怪奇蜘蛛男 蜘蛛男 昭和46年4月3日放映 放映第1話
脚本:伊上勝  監督:竹本弘一
 私は最近になってやっと石森章太郎氏の原作漫画を読んだのですが、これが面白い! そして、この第1話は
  ・本郷が拉致される場面
  ・立花藤兵衛の設定
  ・蜘蛛男の腕のデザイン
  ・2度の蜘蛛男との戦闘場面
に相違点が見られますが、ストーリーは概ね同じ展開です。特に「本郷が改造手術後に目覚め、脱出するまでの場面」や「本郷と緑川が埠頭倉庫に身を隠している場面」では、漫画と映像作品にほとんど同じセリフが登場し、番組企画の段階で石森氏・伊上氏の間で充分な調整が行われていたであろうことが想像できます。

 冒頭の本郷がバイクに乗っているシーンは、同じアングルの通過するシーンを何度も重ねることによって疾走感があります。竹本監督のアイディアと技が光ります。
 女戦闘員は登場しない方が良かったように思います。

 私は子どもの頃にはこの第1話を見る機会に恵まれませんでした。二十歳を過ぎた頃にレンタルビデオで初めて見たのですが、「強制的に拉致され、肉体に人工的な改造が施される」という描写に、目眩を覚えるような絶望感と哀しみ、怒りを感じました。それを表現した本郷猛役の藤岡弘氏の演技はなかなか素晴らしいと思います。

 本編のクランクインは小河内ダムから始まりました。最後の蜘蛛男との決戦シーンですが、この時の仮面ライダーのスーツを着けているのは、藤岡氏ご自身です。しかし他のエピソードとは異なり、
変身後のアフレコは藤岡氏ではないようです。また、ライダー独特の「トオッ!」という掛け声もまだ聞かれません。ジャンプシーンにも空中回転がなく、ライダーの背面からのショットとなっています。

 ベルトの風車に風圧を受け、それによって変身システムが発動する描写は、「改造人間」というコンセプトを視覚化した名シーンだと思います。漫画では体の人工筋肉などの機能を起動させるために仮面を着ける場面がありますが、映像作品では明らかになっていません。この第1話と第9話で、体はライダーなのに本郷の素顔を出している場面が登場します。しかし、仮面も含めて変身するシステムなのだろうということが、変身シーンの一連から想像できます。
 (サイクロン号に搭乗しての変身シーンはバンクフィルムですが、本編のクランクインの前に撮影されたので、サイクロン号はカウルにスリットのあるNG版のままです。本編では走行中に前輪がカウルに当たってしまうので、この部分が全く無いものに変更されました。)

 まだ改造人間同士の戦闘シーンの描写方法が確立していないので、竹本監督はコマ落としや早回しで表現しています。埠頭倉庫でルリ子を抱えて走る蜘蛛男のシーンでは移動車での撮影を望んだのですが、機材に恵まれない生田スタジオでは移動車が手配できず、仕方なく竹本氏はコマ落としの方法を思い付いたそうです。しかし、そのための素材として何テイクも撮影することになりました。

 緑川博士を取り戻すための第1回戦では戦闘員たちは「アァーーッ」という奇声を発していましたが、蜘蛛男との決戦である第2回戦では無言でした。まだこのあたりの設定は確立されていません。


 蜘蛛男は口から吐いた糸でダムの壁を登っていきます。それを追うライダーはジャンプで一っ跳び! 「クモ」と「バッタ」をモチーフにした改造人間の特徴を活かしたシーンです。
  ●蜘蛛男(岡田勝 声:槐柳二)
 原作漫画のデザインにほぼ忠実ですが、さすがに4本腕での造形にはなりませんでした。
 顔の3つの複眼がクモらしさを強烈にアピールしています。第1話登場怪人でありながら、この後に登場する「旧1号編」の他の怪人よりも、「2号編」以降の怪人の雰囲気を漂わせています。
 制作第1話であるが故に、マスクには毛が植えられるなど、かなり手の込んだスーツに仕上がっています。まだショッカー怪人のコンセプトが固まっていないため、ベルトは着けていません。
 劇中では本郷猛の拉致と、逃亡した緑川博士と本郷の抹殺を使命としています。「クモ」の改造人間ということを考えると、やはり改造用の人間の誘拐が主な使命なのでしょう。
 私は「クモ」というと「コガネグモ」を真っ先にイメージするので、色彩としては黒・黄の組み合わせがしっくりすると感じます。しかし赤・青という蜘蛛男の色彩は不思議と違和感がありません。
 3つの複眼のうち2つに覗き穴が空けられていますが、視界が悪かったので岡田氏自らが穴を大きくしています。


 まだ技の名を言いませんが、「ライダーキック」で倒されました。

恐怖蝙蝠男 蝙蝠男 昭和46年4月10日放映 放映第2話
脚本:伊上勝  監督:折田至
 監督は先日お亡くなりになった折田至氏です。

 ショッカーがマンションを丸ごと人間を操るビールスの人体実験場にしてしまうという設定は、なかなかスケールが大きい作戦だと思います。この頃はまだショッカーは本気で日本、いや世界を征服するつもりだったのでしょう^^;

 声だけが聞こえた後に目だけがアップになる蝙蝠男。かなりのインパクトがあります。着ぐるみのマスクから目が覗いているデザインは、「改造『人間』」というコンセプトをよく表わしています。しかし、この蝙蝠男のマスクは目の部分の穴が大きく、マスクの材質とスーツアクターの目の周りのメイクに違和感があるため、あまり成功しているとは思えません。
 その後に畳み掛けるように「ショッカー」の説明が入り、恐怖を煽ります。ジャーナリスティックな中江真司さんの語り口がニュースのアナウンサーのように淡々としていて、ショッカーの存在感がリアルに感じられます。映像はショッカーの残虐性を映し出し、救いの無い閉塞感があります。

 最初に蝙蝠男が現れるまでの描写は、たしかに「アクションヒーロー番組」というよりは「怪奇ホラー番組」としか言いようがありません。M-42のBGMが雰囲気を盛り上げます!
 放映当時は「子どもが怖がって困る」という苦情が殺到したそうです。(「困る」って、何に困るのでしょうか‥‥^^;) この路線が続いた『仮面ライダー』も見てみたかったと思います。

 このエピソードでも本郷がオートレースでヨーロッパを目指している描写があり、
高いレベルのバイクのテクニックを持っていることが印象付けられています。また、後年ショッカーと闘ってばかりの本郷がどうやって生活費を稼いでいるかが揶揄されるようになりましたが、ショッカーと闘っていない日常では、こうやって優勝賞金が生活費に充てられていたのかもしれません。
 同時に
城南大学の生化学研究室の研究員であることも盛り込まれ、本郷の頭の良さも描写されています。こうやって主人公・本郷猛の魅力を高めようとしているようです。

 本郷の所属する生化学研究室のある大学は、第1話では「城北大学」という名称でしたが、
このエピソードからは「城南大学」となります。この辺りの変更の経緯は不明です‥‥。
 主役が大学の研究員という共通の特徴を持った『ウルトラマンガイア』の高山我夢も城南大学の量子物理学の研究員だったり、多くの特撮を含む作品に登場する「城南大学」の名称ですが、その後のライダーシリーズでは『V3』の風見志郎、『ストロンガー』の城茂、『クウガ』の沢渡桜子やジャンなどが関係者です。
 一方、『X』の神敬介や『スカイライダー』の筑波洋、『アギト』の葦原涼は「城北大学」の学生や卒業生で、「城北大学」も健在です(^o^)

 蝙蝠男は人間を自由に操ることができるビールスを使って、征服計画の実験をしているところを本郷に見付かってしまいましたが、わざわざ本郷を襲わせたことが失敗だったように思います。

 おやっさんはルリ子を本郷から遠ざけようといろいろ画策しています。その時の表情など、悪気の無さと怪しさを表現した演技は絶品です!

