地球から約8000光年の彼方で、「ケプラー1625b」という巨大惑星が、年老いた主星の周りを1地球年の公転周期で回っている。この惑星には旅の仲間がいるようだ。
科学者たちは、ケプラー1625bから見上げる空には、海王星サイズの特大の「月」がかかっているのではないかと考えている。つまり太陽系外惑星の周りを回る「太陽系外衛星」だ。これが確認されれば、初の系外衛星となる。
この天体の存在が最初に示唆されたのは2017年7月のことだった。科学者たちはこのとき、ケプラー1625bと一緒に主星の周りを回る天体があることを示す証拠を発見したと、暫定的な発表を行った。その後、2017年10月にハッブル宇宙望遠鏡がこの星の観測を始め、系外衛星の存在を裏付けるのに十分なデータを収集することが可能になった。(参考記事:「初の「系外衛星」を発見か、約4000光年先の惑星」)
今回の発見をした2人の科学者は、この驚くべき主張を立証するため、ほかの科学者が独自に確認を行うことを希望している。
10月3日付けの学術誌「Science Advances」にこの発見についての論文を発表した米コロンビア大学のアレックス・ティーチー氏は、「徹底的に吟味したつもりですが、私たちが考えもしなかったようなことを、ほかの研究者が思いつくこともあるでしょう」と言う。「そうした説により私たちの系外衛星仮説が肯定されるか否定されるかは、まだわかりません」
米マサチューセッツ工科大学のサラ・シーガー氏は、現時点では判断を控えたいと言う。
「系外衛星は、系外惑星研究者がまだ発見していない主要な天体の1つです」とシーガー氏。「最初の系外衛星探しがこうして進んでいくのは、非常に興味深いことです。しかもそれが、海王星サイズの、異様に大きい衛星だというのですから」(参考記事:「海王星に巨大嵐が出現、サイズは地球並み」)
月の影
天文学者たちは近年、様々な手法を用いて宇宙の無数の星々の中から数千個の惑星を見つけ、その存在を確認してきた。
つい最近まで、系外惑星の周りを回る衛星は見つかっていなかったが、天文学者たちは、こうした衛星の存在を強く信じてきた。私たちの太陽系には、惑星より多くの衛星が存在しているからだ。しかし、系外衛星の存在を示唆するわずかな手がかりを検出するのは、技術的に非常に難しい。(参考記事:「ケプラー16bに初の系外衛星が存在?」)
論文共著者で米コロンビア大学のデビッド・キッピング氏は、これまで10年近く、NASAのケプラー衛星が送ってきたデータをふるいにかけて、系外衛星を探してきた。2009年に打ち上げられたケプラー衛星は、4年にわたって星空に目を凝らし、系外惑星が主星の手前を横切るときに主星がわずかに暗くなるトランジットという現象を観測していた。(参考記事:「ケプラー初成果、5つの系外惑星を発見」)
天文学者は、恒星が暗くなるタイミング、減光の程度、持続時間を調べることで、惑星の大きさや主星からの距離を計算することができる。キッピング氏は、衛星が十分に大きければ、主星の減光のパターンにその痕跡を見いだすことができるはずだと考えた。大きな衛星は、惑星が主星の前を横切るタイミングに影響を及ぼすだけでなく、それ自体が主星の減光を引き起こすと考えられるからだ。
キッピング氏は記者会見で、「いちばん大きいものが、いちばん見つけやすいのです」と語った。「今回の衛星系はいちばん見つけやすかったというだけで、一般的な形ではないのかもしれません」(参考記事:「ありえない発見、小さい恒星を回る巨大惑星」)