貴乃花親方の置き手紙

神事かスポーツか、問題の本質はそこにある

2018年10月6日(土)

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貴乃花親方は突如、日本相撲協会を退職した。2014年撮影(写真:Atsushi Tomura/Getty Images)

 相撲界を巡る一連の騒動は、まるで「台風一過」のようにあっと言う間に過ぎていった。

 9月25日に引退届(その後、退職届となる)を提出した貴乃花親方は、記者会見を開き自身が内閣府に提出した告発状(のちに取り下げ)の内容について「事実無根の理由に基づいたものであることを認めなければならない」との要請を協会役員から受けたと主張した。そのことを認めなければ親方として協会内に残ることができないと感じた。それは譲ることができない。「無念」という言葉を何度も使いながら、踏み絵のような要求が引退の理由だと説明した。

 ここからの進展は早かった。10月1日に相撲協会の臨時理事会が開催され、貴乃花部屋の力士ら(10人)の千賀ノ浦部屋(元小結・隆三杉)への移籍が承認され、これをもって貴乃花部屋の消滅が決まった。同時に貴乃花親方が正式に協会を退職することになった。

 同日、会見を行った相撲協会の八角理事長は、千賀ノ浦親方や代理人弁護士を通じて、貴乃花親方と直接話し合うことを働きかけていたが実現できなかったことを明かした。「22回の優勝を成し遂げた立派な横綱で、大相撲への貢献は大きなものがあった。いつか一緒に協会を引っ張っていきたいと思っていた。このような形で相撲協会を去ることは誠に残念」と述べた上で「直接会って話ができなかったことを残念に思う」と語った。

 奇しくも、この前日(9月30日)には、騒動の発端となった横綱・日馬富士の引退相撲と断髪式が行われ、翌1日には両国国技館で大相撲・全日本力士選士権(トーナメント戦)が行われ、平幕の阿武咲(阿武松部屋)が横綱・稀勢の里を破って優勝した。予定されていた行事や会合を怒涛のようにこなした大相撲界は、現役横綱が暴行事件の責任を取って引退し、その一件で協会の対応を問題視した貴乃花親方も追い込まれたかのうように退職し、まるで両者が刺し違えるがごとくの結末を見ることになった。

 おそらくこの一件はこれで手打ちになるのだろう。なんとも物悲しい終わり方である。

 ただ、この問題の本質は、もう少し深いところにあってこれですべてが解決したわけではない。今回の騒動を「ある種の権力闘争」という見方だけで終わらせないためにも根底にある問題に触れておこう。

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「貴乃花親方の置き手紙」の著者

青島 健太

青島 健太(あおしま・けんた)

スポーツライター

5年間のプロ野球生活の後、オーストラリアで日本語教師となる。帰国後、スポーツライター、テレビキャスターとして活躍。現在は、鹿屋体育大学、流通経済大学、日本医療科学大学の客員教授として教鞭をふるう。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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