 ビールスの犠牲になった人たちのメイクがスゴ過ぎます! 予算が少ない中で工夫した結果の描写でしょうが、この方法論は成功しているでしょう。暗くなった部屋での本郷と蝙蝠男の対決シーンも、怪しい雰囲気が充分過ぎるほど伝わります。照明だけでこれだけの効果が上げられることに感心します。(その後はあまりに定例化して、逆に陳腐になってしまいますが‥‥。)

 本郷と間違えておやっさんを花瓶で殴り倒すルリ子‥‥。え? ルリ子は本郷に父の敵討ちをするつもりだったの? ずいぶん短絡的なお嬢さんで‥‥。これでおやっさんが死んでしまったら立派な殺人です‥‥^^;

 今話の怪人が蝙蝠なので、ライダーとの戦闘は夜のシーンだけです。怪人・怪獣の怪しさが増すので、私は夜の戦闘シーンはそれだけでワクワクしてしまいます。
 しかし一般のマンション屋上でのロケだったため、近隣住民に配慮して充分な照明が使えませんでした。当時のあまり映りの良くないTVでは、暗闇で戦うライダーと蝙蝠男の区別がつかないことが問題視され、その後のライダーのデザイン変更に繋がったそうです。(この案は、結果として「2号ライダー」として実現されました。)

 今話で「トオッ!」というライダーの掛け声が確立しました。そして、その声も藤岡弘さんのものです。一方で、戦闘員たちは無言のままです。

 暗い映像ですが、とどめの「ライダー投げ」の時に、ライダーは蝙蝠男の腕を引きちぎっているようです‥‥。技を決めて着地した時には既に手にしているのが見えます‥‥^^;

 番組を通して、しばらくは本郷による緑川博士殺害の疑惑が続くかに思えましたが、あっさりと第2話で解決してしまいます。まあ、おやっさんを中心とした正義の側の結束を固めた方が、番組の魅力が増すという判断だったのでしょうか。あまりに呆気なく感じますが、これも「あり」でしょう。
  ●蝙蝠男(人間蝙蝠)(佐野房信 声:峰恵研)
 原作漫画では腕とは別に背中に翼が生えていました。翼のデザインが大きく異なりますが、逆に実在のコウモリに近くなりました。翼を持っていますが、飛行する描写が無いのは残念です。(あったとしても、「ドクガンダー」や「ムササビードル」のようなミニチュアによる表現になってしまうのでしょうが‥‥(T_T))
 劇中では首領からも本郷からも「人間蝙蝠」と呼ばれています。(唯一、自己催眠から目覚めた報告をする戦闘員が「蝙蝠男」と呼んでいます。)
 「ヒャッヒャッヒャッヒャッ」という笑いのような声が、無力な人間や新米改造人間の仮面ライダーより優位にあるように感じさせてくれます。スーツアクターの佐野氏もそのシーンでは目を細めているようで、その演技はセリフとの一体感があります。
 自己催眠により戦闘員のような姿になった蝙蝠男の役も、スーツアクターの佐野氏が演じられました。
 タイツそのままの造型に所々毛が植えつけられた、
あまりにシンプルなスーツであったので、腹部にボリュームを持たせるために戦闘員と同じショッカーベルトを着けられました。その後の制作第3話・第4話・第5話に登場する「サラセニアン」「さそり男」「蜂女」はベルトを着けていません。しかし組織に所属するアイデンティティとしてのベルトの着用が好評で、制作第6話の「かまきり男」からは正式に基本的にベルトが着けられるようになりました。

 「ライダー投げ」で倒されました。

人喰いサラセニアン サラセニアン 昭和46年4月24日放映 放映第4話
脚本:市川森一、 島田真之 監督:折田至
 このエピソードこそ、私が初めて見た『仮面ライダー』でした。硬質なマスクで激しいアクションを展開するダークなヒーロー。ジャンプの度になびく真紅のマフラー。激しく炎を吹き上げて爆走するサイクロン号。そのスピード感とカッコよさに一発でシビレタものでした(^o^)

 冒頭、懐かしの遊園地「向ヶ丘遊園」(平成14年3月31日閉園)で事件が起こります。このエピソードでの城南大学は「長沢浄水場」で撮影されたり、生田スタジオ近辺でのロケに集中しています。

 お姉さんを誘拐された弟役に、後に『キカイダー01』でアキラ役を演じられた五島義秀さんが出演されています。

 ケンちゃんの手を握ると、力のセーブができずにケンちゃんの手を傷めてしまう本郷。自分が改造人間であることを思い知らされるシーンですが、こういった描写はこの後には登場しなくなります。本郷が改造人間であることの悲哀は、その後の番組の展開上、あまり必要ないと判断されたのでしょうか。そしてむしろ、改造人間としての超能力のカッコよさを前面に押し出して、ヒーローとしての活躍を描くようになります。

 ショッカーの地下アジトに連れ込まれたお姉さんは、そこで繰り広げられる人体実験を目の当たりにし、人間の言葉を一切発しないサラセニアンの異形の姿を目にしたり、悪夢のような体験をします。セットや小道具にチープな匂いが漂っているのは否めませんが、そこに描きたい世界の「恐怖」は充分過ぎるほど伝わります。これこそが当初の『仮面ライダー』の目指した世界観でしょう。
 そして、ライダーも「トオッ!」という掛け声は発しますが、一切会話はしません
 これらの描写は、番組の企画に参画していた市川森一氏の脚本(島田真之氏との共同名義)だからこそでしょう。このエピソードには企画段階で目指した『仮面ライダー』という作品の本質が盛り込まれていると考えられます。

 お姉さん役の篠雪子さんはなかなか迫真の演技です。人体実験が目前に迫る恐怖を力演されています。声がカワイイ!

 制作第3話の今エピソードは、第2話に続いて夜の戦闘シーンです。人知れずショッカーと闘う仮面ライダーの象徴ともいうべき描写です。第2話よりは照明効果が良く、見やすくなっています。この時のライダーのスーツアクターは岡田勝氏でした。
 そして「ライダーキック」の呼称が初登場します。

 今回の本郷は、子どもに合わせた話し方が印象的です。全話を通して見ても、これほど子ども目線の話し方は珍しいでしょう。そのため、本郷の優しさが前面に出ています。‥‥が、その一方で藤岡弘さんの固さが目立ってしまいます^^; まだ駆け出しの新人ですから‥‥。


 戦闘員たちの奇声は、サラセニアンと同じ「エ、エ、エ、エ」というものです。
  ●サラセニアン(サラセニア人間)(中村文弥 声:中村文弥)
 本文中でも触れましたが、劇中では「エ、エ、エ、エ」という不気味な声を上げるだけで一切言葉を発しません。植物の改造人間であるための演出・設定なのでしょうか。
 目だけがギロリと睨む演技は、初期ショッカーの怪人デザインによるマスクの賜物です。また
中村氏は終始細かく震えているような演技をしていて、改造による副作用のような印象が感じられました。細かいところまで演出されていると感心します。
 中村氏は後に仮面ライダー2号のスーツアクターを務めます。
 劇中では首領から「サラセニア人間」と呼ばれています。
 蔦をイメージしたムチを振るってライダーと闘いますが、ライダーにムチ?を掴まれて空中高く投げ上げられる描写があります。ライダーはバッタの改造人間なのでジャンプの特殊能力がありますが、
サラセニアンは植物怪人なので当然ジャンプの能力はありません。後の怪人たちが一様にジャンプ→空中回転を上手にするのに違和感を覚えていましたが、初期はきちんと「バッタ以外の怪人」はジャンプしませんでした。(蜘蛛男は糸(というかロープ)を使って壁を登ります。蝙蝠男には当然飛行能力があるのでしょうから、ジャンプするのは「あり」です。)
 ショッカーの人材を確保するための誘拐を主な使命としていたので、戦闘能力はあまり高くないのでしょう。

