すると成り立たない」ものです。今までの方向や、日程を強行しようとすれば、逆に解決は遠のくばかりになります。
安倍晋三首相が、総裁として3選されて、新体制が沖縄問題について目に見える姿勢の転換を行うことが期待されます。