オバロ☆マギカ   作:神坂真之介
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しばらく投稿に悩んだ問題作、捏造が世界を覆う。


7、本当の事と向き合えますか?(邪魔されないとは言ってない)

 /INモモンガ

 

 「いっそ、副ギルド長になりません、まどかさん?」

 「……ふぁっい?」

 

 モモンガの切り出した言葉に、友人の天使は意味をなさない変な声を上げてフリーズする。

 ゲームの仕様上、本人が能動的にエモーションを動かさなければ表情の変化は無い、感情表現のアイコンも出てこないのは、モモンガの提案がそれだけ彼女にとって不意の出来事だったのだろう。

 これで表情の同期がユグドラシルにもあったなら、きっと目を白黒して驚く彼女の表情を楽しめたのではないだろうか。

 それが見れないのはモモンガは少し残念だと思った。

 

 さて、副ギルド長とモモンガは言ったが、ユグドラシルにおいて、ギルド(マスター)というギルド統括としてのシステム的役職は存在するが、副ギルド長という役職は存在しない。

 ギルド毎のハウスルールによって、ギルドマスターに準ずる発言権を持つ存在を用意している所もあるが。

 アインズウールゴウンには特にそういった存在はなかった。基本的に全員が同じ土俵の友であり仲間であり家族であったからだ。

 ギルドを作る上で必須であったから存在するだけで、モモンガ自身ギルドマスターと言う要職に就くことに難色を示したくらいだ。

 

 その上で、まどかに副ギルド長の話を振ったのは単純に、アインズウールゴウンの二つ目の拠点の管理者が必要となるからだ。

 セフィロトの管理者として座す以上、無位無官と言うのも味気ない。NPC達に領域守護者や階層守護者、守護者統括という役職があるのだ、副ギルド長という役が在っても罰は当たらないだろう。

 それに、他のギルドメンバーがログインしなくなってから随分と経つ、二人しかいないのに、肩書だけの話でも、一人はギルド長、一人は平メンバーと言う状態で居るのも何か、寂しいと言うか、仲間外れ的な気持ちになるのだ。

 

 「も、モモンガひゃん、ふくぎるどちょうとか突然にゃにを言ってるんでヒュ」

 「まどかさん、ステイステイ、なんか発音がおかしくなってます」

 

 過呼吸とかそういうやつだろうか、現実のぼでーがびっくりどっきりドンキーコングしてるのかもしれない。

 なんだかよくわからない分析を行いつつモモンガは思う。

 

 まどかとの付き合いは長く、さかのぼれば、大恩ある、たっちみーさんと同時期に出会ったプレイヤーだ。

 彼女は日常方向からの不意打ちにはめっぽう弱かったので、からかう時はよくそこから攻めたものである。

 付き合いが長いだけに、本来ヘタレ気味のモモンガにはできない所業であったが、親しいからこそできるさむしんぐ、そういった、些細な悪戯が許されるからこそ出来るじゃれ合いはモモンガにとっては癒しと言えた。

 

 「も、もぅー、私は犬じゃないですっ」

 「モーだと牛ですね」

 

 特に上手くもないやり取りではあるが、下らない会話が楽しくできるのが、友人と言うものでは無いだろうか

ただ当時から、傍から見るとリア充っぽいので、偶に柱の影でウルベルトやペロロンチーノ等がこっそり、はぜろ、はぜろと内心で言わんばかりの呪詛を飛ばしていたのだがモモンガは知らない。

 ともあれ、上げ足を取って弄りすぎるのは悪手である、何事も程ほどが一番であるモモンガは長い付き合いでその辺りのバランス感覚は把握していた。

 

 「ま、まぁ、おふざけが過ぎましたが、副ギルド長の話は本気です」

 「あ、はい。」

 

 モモンガの真剣な口調に本気度を感じたのか、まどかが目の前で姿勢を整え正座する。

 ……椅子の上なのでなんか、突っ込むべきかと迷ったが、モモンガ的にここはスルーするのが最適と話を続けることにした。

 

 「理由の一つは先ほど言った通り、拠点管理者……いわば拠点守護者という新しい立ち位置に着くこと……」

 