 「ライダーキック」で倒されました。

怪人さそり男 さそり男 昭和46年4月17日放映 放映第3話
脚本:伊上勝  監督:竹本弘一
 またまたいきなり名前が^^; 中江真司氏のナレーションでは「さそり人間」と呼ばれています。

 OPのクレジットにもあるように、この頃は「首領」の名前そのものが「ショッカー」という設定のようです。本編中に納谷悟朗氏の声で「偉大なる支配者、『ショッカー』」というセリフがあります。
 首領が指令を下す描写がまだ確立されておらず、ショッカーのレリーフ中央のランプが点滅したり、サイレンのような音が鳴ったりしません。(折田監督の第2・4話ではレリーフのランプの点滅と音はありましたが‥‥。)

 死刑となる囚われの身の人々。檻のデザインが独特です。高橋章氏のセンスが光ります。しかし造形物は角材を着色しただけのものだと丸わかり‥‥。予算とスタッフの人数が揃っていれば、スタート時からものスゴイ番組になっていたことでしょう。

 安全地帯まで10分以内に辿り着こうとする死刑囚たち。悪魔的なショッカーの描写が続きます。

 仮面ライダーの能力テストをする藤兵衛と本郷。8mmカメラ(のようなもの)で距離が計測できるのでしょうか^^;
 垂直ジャンプが15m30、水平ジャンプが48m70! しかも「この能力は訓練すればまだまだ伸びる」とは。これが『仮面ライダー』という番組の「味」です。訓練して肉体を鍛え、より強い敵にも立ち向かう姿勢。己の肉体そのものが闘うための武器であることが、『仮面ライダー』の醍醐味です。

 「変なニュースよ」と言いながら部屋に入ってくるルリ子さん。ん~、美しい‥‥。『アイアンキング』の高村ゆき子の時よりもこちらの方が美しいです。でも、ちょっと滑舌に難あり‥‥。

 「‥‥ショッカー。やつらの暗い密やかな動きをだれも知らない。信じようともしない。」この本郷のセリフこそが、初期ショッカーの設定そのものです。まさに文字通り「暗躍」する秘密結社でした。そして、仮面ライダーも人知れず闘う戦士でした。だから、第4話でのケンちゃんが仮面ライダーを知らないのも当然でした。それが2号編になってからは、「仮面ライダー」はだれもが知っている存在となり、第17話ではTV中継されているプロレスのリングにまで上がってしまいます^^;

 妙な手の動きをするさそり男のシルエットと手のアップから、顔のアップ。そして暗闇で本郷と格闘して早瀬五郎の登場。いかにも怪しいのですが、早瀬役の渚健二氏は『忍者部隊月光』『戦え!マイティジャック』で正義の味方を演じていらっしゃったので、「もしかしたら‥‥」のミス・ディレクションを誘うキャスティングなのでしょう。
 渚氏の奥様は、『戦え!マイティジャック』で共演した江村奈美さんなんですよネ。羨ましい~!

 またまた登場の女戦闘員ですが、これが最後の登場です。彼女たちが登場したのはどちらも竹本監督のエピソードですが、レオタードにタイツ姿は竹本監督の趣味なのでしょうか^^;
 今回の戦闘員たちは「シュシュシュ」という音を発しているばかりです。戦闘員といえばお馴染みの「イィーッ!」という声はまだ登場しません。

 ホテル内での本郷と戦闘員の戦闘シーンは、手持ちカメラで寝転がって撮影されているのでしょう。映像の天地が逆さまになったりと、かなり見にくいと感じます。竹本監督のアイディアが失敗に終わったのでしょうか。

 伊藤老人は呆気なく殺されてしまいます。正義のヒーローがメインのゲストキャラを守りきれないなんて、当時としてはかなり珍しい展開です。

 いよいよ正体を現すさそり男! 顔のマスクを剥がすような描写はなかなかよくできていると思います。そういえば、制作順でここまでに登場した怪人の中で、人間に変身した怪人はいませんでした。(蝙蝠男は戦闘員の姿にはなりましたが)
 本郷へのライバル心からショッカーに積極的に加わり、改造人間となった早瀬五郎の追い詰められた心境と歪んだ心が悲しいです。

 戦闘シーンはでんぐり返しの逆回転や組体操のピラミッドなど、よくわからない展開です。砂の中に潜った戦闘員たちを超感覚で見つけ、一撃でやっつけるライダーをカッコいいとは感じられません‥‥^^;

 早瀬五郎の「歪んだライバル心」という重いテーマのエピソードでしたが、アクションや撮影を狙い過ぎて失敗した感のあるものになってしまいました。
  ●さそり男(佐野房信 声:池水通洋)
 まだショッカーベルトを着けることが決まる前の怪人なので、このエピソードでは着けていません。しかし、この後に再登場する時には必ず着けさせられています。
 サソリを彷彿させる茶色の体色ですが、腕と脚にあるギザギザ模様が良いアクセントになっています。
 サソリの特徴的な尾を頭部にまとめてしまうデザインには、その発想に驚きます。しかし、もう少し大きく造型された方がわかりやすかったかも‥‥。
 さそり男は世界征服のための作戦を実行するのではなく、珍しく本郷猛=仮面ライダーを倒すための刺客としてだけに登場した怪人です。

 「ライダーシザース」によって倒されました。

怪異! 蜂女 蜂女 昭和46年5月22日放映 放映第8話
脚本:滝沢真理 監督:北村秀敏
 今回からオープニングに「仮面ライダー=本郷猛は改造人間である。彼を改造したショッカーは世界制覇を企む悪の秘密結社である。仮面ライダーは人間の自由のために、ショッカーと闘うのだ。」というナレーションが入るようになります。「世界征服」ではなく「世界制覇」なのですネ^^;
 そして、この時の映像での「さそり男」は、胴の部分のスーツを着ていません^^; そういえば講談社の特写スチールでもタイツのままです。紛失してしまったのでしょうか。

 このエピソードでは「ケンちゃん」シリーズでもお馴染みの、高津住男さんがゲストですネ。ごくごく平凡な家庭が、メガネを壊してしまったことでショッカーの魔の手に堕ちていく‥‥。そんな「日常に潜む恐怖」を実感させてくれる素晴らしいキャスティングです。

 娘のサチコちゃんは、大人がアフレコしているのでしょうネ。妙に落ち着いていたり、声のトーンが高過ぎたり‥‥。
 メガネの音波催眠にかかった父親に向かって「パパ、病気なの?」と言うセリフは、子どもらしい発想の名セリフです。

 声のトーンといえば、蜂女の声をアフレコしている沼波輝枝さんは、シリーズを通してほとんどの女性怪人のアフレコを担当されています。感情を持たない、脳天から響いてくるような甲高い声は、ワザとそのようにしているのか‥‥。神経を逆撫でされるような声です^^;(これは演技に対する誉め言葉です。)
 あの声で「バカなやつ!」と言われると、ムカッときますネ(^o^) このセリフがPSのゲームにも使われるとは‥‥。

 最初にメガネに受像された蜂女の姿は、逆光で背中の羽根も美しい。

 一般人だと思って油断していた本郷が、サチコの父親に思いっきり突き飛ばされて大転倒してしまいます。本郷も日常生活の中では力をセーブすることができるようになったということなのでしょうか‥‥。いや、そういった描写は不要と判断されるようになったのでしょう。
 しかし、いざとなれば鎖を引きちぎるくらいの力はいつでも出せるようです。このエピソードでも、蜂女の毒針にやられて縛り付けられていた鎖をちぎっています。

