フィギュアスケート男子ソチ五輪5位で、プロスケーターの町田樹さん(28)が6日、さいたま市内で行われたフィギュアスケートの3地域対抗戦「ジャパン・オープン」と、アイスショー「カーニバル・オン・アイス」でプロとして最後の演技を行った。

「ジャパン・オープン」では、この日のためだけに作った2部構成の「そこに音楽がある限り」を披露。「ジャパン・オープン」では人間の人生の浮き沈みを表現した「人間の条件」を10分以上にわたり情感たっぷりに演じた。滑り終えると、氷上に別れを告げるように、右手で氷をなでた。

プロ引退セレモニーでは、「一言だけ話します」と言い、周囲への感謝、フィギュアスケートへの愛を3分40秒にわたって熱弁した。

「このような華やかなセレモニー、舞台を用意してくださって本当にありがとうございました。多くの方の力を借りたからこそ、作品を生むことができたと思っています。それから、ファンのみなさん、オーディエンスのみなさんありがとうございました。フィギュアスケートという身体運動はだれかに鑑賞されることを意図して実施される営みなんですよ。自分以外の他者に向けた表現活動だと思っています。だからこそ、オーディエンスのみなさんが必要なんです。幸い、ここにいらっしゃるスケーターの方々をはじめ、多くのスケーターが、日夜血のにじむ努力をして、素晴らしいパフォーマンスをしているからこそ、フィギュアスケートは隆盛を迎えています。このスーパーアリーナが満員になる。本当に幸せなことだと思います。選手、プロスケーターをみなさんの力で支えて応援してあげてください。フィギュアスケートをブームではなく、文化にみなさんの力で変えていってほしいと思います。これが私のフィギュアスケート実演家としての、最後の願いです。滑っていて、25年が走馬灯のように、決して平坦な道のりではなく、過酷なことが多かったんですけど、それでも1歩1歩涙を流しながら、血を流しながら、多くの方々に支えられながら、でも自分の足で前に進んできて、いまここに立てていることを幸せに思います。本当にありがとうございました」。

宇野昌磨、ザギトワらショーに出演したトップスケーターにもねぎらわれ、「氷上の哲学者」は笑顔でリンクを去った。

町田さんは早大大学院スポーツ科学研究科博士課程に所属し、フィギュアスケートを含む「アーティスティックスポーツ」を研究。今年4月からは慶大と法大で非常勤講師も務めている。大学教授という次の夢に向かい、今後も研究を進めていく。