 先ほど、思考の中で反芻した事実を理由として一つ一つ上げて説明していくが、最終的には下記に落ち着く。

 

 「まぁ、長々と言いましたが結局のところは雰囲気づくりでロールプレイの一環ですね。」

 「あ、そうなんですか、重大責任だって、すごーく、緊張しちゃってました。」

 

 「ははは、ゲームなんですからそこまで重く考えなくても良いですよ」

 「モモンガさんが凄く雰囲気だすから」

 

 「ほほぅ、自分の演技力も捨てたものでは無いなぁ」

 「むぅ」

 

 

 

 

 幾つもの理由の中で、言葉にしなかった、上げられなかった事がある。

 彼女(まどか)は義務や責任を投げ出せない性格だとモモンガは確信している。

 

 だから

 

 副ギルド長という役職に就ける事で、ナザリックに縛りたかった。

 他の仲間達の様に、離れて行かないように、それもまた本心、自分の独占欲、猜疑心、執着、きっとこれはネガティブな情動。

 

 だから

 

 モモンガはいつもの会話中にその本心を深く深く沈めて、静かに束縛の糸を重ねる。

 言葉と言う時に何よりも強い束縛となる意図で縛る為に、儚く脆い執着の為に。

 

 

 

 

 

 

 

 /INまどっち

 

 「はぁ、モモンガさんってば急に言うんだもんびっくりだよ。」

 

 モモンガさんの提案は前向きに検討しまして、他のギルドメンさんの許可が出るならと言った所。誘ってくれた事はとっても嬉しく思うのだけど、ちょっと、心の準備が欲しいし、皆がどういう反応をするのかがちょっと怖い。

 

 「えへへ、でも副ギルド長かぁ……」

 

 ウェヒヒㇶと聞こえたかもしれませんが幻聴です。

 ああ言ってくれると言う事はモモンガさんに相棒って思って貰ってるってことですよね!

 まぁ、皆が引退しちゃって、私としかあんまり顔を合わせないからという消去法かもしれないけれど。

 でも、口元が緩むのが止まりません、ちょっと特別な気分です。

 

 そんな独り言を零しながら私は3D画像のレイヤーを操作する。

 目の前には立体ホログラフで作られた人型が浮かんでいる。

 髪の毛を操作してロングヘアー、色は黒と、ちくちくと変更を加えていく、細かな微調整を入れてー

 

 顔立ちは十代っぽく、でも大人びた表情で、なんてイメージを形にする。基本、頭の中の物を形にするだけなのだけど、それがとても難しい。

 くるくる回して後ろ、横、斜め、それぞれからの見た目を確認したり、規定の動きをさせて、違和感が無いかを検証。うん?ここらへんかな?

 

 一応、ユグドラシルで使う予定のキャラクタークリエイトで、予定では5つか6つくらい作る予定だ。あまりまとまった時間を作れないので、時間が空いた時とかに手を入れている。

 ゼロから作るのは割と無理なので、皆の残した資料とかプログラムを拝借しての作成作業。

 私自身の実力は多分2割くらいかなー?

 

 そんな作業を続けて1時間後に休憩。自分で紅茶を淹れながら、うーんと伸びをした。

 これから仕事もあるし、お仕事が終わったら習い事がある睡眠時間をちょっと削っちゃったけど、多分、モモンガさんの実生活に比べたら私はホワイトも良い所だろう。

 実家が裕福層で、着いた職業も特権階級の業種なのだ、不平を言ったら罰が当たると思う。

 

 ピコン

 

 出し抜けにメールの着信音がした。

 日頃使っている着信音じゃなくて特定のメールに対してだけ出るように設定しておいたものだった。

 

 『件名:※※※※13、ユグドラシルに花束を:例の仕事が終了した。此方への報酬を確認後、資料を確認されたし。』

 

 

 私はとある場所に訪れていた。

 誰であっても決められた手順とルールを守れるのなら訪れる事の出来る保管金庫。

 かつてあったスイスの銀行の流れを汲んでるのだとかいうけれど、今はそんなことはどうでも良い事、チェックを受けて、洗浄室を通って、防護服とマスクをはずす等の流れを越えて、電子設備を排除した殺風景な閲覧室に居る。