 蜂女のアジトとして「お化けマンション」が初登場します。『仮面ライダー』をはじめ、第2次怪獣ブームの特撮ヒーロー作品には頻繁に登場する名ロケ地でしたが、平成3年に取り壊されたそうです。一度現地を見てみたかった‥‥。

 ルリ子さん1人がメガネ屋の様子を探りに行くことになりますが、本郷が行けない理由が「実験」のためだとは‥‥。きちんと社会生活を送りながらショッカーと闘っていたのですネ。それにしても、「研究」(本郷の生業)のためにショッカーによると思われる事件の探索を続けられないとは、妙に現実的です。探偵を職業としていた『月光仮面』や『七色仮面』を祖とする特撮ヒーロー作品の伝統からすれば、「大学の研究者」というのはかなり異色のヒーロー像です。
 その実験中にメガネの催眠音波の仕組みを推理する本郷は、科学者という設定を最大限に活かした描写です。

 今回は珍しくAパートでのライダーへの変身はありません。

 サチコの父親を救出して、アジトを脱出したところでルリ子と会うライダー。思わず差し伸べた手を引っ込める描写に、自分は実は本郷猛であり、改造人間であることを隠そうとしていることが表わされています。その後に畳み掛けるように本郷の手の平の傷口がみるみる消えていく描写と、「改造人間であることを知られたくない」という心情が吐露されています。
 このエピソードでは本郷は自分を「改造人間」とは呼ばす、「改造された部分を持っている」という表現にこだわっているようです。これは「大部分の肉体は元のままで、『一部』に人工的な改造が施されている」ということを信じているからなのでしょうか。

 蜂女→毒針→フェンシングという発想でしょうか。今回の戦闘シーンは剣戟です。これは大野剣友会の得意とするところでしょう。
 このエピソードの戦闘員は、アジトでは男性の声で喋るヤツもいましたが、戦闘シーンでは姿は男性でも女性の声で「ヤァーッ」と叫びます。
  ●蜂女(岩本良子(瀬島達佳) 声:沼波輝枝)
 ショッカーベルトを着けることはまだ決定前なので、黄色い布を腰に巻いている姿が優雅です。第13話に再登場する時にもベルトは着けていませんでしたが、フーセンガムのCMではとうとうベルトを着けていました。
 初の女性怪人ですが、胸のデザインに女性らしさが現れています(?^^;)。女性怪人ということで、妙な憧れを抱いた男子児童も多かったのでは?
 戦闘シーンでは大野剣友会の瀬島達佳さんが演じていますが、それ以外のシーンは戦闘シーンでのアップカットも含めて岩本良子さんが演じられています。顔を半分露出させるデザインのマスクなので、頬のラインがキレイな女優さんでなければ務まらなかったでしょう。第13話でもガムのCMでも岩本さんが蜂女を演じられています。
 使命はメガネの催眠音波によるショッカーの人員確保と、毒ガス製造工場の責任者のようです。冷酷な性格のようで、冷たく言い放つ罵倒と高笑いが印象的です。本文中にも書きましたが、沼波輝枝さんの声が稀に見る徹底した悪役女性をさらに印象深くしています。

 怒りの「ライダーキック」で倒されました。

怪人かまきり男 かまきり男 昭和46年5月1日放映 放映第5話
脚本:滝沢真理 監督:北村秀敏
 「雨宮ちか子」役の水上竜子さんは、『ウルトラセブン』でゴドラ星人が変身した「赤タイツの女」の役を演じていた方です。全く印象が異なっていて驚きです。

 懐中電灯の光に浮かび上がる時計は、深夜2時を指しています。そんな時間にかかってくる電話を不審に思わないのでしょうか。しかも女性一人が残業?当直?
 激しい物音、奇妙な声、歩み寄る足音‥‥。怪談ものの定番の描写ですが、やっぱり恐いです(^^ゞ シルエットは守衛のようなのでドアを開けると‥‥。目の前で人間が変死してしまったら、私だったら平常心ではいられません。
 さらに足音が‥‥。そしてドアのすりガラスに浮かぶ異形のシルエット‥‥。こんなシーンを、スタッフはきっと楽しんでつくっていたのでしょうネ。

 またまたレースの練習をしている本郷とおやっさん。大きな地震が起きて地割れにバイクがはまり、本郷が転倒してしまいます。仮面ライダーならそれくらいジャンプしてかわすと思っていたので、初めて見た時には違和感がありました^^;
 そして「マグニチュード」と「震度」を混同しているおやっさん。その後おやっさんは「アミーゴ」で史郎やルリ子たちに偉そうに説明していますが、ルリ子による「わかったワ、その知識の『震源地』は猛さんなのネ?」というツッコミにニヤリ(^o^) ウマいセリフです。

 今回のショッカーは人工的に大地震を起こすために、7回もテストをしていることを本郷が推理します。ショッカーにしては珍しく、なかなか用意周到な作戦です。

 ショッカーに利用されたちか子が本郷を穴の中へつき落としますが、その時の表情にゴドラ星人っぽさが垣間見られます(^o^)

 本郷はこのエピソードまで、バイクで走ったりマンションから飛び降りたりして変身してきていました。ですから、ベルトに風圧を受けられない穴の中では変身できないというサスペンスが‥‥。変身ポーズでいつでも変身できるわけではない初期の設定が活かされています。しかし、かまきり男が仕掛けた時限爆弾の爆風で無事に変身することができました。これは逆転の発想で、危機が好機に転じたのですネ。
 ん? ということは、爆弾を使わなかった方が、本郷は穴から脱出できずに衰弱死していたかもしれないのか‥‥。こういう詰めの甘さがショッカーらしいです。

 やっとかまきり男の全身が見られました。ライダーとの直接の戦闘はほとんど無く、鎖でライダーの首を絞める程度とは‥‥。しかもすぐに逃げられてしまうし‥‥。
 ライダーにちか子を奪い返され、首領にお説教されているかまきり男は正座‥‥^^;

 「2人ともショッカーという鬼に追われる仲」はちょっと狙い過ぎのセリフです‥‥。
 なぜか「かまきりの卵」のことを知らないと言ったり、「私、『ちか子』なんていう名前じゃありません。」と言い出すちか子さん。どうやら、かまきり男に操られているようです。
 そこへ登場のかまきり男。ちか子さんは背後から電気スタンドで本郷の頭を。やっぱりゴドラ星人だったのか^^;

 今回の戦闘員たちは「ア゛ーーッ」という声を発しています。

 「かまきりの卵」が大地震を起こす核爆弾のスイッチなのはイイのですが、わざわざ外殻を割って使うとは‥‥。しかも手動だし^^; なかなか良いネーミングなので、せめて時限装置にしてもらいたかったです。
  ●かまきり男(中村文弥 声:辻真人)
 スーツのデザインは限りなくシンプル。緑の薄いマントが「カマキリの羽」を思わせ、弱くなりがちな背面デザインをウマくまとめてあります。
 カマキリの頭部は逆三角形で、目が上部に付いているのが特徴ですが、この怪人は面長、しかも目は顔の中央にあります。どうやってもカマキリには見えないのが残念です。
 頭部にあしらわれているのは、触角ではなくカマキリの鎌でしょうか。
 せっかく左手に鎌を持っているのに、なぜか鎖鎌を併用します。改造人間としての特殊能力は特に描写されていませんでした。
 今回から標準装備となったショッカーベルトを装着しています。
 私は昔から手首が見え過ぎなのが気になっていました。

 「ライダーキック」に倒されました。

死神カメレオン 死神カメレオン 昭和46年5月8日放映 放映第6話
脚本:伊上勝 監督:折田至
 この第6話は、制作のキー局である大阪・毎日放送の招聘による関西ロケの前後編の前編です。(この第6話は最後に琵琶湖が登場するだけですが‥‥。)伊上氏が得意の「お宝争奪戦」の脚本を執筆されて盛り上げています。

 「ナチスの鉄箱」の秘密を知る砂田元海軍少佐役で、神田隆さんが出演されています。

 死神カメレオンが姿を現すシーンでは、『仮面ライダー』では珍しく光学合成が使われています。(これまでにも戦闘員が死ぬシーンや、怪人の特殊能力で犠牲になる人々の描写にはオーバーラップによる編集はありましたが。)

 ユミちゃんの「パパにばっかり迷惑を掛けていた」というのは「パパに迷惑ばっかり掛けていた」の間違いでしょう。
 死神カメレオンと戦闘員たちを撃退したあとに潜水艦の模型を借りる本郷の表情は、優しさに溢れています。藤岡さんの演技が一皮むけたようです。

 土木作業員が鉄箱を見つけた時に、人魂が現れたのはなぜ?

