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2018.9.26
【最終回】今こそ読める!薔薇の名前
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いやー、こんなに面白いとは思わなかったです、「薔薇の名前」。中学生時代、私は映画を観るのが好きで、当時はアメリカ映画を中心とした洋画の全盛期、少ないお小遣いの大半をはたいて、「スクリーン」「ロードショー」と言った雑誌を買って読みふけっておりました。
その雑誌に「薔薇の名前」が紹介されていたのを覚えています。毛布のようなフードを被ったショーン・コネリーの姿を。しかし当時は映画を観ることはなく、今回、およそ30年の時を経て、その中身にふれることができました。
プロに影響を与えることができるのが本当のプロだ、と言われることがありますが、「薔薇の名前」はまさにそういう作品ではないでしょうか。
「シックス・センス」や「ダ・ヴィンチ・コード」を私は思い出しました。皆さんはいかがでしたか?他にも様々な作品に影響を与えたはずです、なにせ世界で5500万部売れているのですから。
しかし、読むのは難解です。作品を楽しむためには、相当の教養が必要だからです。
「キリスト教の学校に通っていたから、、」なんて高飛車に臨んだ私、早々に撃沈しました。番組収録にあたっても「そもそも記号論って?」「アリストテレスって誰だっけ?」
わからない言葉が次々に出てきます。ああ、ついていけない、、と思ったあなた!ちょっと待った!
今はスマートフォンという強い味方があるのです!「薔薇の名前」発売当初であれば、わからないことはそれこそ図書館に行って重たい百科事典でも開かなければならなかったでしょう。でも今は一歩も動かず、ものの数秒である程度の答えを得ることができます。スマホで教養を補いながら読めばいいのです。今こそ、「薔薇の名前」は多くの人に開かれた作品となったような気がします。「薔薇の名前」の映画を観てから原著を読むと、さらに読みやすいですよ。実は「ゆりこ’s EYE」をお送りするのは、今回が最後となりました。私事で恐縮ですが、NHKを退職いたしました。20年間勤めてきた組織を離れ、医師を目指して大学で勉強することにいたしました。
今回の決断の背中を押してくれたのは、実はこの番組です。5月にお伝えした「生きがいについて」を読んでいるうちに、自分の内面と向き合い、幼い頃からの思いを叶えるべきではないかと思うようになりました。
決断はしたものの、不安要素も多く、どこまでできるかまったく見通しがたっていません。また、この番組を離れるのも非常に辛いことでした。できることならばずっと続けたいと思っていた番組でしたから。このコラムで書いてきたように、毎回のスタッフとの打ち合わせ、そして伊集院さんと指南役の先生との収録は、世界の見方が変わるほどの衝撃、知的刺激を与えてくれました。この興奮を視聴者の皆さんにもぜひ体験してほしいと、心から思える番組でした。そんな出会いに恵まれたことに、今は深く感謝しています。
これまで番組をご覧いただき、このコラムまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。これからも、「100分de名著」で、多くの人の心を震わせた名著に触れることで、皆さんの心や人生を豊かにしていただければ幸いです。