 

 あの返信用のメールアドレスは、誰でも何処でも作れるフリーアドレスだったけれど。アドレス自体は多分もう破棄されてる。

 それはとある調査依頼が終了したことを示すメールで、秘匿性が高い現実のフリーエージェントの仕事。

 依頼出来たのはコネの賜物と言える、普通の調査であればメール内に幾つかのプロテクトを掛けて送られるが

 現代社会では電子情報は殆どが監視されていると言っても過言では無い、だからこそメールの文面も当たり障りのないもので

 その重要度故に、ペーパーデバイスでの受け取りに固定されている、企業的には重要度は高くないとは思うけど念の為。

 最初の指定から、これらの仕事は調査終了のメールから私が報酬の入金をしてその後に調査資料が現実の所定場所にある貸金庫に保管される流れになって居る。

 

 心臓が鼓動を打つ、それはとある真相に迫れるかもしれないと言う緊張であり、畏怖でもある。

 受け渡された資料はびっくりするほど薄いA4サイズの封筒に収められていた。

 緊張しながら取り出した中身は数枚の写真、その内容は何がしかの概要文書を映したのもだった。

 

 それは私の様に非現実的な記憶を持たない人間には到底信じられない内容だった。

 

 年数は今から20年程前。

 多くは検閲によって消されてしまっていたけれど、かろうじて確認できる部分には、複数の並行異世界の観測や転移、第六基盤、概念創造による位階魔法の確立等の怪しげな単語が散見された。

 ゲームの設定と切って捨てるには、オーバーロードの設定に沿うものが多すぎる、やっぱり、運営は限りなく黒い。

 ……そして最後の写真は文書ではなく、魔法陣らしき幾何学模様の陣の中央に置かれた石の写真だった。

 宝石の欠片の様だったが、どうもその石そのものが光を放っている様に見える。それが何を意味するのかは分からないけれど、私はその石に不思議な既視感を感じていた。

 

 「キィ」

 

 奇妙な鳴き声で我に返った。

 鳴き声?そんな馬鹿な、閲覧室は秘匿性の為に個人用を使っている。

 他人はもとより、ネズミ一匹入る筈が無いのだ、誰かが入って来るにしても……

 ……慌てて視線を巡らせて、視界に入ったそれに私は怖気が立つのを抑えられなかった。

 

 1m程の小柄な体躯に真っ黒な体表、歪な角に小さな翼。

 それは、現実では決して存在しない。

 ―――ユグドラシルにおいてグレムリンと呼びならわされる小悪魔の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 ・とある職員の会話

 

 「お?防衛魔術が発動したっぽいぞ」

 「なんだって、また誰か引っかかるような事したのか」

 

 「俺、発動したの初めて聞いたんだけど」

 「一時期は産業スパイなのがよく引っかかってたぞ」

 

 「マジか」

 「まぁ、今はウチ、人気下火だから来なくなったけど」

 

 「え?くるくるパー量産したせいじゃないの?」

 「精神を病んだだけだよ、薬物反応も無い訳だし」

 

 「アフターケアは?」

 「――今の世の中、対魔は当然だが、抗魔持ちもいないからな、必要無い」

 「あ、部長」

 

 「お前等、喜べ、残業確定だ」

 「うへぇ、ブラック」

 「地獄に落ちろ部長」

 

 「位階魔法の構成をゲームからアバターに落とし込むぞ、ノルマは一人100だ。」

 「急ぎ過ぎて第六基盤が崩壊したらどうするんですか」

 「上は好きに言うよな」

 

 「向こうでは第三基盤が全盛期で確認された」

 「あっちだとバリバリ現役か」

 「向こうでテストする分には影響はないと?」

 

 「確定ではないがそう考えていいだろう、至急、急いで、慎重に、精密で完璧な仕事をする様に」

 「すげぇ、無茶言ってるぞ」

 「清純派AV女優みたいな矛盾を感じる」

 

 「死して屍拾うもの無し」

 「「ふぁっく!」」

 

 

 




書けば書くほど、クロスオバ設定が幅を利かせるのです。手綱を取り切れない作者の非力を許せよ。合掌バイ!







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