 ライダーと戦闘員の戦闘を眺める死神カメレオン。現れる時のオーバーラップの編集と撮影が見事です。死神カメレオンは直接戦闘には参加せず、姿を消す特殊能力で隠密行動に徹するようです。
 ライダーのアクションシーンに使われる、ラテックス製のマスクのCアイが赤目になりました。旧1号としては違和感があります。
 戦闘員たちの声は、今回はエコーの効いた「アーッ」という声です。

 仮面ライダーの弱点を探る首領とショッカー科学陣。自分たちで作った改造人間なのに‥‥^^;
 弱点を「ベルトの風車ダイナモだ」と進言するハインリッヒ博士は、『ジャイアントロボ』でロボを作った「ドクトル・ガルシア」役を演じたジャック・オンガンさんです。

 再び「長沢浄水場」の登場です。昨年の夏に行ったので、何だかお馴染みの感じがします。行っておいて良かったです(^o^)/
 ユミちゃんが入院している病院の廊下のセットは、蝙蝠男にビールスの実験場にされたマンションと同じですネ。

 珍しくバイクではなくタクシーで病院へ行く本郷。そのタクシーの中でルリ子さんとともに催眠ガスを吸わされ、眠っている間に線路に置かれて小田急線に轢き殺されそうになりますが、間一髪で目覚めます。ここで本郷の能力について中江真司さんのナレーションによる解説が入りますが、今回は死神カメレオンや本郷の能力についての解説ナレーションがやたらに入ります。

 今回から戦闘員はアイマスクを着けます。ですから、本郷が戦闘員に変装してアジトに潜入する描写が可能になりました。
 しかし、東京支部からの連絡で首領に正体がばれてしまう。罠に嵌まった本郷は仮面ライダーに変身するが‥‥で次回へ。
  ●死神カメレオン(カメレオン男)(岡田勝、佐野房信 声:沢りつお)
 頭部の角から推測すると、ジャクソンカメレオンがモチーフとなっているようです。
 頭部から胸にかけて小さな丸い突起があり、カメレオンらしさに溢れています。マスクの目の造型も素晴らしいです。
 マスクの首部分の裾は、本来は上半身のタイツの首の中に入れなければならないのでしょう。マスクの裾がピラピラしていることが気になって仕方ありません。
 周囲の風景と同化し完全に姿を消すことができる能力を持ち、隠密行動が得意です。この第6話では戦闘には加わらないので、戦闘能力は判別不能。

死神カメレオン 決斗!万博跡 死神カメレオン 昭和46年5月15日放映 放映第7話
脚本:伊上勝 監督:折田至
 第6話に続き、関西ロケの前後編の後編です。今回はサブタイトルにもあるように、大阪万博(『仮面ライダー』が放映開始された昭和46('71)年の前年の昭和45('70)年開催)跡地の遊園地「エキスポランド」でロケが行われています。
 OPでお馴染みの、ライダーがサイクロン号(アクション用のカウル無し、つまり普通のバイク)で階段を昇る(降りる)シーンも、この時ここで撮影されています。

 前編はライダーが落とし穴の罠に落ちるストップモーションで終わりました。

 そして、その落とし穴はライダーが風力エネルギーを得ることができず、壁の厚さは1mでパワーを分散させて破れないようになっています。ここまで対ライダーの研究が進んでいるのに、この罠は今回限りの登場です。まぁ、毎回落とし穴でライダーを苦しめる展開なんて、だれも見たくないでしょう(^^ゞ
 落とし穴の深さの表現は、編集による古い表現法ながらなかなか頑張っていると思います。「やりたいことは理解できる」というレベルですが、視覚的には実感できます。

 Cアイに電飾が仕込まれたマスクによって、ライダーのエネルギーが無くなっていく表現が採られています。全98話の中では第47話「死を呼ぶ氷魔人トドギラー」や第59話「底なし沼の怪人 ミミズ男!」などで、「ライダーパワー」によって一時的なパワー全開を表現しているシーンが見られますが、逆にエネルギーが無くなる描写というのは珍しいと思います。
 「ベルトの風車が回らないのだ」という中江真司さんのナレーションが緊迫感を高めます! ライダー、ピンチ!

 この罠からの脱出法が「その鉄箱はニセモノだ!」っていうのは、ちょっと拍子抜け‥‥^^; 私は子どもの時も「そんなのアリかヨ~!?」と思いました。

 罠から出された本郷がアジトから脱出するまでのBGMは、旧1号編の変身シーンにも使われているものですが、他番組からの流用曲です。しかし、出典が不明だそうです‥‥。緊迫感のある名曲なだけに、これまでのBGM集にも収録されていないのが残念です‥‥。

 琵琶湖に浮上した時の砂田元少佐は吹き替えだったのですネ。今回DVDを細かく見ていて初めて気付きました(^^ゞ そりゃあいくら何でも、神田隆さんに3月頃の琵琶湖に入っていただくわけにはいかないでしょうから。

 偶然にもサイクロン号に乗ってルリ子さんが登場!‥‥って、あまりにも都合が良過ぎる展開です。こういうところが『仮面ライダー』がツッコまれる点ですネ。今回の伊上脚本は、力技が炸裂しています!(^o^)
 置いていかれたルリ子さん、この後どうやって大阪に行ったのでしょう? 見たところクルマが1台も通らない寂しいところですが‥‥。

 大山博士に変装したという藤兵衛、死神カメレオンにはバレバレでした^^;
 死神カメレオンが姿を消すのはわかりますが、鉄箱まで消えるのは‥‥^^;

 ナチスドイツが科学の粋を凝らして作った鉄箱ですが、現代科学では簡単に開けられてしまうというのは盲点でした。そりゃそうだ! それにしても、終戦から26年しか経っていないとは‥‥。この放映から36年経った現在から考えると、'70年代というのは戦後間もなくという感じですが、東京の街はすっかり復興していました。『ウルトラマン』はさらに5年前の作品でしたから、いかにもの凄い勢いで東京が変わっていったのかがわかります。

 今回は死神カメレオンが舌を伸ばして、本郷をジェットコースター「ダイダラザウルス」から突き落とすシーンがあります。姿を消す能力以外の、死神カメレオンの唯一の戦闘能力のようです。

 地図に示されたナチスの財宝の隠し場所にやって来る、ショッカーと人質ご一行様。財宝の入った棺(?)を掘り出してみると、中からライダーが! 意外な場所からの登場を狙った描写だそうですが、それにしても無理が‥‥。それに、あまりカッコいい登場とは思えないし‥‥。
 一方で、弾いた戦闘員の剣をキャッチするアクションがカッコいい~! その直前の、ハインリッヒ博士が撃った銃の弾丸がライダーには効かないシーンでは、ライダーに何のリアクションも無いのが面白いです。あまりにもあっさりしているのと同時に、ライダーには銃は全く効かないという印象も与えてくれます。

