「杉田水脈擁護」のドグマが蔓延する深刻理由

常識の欠如に無自覚な人たちが増えている

月刊誌『新潮45』に掲載された特集記事は「ズレの極み」だった(写真:共同通信)

スポーツ界の不祥事が続いている。レスリング、バドミントン、アメフト、ボクシング、そして体操と、週刊誌やワイドショーだけでなく、NHKのニュースでも大きく取り上げられた。セクハラやパワハラは線引きが難しいという人もいるが、前述のものは誰が聞いてもおかしいと感じる事案が多い。

なぜ加害側も被害側も長期間、そのおかしさに気が付かないのだろうか? 筆者は「エコーチャンバー現象」(自分と同じ意見の人だけが集まるコミュニティで議論をする中で偏った意見が増幅・強化されていく現象)に入ってしまっているからだと考える。以前の記事(「高齢男性による政治」が日本の諸悪の根源だ)でも論じたが、端的に言うと、自分の言動が世間とズレていることに気づくことができないのである。

その意味では、「LGBTは子どもを成さないから生産性がない」と断じた杉田水脈衆院議員の論文を擁護する月刊誌『新潮45』の特集記事は、ズレの極みといっても言い過ぎではないだろう。

不協和状態は居心地が悪い

LGBTの人口は13人に一人いるとされ、左利きの人より多いといわれている。左利き専用のハサミやマウスなどが世には流通しているが、それらを否定する動きがあるだろうか。

子を成さない=生産性がないとするなら子どもを持たない夫婦も生産性がなくなるし、さらに言えば、子を産み終えた人も生産性がないということになる。この言説を正とすると、この世の人口の半分以上が生産性なしということになってしまう。

しかし、杉田議員の主張や彼女を擁護する記事を支持する一定の層がある。それは、自分の認知が正しいのだという心理が働き、より強固な信仰をもっているようにみえる。

たとえば、喫煙者の肺がん発症率が高いといった多くのエビデンス(証拠)があるにもかかわらず、喫煙者はタバコをやめることが難しい。これも認知のズレ=認知的不協和が生じているわけだが、その不協和状態は居心地が悪い。

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  • NO NAME3d9e7fbe1009
    日本人にとっての正しさは、「多くの人が正しいと思っている事」であって、決して「論理的に議論を尽くして得た事」ではない。
    この場合、「多くの人」は「閉じた世界」では極端な場合二人以上で成立する。
    「〇〇協会」となれば、そのピラミッド構造を考慮すればざっと数十名は軽く居ることになる。比較的簡単に「みんな同じ考え=正しい考え」が成立する。
    しかも、論理的に考えることはしない(出来ない?)人でも、多数派を形成することにかけては極めて優秀な人がいる。彼らは、同類を嗅ぎ分けるのが上手だ。なので、最初2,3人でも、組織の上層部にすり寄り、更にあの手この手を尽くして、人事や金の差配を左右するようになる。
    こうなれば、組織の向かうベクトルは彼ら(おかしな連中)の思うままになる。

    彼らは強い。
    ただ一つ、「おかしな連中は必ずやり過ぎる。」その自滅割合は比較的高い。それだけが救いだ。
    up31
    down2
    2018/10/6 13:16
  • NO NAME5cdceae866c6
    批判だけでは、反感は水面下に根強く潜ってしまうんですよね。

    反LGBT問題の解決は遠いです。
    up20
    down2
    2018/10/6 13:09
  • NO NAME4faf88f110f0
    LGBTは保守とかリベラルとか関係ない問題なんだけど、偽善的に祭り上げられた感満載で、当事者の苦悩はむしろ深まっているかも。
    up19
    down5
    2018/10/6 13:21
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