東洋化成は日本で、アナログレコードの製造と印刷を手がけていて、現在は流通まで一貫して請け負っている世界でも珍しい会社です。「音楽のプロフェッショナルに聞く」第11回目は、アナログレコードの文化を支え続ける東洋化成にお邪魔して、カッティングエンジニアとして働く藤得成さんにお話を伺いました。再びアナログレコードの魅力に注目が集まる中、音楽とレコードを愛しながら働く藤得さんの嬉しさに溢れたインタビューです。(姫乃たま)
憧れのカッティングルームへ
藤得成さんと初めて会ったのは、とあるレコードを販売しているコンビニ(!)でした。東洋化成でカッティングエンジニアをしていると言うので驚いたのを覚えています。うわあ、レコードの溝を彫ってる人っているんだ……と、考えてみれば当たり前のことでしみじみと驚いたのです。
東洋化成のカッティングルームにお邪魔すると、藤得さんはレコードを聴いていました。スピーカーのほかに見慣れない機材がたくさんあって、コックピットみたいです。東洋化成はカッティングの際に立会いをさせてもらえると知人のミュージシャンたちから話は聞いていましたが、私は立ち会ったことがなかったので憧れていました。ここで一体、どんなことが行われているのでしょう。
藤得成さん(以下:藤得):ここでお客様からいただいたマスター音源を、アナログレコードのフォーマットに変換して溝を刻んでいます。この辺りの機械はデジタルからアナログに変換するためのアンプたちです。最近はデジタルデータでいただくことがほとんどですが、CDとDATを取り込むための機械もあります。アナログテープ用のオープンリールは、最近また、こだわっている方や、和モノの再発とかで使われていますね。変換する時にマスター音源と音が同じになるように音質を調整するので、そのための機械もあります。で、これでカットします。
ーーおおっ、このカッティングマシンでカッティングができるんですね!
藤得:しかもこれ、カットされた屑をバキュームで吸い込むんですよ。
ーーすごい、歯医者みたいだ……。
藤得:カッティングしたら顕微鏡で確認します。溝と溝がくっつくと針が飛んだりしちゃうので。これはちょっと溝が太めですね。100ミクロンくらいあります。だいたい60から80ミクロンくらいです。
ーーミクロン……? 素人が見ても全然わからない……。普通にうねうねしてるところもありますけど、これは大丈夫なんですか?
藤得:これは大丈夫です。
ーーうー、特殊技能。いまカッティングエンジニアって国内に何人くらいいらっしゃるんでしょう。
藤得:そうですね……6人とか7人とかですかね。
ーーえっ、少ない!!
藤得:僕がいま30歳なんですけど、アダルトな方々が多いのでもしかしたら最年少かもしれないです。東洋化成には私以外に2人いて、カッティング歴40年以上の手塚和巳という者がいま67歳です。
ーー技術が必要な仕事だから、最初は修行みたいなものがあるんですかね?
藤得:そうですね。僕は1年くらい手塚についていました。その後、西谷という者について、自分でもカッティングさせてもらえるようになって、今1年半くらいです。最初の頃は立会いのないカッティングを受けていて、お客さんとあまり会わずにカッティングしたテスト盤を送っていました。
ーーちなみにこれだけ毎日レコードを聴いていても、家で聴きますか?
藤得:聴きますね! レコードは盤面だけじゃなくて、アンプとかカートリッジの組み合わせとかでも全然サウンドが変わるじゃないですか。どれが正解っていうのもないですし、好みに応じてカートリッジを変えるのが楽しくて、いま家にターンテーブルが8台くらいあります。
ーーえっ、ジャズはこれで聴く、とかですか?
藤得:クラシックはこれとか、ロックはこれとか(笑)。カートリッジはもっとあります。自分だけの世界になれるじゃないですか。趣味が高じて、ジュークボックスまで買っちゃいました。
ーーえ、自宅にジュークボックスある人っています?!
藤得:(笑)。
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