 ラストシーンに登場する子犬は、当時生田スタジオで飼われていた犬だそうです。
  ●死神カメレオン(カメレオン男)(岡田勝、佐野房信 声:沢りつお)
 舌を伸ばして攻撃する描写がありますが、威力は未知。

 「ライダーキック」、「ライダーチョップ」の連続技で倒されました。

恐怖コブラ男 コブラ男 昭和46年5月29日放映 放映第9話
脚本:山崎久 監督:山田稔
 この第9話と第10話の撮影中に藤岡弘さんがケガをされ、2号ライダーを登場させることになってしまいました。このことについては、第14話の時に述べます。
 藤岡さんがケガのためにアフレコができず、このエピソードでの本郷の声は納谷六郎さんがあてています。六郎さんは「ショッカー首領」の声の納谷悟朗さんの実弟です。

 冒頭では、コブラ男の特殊能力について、珍しく科学的な説明がなされています。美術の高橋章氏による設計図が印象的です。高橋氏はショッカーが使う文字までデザインされています。

 ショッカーの改造人間の特殊能力では、この「溶解」の描写が秀逸ですネ。泡を使ったシーンをウマく重ねて表現されていると思います。この時の効果音も印象的です。
 ライダー側の効果音としては「変身」と「ジャンプ」、「バイクの走行と停止」、そして「パンチ」や「キック」の音が使われますが、ショッカー側では「アジト内部音」「アジトのドアの開閉音」「首領が喋りだす時の音」「怪人が出現する音」、そして「各怪人の特殊能力」を表現する音など、かなりバラエティに富んでいます。また、戦闘シーンの効果音では、「ナイフを取り出したり切りつけたりする音」「鞭や棒などを振り回す音」「鞭がピンと張った時の音」など、すぐに思い浮かべられる印象的な音がたくさんあります。
 これらの効果音は、『仮面ライダー』以後の『バロム1』『ロボット刑事』などの東映特撮ヒーロー作品でもお馴染みになっていますが、『仮面ライダー』のイメージがどうしても感じられてしまうほど、それらは印象的な音であったと思います。

 「金保管所」のロケ地は「長沢浄水場」ですが、印象的な柱の見える正面ではなく、西側の門付近が使われています。「大蔵省」という名称が懐かしいです。

 武彦くん役の子役は石井政幸さん。石井さんは第62話や第78話にも登場し、斉藤浩子さんや高野浩幸さんと並ぶ『仮面ライダー』を代表するゲスト子役です

 色水と紙と扇風機を使った「金庫の溶解シーン」の特撮は、なかなかリアルに仕上がっていると思います。こういう本編での特撮は、東映もなかなか高いクォリティです。

 よく突っ込まれるシーンですが、犬に吠えられたくらいで逃げ出すようでは、コブラ男は仮面ライダーには勝てないと思います。
 そして、タンスの中から現れるのも‥‥^^; まぁ、『ウルトラマン』でもケロニアがタンスから現れるという前例がありましたが。今見るとマヌケなのですが、幼かった当時には、タンスというのが何だか怖いというトラウマを作ってくれました。

 タンスから登場のシーンでは、またまた例の出典不明の劇伴が流れています。ずっとベースが同じ音を八分音符で刻むこの楽曲の出典が、早く判明されて欲しい!(流用されるということは菊池俊輔氏の作品なのでしょうが、なんとなく山下毅雄さんの作風に似ているように感じられます。)

 最初のバトルフィールドは「お化けマンション」です。そして次のシーンでは「猿島」。「金保管所」に見立てた「長沢浄水場」も含めて、特撮ヒーロー番組での超有名ロケ地がふんだんに盛り込まれたエピソードですネ。
 「猿島」は横須賀沖にある無人島で、海軍から陸軍へ、そして再び海軍の軍事施設として利用されてきました。終戦後は海水浴場などが作られましたが、平成5年に渡航が禁止されました。しかし平成7年から渡航が再開され、散策路の整備も行われました。現在の猿島は、この第9話で見られるような石畳を直接歩くことはできず、板で整備された散策路を歩くようになっています。ライダーがコブラ男と最終決戦をする展望台(ゲルショッカーの結団式も同じ場所で行われました)は、現在もあります。

 今回はサイクロン号に乗って疾走するシーンが多いです。しかし、サイクロン号がかなり小さく見えます‥‥。藤岡弘さんは猿島のロケの前にケガをされたそうなので、ライダー役の方が別人の所為でしょうか。

 第1話以来、本郷が再び手術台に。体はライダーのままというのも同じです。
 そして本郷のピンチに藤兵衛が登場! この時の劇伴も聞いたことがないものです。初期にはかなりの数の流用曲があったようです。

 戦闘員たちの声は、今回もエコーの効いた「アーッ」という声です。

 今回から火薬が使われるようになりました。本郷が乗せられている手術台やアジトの爆破、そして戦闘員がやられる度の爆発など、これでもかというようにふんだんに使われています。もちろんコブラ男も、ショッカー怪人初の爆死を遂げます‥‥って、爆発してしまったら、次のエピソードで蘇るのが大変だと思うのですが‥‥^^; よりによって、蘇る予定の怪人を爆死させてしまいました。

 サイクロン号に乗って去るライダーを追いかけて武彦少年が転んでしまいますが、あれは本気で転んだのでしょう。小林昭二さんも慌てて駆け寄ります。痛そうにしていながら演技を続ける根性に脱帽です。

 犬の墓参りをする武彦少年と藤兵衛とルリ子。「ライダーに会いたかった」とダダをこねる武彦に、「ライダーに会わせてあげる」という軽はずみな約束をするルリ子。「嘘ついたら、針千本だからね」という武彦ですが、彼はこの後「ハリネズラス」や「ウニドグマ」といった、「針系」の怪人に追い掛け回される運命を辿ります^^;(←それは別人‥‥。)
  ●コブラ男(岡田勝、佐野房信 声:水島晋)
 単なる「ヘビ」ではなく、猛毒を持った「コブラ」をモチーフにしているところが、強い怪人のイメージを湧かせてくれます。
 コブラが広げる首の部分を頭部にし、喉の部分を顔にするデザインの発想が秀逸です。
 右手にヘビの頭部が付いていますが、片手が「モチーフの生物の特徴的なパーツ」になっている怪人は、2号期に続出します。(この時点ではかまきり男のカマだけ。)そのヘビの右腕は伸縮自在ですが、ライダーにはチョップをされてその度に痛がっています。

 「ライダーキック」に倒されました。

よみがえるコブラ男 再生コブラ男 昭和46年6月5日放映 放映第10話
脚本:山崎久  監督:山田稔
 今回は、前回倒されてしまったコブラ男を再生させるのに必要な動物の血を集めるために、冒頭では犬やネコを集めている怪しい「綾小路生物研究所」の描写から始まります。
 怪しい綾小路律子を演じているのは新井茂子さんです。彼女は中田博久さんの奥さんなのですネ! そして、『ウルトラセブン』第40話「セブン暗殺計画 後編」でガッツ星人に狙われるナツ・アヤコ役が彼女だとは! この時は髪が短くお顔がふっくらされているので、ずいぶんと印象が違います。

 ショッカーのアジト内に姿を現す綾小路律子。ショッカー・アジトのSEは不気味でイイ音ですが、これも『キャプテンウルトラ』からの流用です。東映の特撮路線のSEのライブラリーは、『キャプテンウルトラ』でかなり充実され、のちの番組で活用されています。
 コブラ男に向かって「仮面ライダーに傷つけられたオマエの体を復元してやる」と綾小路は言いますが、コブラ男の体は前回爆発してしまいました‥‥。第13話では突然これまでの怪人が復活していて、こういう復元手術のシーンはありませんでした。全98話を見渡してみると、こういう形で一度死んだ怪人の復元手術のシーンが描かれているのは、この第10話だけですネ。爆発して最期を迎える怪人が続く中で、再生シーンが描きにくいのでしょう。
 なぜか仮面ライダーに対して、並々ならぬ敵意を持っている綾小路。

 アミーゴの前で泣いている透クン。飼い犬がいなくなったようですが、それを話しているところに本郷が登場。本郷は綾小路研究所の情報は知っていたようです。そしてそこへ透クンの父親・古賀刑事が登場。現在捜査中の連続失踪事件のことを本郷の耳に入れると、本郷は何かを感付いたようです。
 古賀刑事役は奥村公延さん。『ウルトラマン』第12話「ミイラの叫び」や、『ジャイアントロボ』第13話「悪魔の眼ガンモンス」『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」にも出演されている、特撮ヒーロー番組ではお馴染みの名脇役です。

 透クンは綾小路研究所に行ってみますが、既に犬・ネコの買い取りは打ち切られています。「ボクの犬もいるかもしれない」と言って研究所の中を覗こうとすると、透クンの肩を叩く者が‥‥。ショッカーかと思ったら透クンの父親・古賀刑事です。無表情で話す古賀刑事は、もしかしたらショッカーの一味かも‥‥という疑念を感じさせますが、次の瞬間、しゃがんでにこやかに話す父親の顔になります。その直後、またキリッと引き締まった表情になり、綾小路研究所の捜索を開始します。
 このシーンに流れるフリージャズのような劇伴も、何かの流用でしょうか。

 父親の戻って来るのを待っていると、透クンはコブラ男を目撃します。一目散にアミーゴにやって来て、「怪物」のことを話す透クン。そこで、本郷は綾小路研究所とショッカー、そして失踪事件の関連を確信し、行動を開始します。
 一方、綾小路研究所の捜査中にショッカーに拉致された古賀刑事は、再生されたコブラ男の「火炎噴射」の新能力の実験台にされます。

 今回の戦闘員は「エ゛エ゛エ゛エ゛」という声を発します。

 古賀刑事があわや焼き殺されそうになるところにライダー登場! そしてコブラ男とライダーの戦闘中、コブラ男は過って綾小路の顔に火傷を負わせます。綾小路は狂ったようにコブラ男をムチ打ちますが、首領の「オマエの役目はもう終わった。」というセリフによって形勢逆転、コブラ男によって綾小路は処刑されてしまいます。
 綾小路は、怪人をつくる科学班の単なる1人なのでしょうか。それとも幹部クラスか? なぜコブラ男に命令することができていたのか。彼女の立場がよくわかりません‥‥。
 藤兵衛に助けられ、火傷を負いながらも犯人であるショッカー一味を追いかけようとする古賀刑事。彼は目隠しをされていたのでコブラ男の姿は見ていませんでしたネ。そして、そこへ現れるライダー。古賀刑事はライダーを見て「怪物!」と言って失神してしまいます。このセリフに傷つく本郷の描写などで物語を膨らませられるのに、そこには触れられずにストーリーは進行します。

 コブラ男には、前回一度死ぬ前と同じように、金保管所の金強奪の使命が与えられます。本郷は「金を狙うためにコブラ男を復元した」と推理しますが、金を狙うためにコブラ男を使う理由とは?
 古賀刑事は金保管所の警備の任に就きますが、よくよくコブラ男と縁があります。コブラ男にしてみれば「またオマエか!」と驚いてしまいますネ(^o^)
 金保管所のロケには、「長沢浄水場」の西側の門の辺りが使われています。ここにも特徴的な柱が見られます。

 本郷は、金の輸送を中止するように古賀刑事に伝えに行きますが、ショッカーの存在を信じず、「盗賊団」呼ばわりする古賀刑事。そういえば、綾小路研究所での連続失踪事件や金強奪事件など、これほど警察がショッカーの動きに迫ったエピソードは他にはありません

 金輸送船「プレジデント号」の金庫を火炎噴射で破壊し、コブラ男は金強奪に成功します。そして金を隠そうとしているところにライダー登場!
 コブラ男が金を隠そうとしている洞窟は、『ウルトラマン』第12話「ミイラの叫び」の洞窟に似ています。ということは、江ノ島でのロケでしょうか。ロケ地やゲストになぜか共通性がある両エピソードです。
  ●コブラ男(再生)(岡田勝、佐野房信 声:水島晋)
 後頭部に広がるパーツが追加され、派手なイメージになりました。
 新しく火炎噴射の能力が与えられました。口から火炎を噴射するシーンで使われる顔面のプロップがよくできています。
 ヘビの右腕が伸びる描写はありません。溶解液も出しません。

 「ライダーがえし」によって倒されました。

吸血怪人ゲバコンドル ゲバコンドル 昭和46年6月12日放映 放映第11話
脚本:長石多可男  監督:折田至
 前話の撮影中の事故で藤岡弘さんが撮影に参加できなくなったために、急遽取りまとめられた脚本によって制作されたエピソードです。脚本の長石氏は助監督としてずっと撮影に参加されていたので、流用可能なシーンを熟知されていたとのことです。

 このエピソードでは、本郷不在のアクション・シーンを補強するために、千葉真一さんの実弟である千葉治郎さんが、「滝和也」として初登場します。ここから最終話まで、仮面ライダーの強力な助っ人として、またコメディ・リリーフとして、重要な役割を担っていくことになります。
 この初登場のエピソードでは、滝の結婚が描かれています。このあとは全く省みられない設定です(第14話では史郎に「所帯持ち」と言われていますが)。
おやっさんとは、全日本モトクロス選手権での本郷のライバルとして、既に顔見知りのようです。今話ではまだFBIの特命捜査官であるという設定ではないようです。

 本郷の流用シーンでのアフレコは、こちらもショッカー首領の納谷悟朗さんの実弟、納谷六郎さんが務められています。

 ゲバコンドルによる最初の事件を目撃する少年は、のちに少年ライダー隊で「ナオキ」としてレギュラー出演する矢崎知紀さんです。

 ゲバコンドルが必要とする、若い女の生き血を集めるための教会は、新宿にある戸山教会です。

 「生き血を集める」という直接的なホラー描写は、『仮面ライダー』でも初めてです。赤いペンキが飛び散る映像として処理されていますが、かなり衝撃的なシーンになっています。そして、千早隆子さんが演じる老婆(ショッカーの1人?)が演奏するオルガン曲が恐怖を倍増させます
バレリーナが襲われるシーンは、醜いゲバコンドルの姿との対比を狙ったものでしょうか。スローの映像が子どもの頃は冗長な気がしましたが、今の視点では表現として素晴らしいシーンだと感じられます。

 ライダーとゲバコンドルとのAパートでの1回戦。いきなりのライダーキックが通じないほどの強敵であることを表現しているのでしょうが、いきなりの必殺技とは‥‥。せめてとどめを刺そうとしてライダーキックが通じない焦りがあった方がイイような‥‥。そして最後の、上半身を土に突っ込んで敗北したライダーの姿はショックでした‥‥。なんとも惨めな姿‥‥。
 今話のライダーはAパートではずっと赤いCアイでしたが、BパートではFRP製のマスクの時は薄いピンク。2つが併用されている理由は何でしょう。
 Bパートの戦闘シーンはハイスピードカメラでの撮影です。これまではスピード感のあるアクションが持ち味でしたが、強力な怪人という印象を強くさせるための表現でしょうか。2号ライダーのサボテグロン戦でもハイスピードが用いられていますが、『仮面ライダー』という番組ではあまり成功しているとは感じられません。

 今話の戦闘員は、「ア゛ー」という声です。

 怪しい教会を探ろうとするおやっさんの作戦が、ルリ子との偽装結婚とは‥‥。で、結局ショッカーのみなさんが登場してきて、教会探索の意味が無くなってしまいます‥‥。
ラストシーンでは、去って行くライダー(の正体を見ようとして?)を追ってルリ子さんがクルマに乗って行き、おやっさんが置いてけぼりになってしまいます。こんなほのぼのとしたオチが嬉しいです(^o^)
  ●ゲバコンドル(佐野房信 声:谷津勲)
 名前には「コンドル」とありますが、全くそうは見えません‥‥。「○○男」という名前から脱した最初の怪人(「サラセニアン」は劇中では「サラセニア人間」と呼ばれているため除外)です。
 これまでの怪人の特徴を併せ持つ最強怪人で、人間蝙蝠のように空を飛び、死神カメレオンのように姿を消すことができます。

 「ライダーキック」が効かず、「サイクロン・クラッシャー」で倒されました。

殺人ヤモゲラス ヤモゲラス 昭和46年6月19日放映 放映第12話
脚本:滝沢真里  監督:折田至
 やはり藤岡弘さんの事故によって急遽制作された、ルリ子さん活躍編!? 真樹千恵子さんのキックが炸裂すると、たった1発で戦闘員が倒されてしまいます。

 白川博士役は、多くの映画で活躍されていた吉田輝雄さんです。
ヤモゲラスに改造されてしまう助手の柴田役は、あの藤沢陽二郎さんなんですネ‥‥。

 そのヤモゲラスは、戦闘員たちの指図で煙突を昇ったり、ボクサーに素手で倒されそうになったりと、ちょっと情けない描写が多いです^^; 戦闘員を従えていたこれまでの怪人とはちょっと違います。

 ショッカーが他の博士の研究を盗もうとするのは、今回が初めてです。そのための、天井でも這い回れるヤモリの特殊能力なのでしょうか。作戦と、怪人の能力の必然性があります。

 ショッカーに追われる白川博士を助けるライダーは、サイクロンの風防に身体を沈めていてカッコいい! こういう走りがサイクロンとライダーの一体感を感じさせてくれます。この1回目の変身ではヤモゲラスとは対戦してないというのも異色です。

 戦闘員は今回でやっと「イーーッ」という声になりました

 一度はヤモゲラスの噴く粉で固められてしまい、強化されたデンジャーライトでピンチに陥るライダーですが、ルリ子さんによって救われました。
その後、なぜか逃げ出すヤモゲラスをデンジャーライトで倒すのは白川博士!! 異色の結末ですが、炎に包まれて消えるヤモゲラスの合成は秀逸です。
  ●ヤモゲラス(佐野房信 声:水島晋)
 ヤモリがモチーフのはずですが、色彩はイモリっぽい‥‥。
 天井や垂直な壁を自由に這い回る能力を持っています。また、口からは人間を石のように固めてしまう粉を噴きます。
 マスクは覗き穴を隠すような工夫がされています。そしてヤモゲラスの目は血管も塗装された秀逸な造形物になっています。

 怪人では唯一の、ライダーの技ではなく「デンジャーライト」で白川博士によって倒されました。

トカゲロンと怪人大軍団 トカゲロン
再生怪人軍団
昭和46年6月26日放映 放映第13話
脚本:伊上勝  監督:北村秀敏
 旧1号編の最後になりますが、当時はそんなことは知らずに見ていました。次週の予告を見て、「新シリーズって何だ?」と思いました。

 トカゲロンに改造されるサッカー選手野本健を演じるのは、堀田真三さんです。私は堀田さんの風貌は力石徹に似ているように感じるのですが、いかがでしょうか?
堀田さんは旧芸名の脇中昭夫名義で『仮面の忍者赤影』の蟻身眼兵衛を演じている他、『アイアンキング』では不知火太郎でも私は馴染んでいます。時代劇や刑事ドラマ、変身ヒーローなどの悪役を多く演じられていますネ。ドスの効いた声とガッシリした長身、鋭い眼光がピッタリです。
 改造された後も野本の姿になっているトカゲロンですが、怪人が人間の姿をしているのは、第3話のさそり男以来です。怪人への変身は、人間のマスクを外すような同じプロセスの描写があります。

 冒頭で犠牲となる警備員役の富士乃幸夫さんは、のちに『V3』でツバサ大僧正を演じられます。

 野本健の家(?)は本多忠次邸でのロケ。特撮作品で多く登場したこの屋敷は、現在は解体され、愛知県に移築されるとのことです。
 原子力研究所は松下電器の社員寮にあった体育館だそうですが、こちらも現在はありません。

 再生された怪人というのは弱いですネ‥‥。再登場は家庭用ビデオが無かった頃には嬉しいものでした。東映は『キャプテンウルトラ』や『赤影』で、過去に登場した怪獣たちが大集合するエピソードがつくられましたが、初登場した時ほどの印象を残していないのが残念です。
 このエピソードでは、滝が浸入する野本の家に、動かない粘土細工人形のフリをして並び立っているシーンにワクワクしました。
そして、原子力研究所への浸入(人間蝙蝠、さそり男)、野本健の誘拐(死神カメレオン、蜘蛛男)など、それぞれの任務に適した怪人が選ばれているのには感心します(当時は気が付かなかったんですが‥‥(^^ゞ)。

 今回再生された怪人では、初登場時にベルトを着けていなかった「蜘蛛男」「さそり男」も着けています(「サラセニアン」は腰の突起が邪魔になるためか着けていません)。あ、新登場の主役トカゲロンは、背びれが邪魔になるためにベルトを着けていません。

 「バーリア破壊ボール」の使用を命令する首領に向かって、「5kgの重量のボールを20mの距離から投げられる改造人間は存在しない」と反論するショッカー科学陣。首領でなくても「バカ者!」と怒鳴りたくなります。
使えないものを作ってどうするのか‥‥┐(´-`)┌ または、バーリア破壊ボールを使いこなす改造人間を準備しておくべきでしょうに‥‥。私が感じていたショッカーの不気味さが、早くも壊れていっています‥‥。

 トカゲロンの必殺シュートに敗れるライダー。特訓で「電光ライダーキック」を編み出しますが、「ライダーキックのエネルギーを2倍にする」というのがよくわかりません‥‥。そんなことができるのなら、常に2倍で使えばイイのに‥‥。ライダーが特訓で新しいワザを開発する描写は、今話が初登場です。
ライダーの新ワザの報告をしに、ケガをして入院している滝の元へ駆けつけるおやっさん。そこで滝がFBIの特命捜査官であることを知ります。いよいよ本格的におやっさんと滝のコンビの誕生!
入院している滝の看病に、奥さんが1シーンだけ登場します。

 戦闘員は今回は「ア゛ーー」という声に戻りました。
  ●トカゲロン(大杉雄太郎 声:堀田真三)
 素材となる野本健のキック力を活かした改造人間です。他には特殊能力は持っていないようです。
 唯一の全身着ぐるみによる怪人です。他の特撮ヒーロー番組に対抗するために、巨大化案があったそうで、そのテストケースになる予定だった名残りでしょう。その影響でのゆっくりした動きなのでしょうが、対ゲバコンドル戦でのようなハイスピード撮影ではなく、こちらはアクターがゆっくりと動いて演技しています。堀田真三さんの重厚な声が、ゆっくりとした映像にピッタリです。

 「電光ライダーキック」によって蹴り返された「バーリア破壊ボール」で爆死しました。