映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(ライアン・ジョンソン監督)で、アジア系の女性として初めて、スター・ウォーズ映画の主要登場人物を演じたケリー・マリー・トランさん。ところがSNS上で、人種や性別、容姿にまつわる大量の差別的なコメントが寄せられ、トランさんがインスタグラムの投稿をすべて削除するにまで追い詰められる問題が起きた。
ケリー・マリー・トランさん

ベトナム系米国人のトランさんが、この問題でニューヨーク・タイムズへ寄せた寄稿が注目を集めていることを、BuzzFeed Newsも報じてきた。
経緯を振り返る
「最後のジェダイ」でトランさんは、ダーク・サイドと闘うレジスタンスのエンジニアで、大切な人を守るために奔走する女性、ローズ・ティコ役を演じた。
作品は世界興行収入1420億円を超える大ヒットとなったが、評価は別れ、一部の熱狂的なファンが、「最後のジェダイ」をシリーズの「正史」から外すよう署名運動を始め、トランさんの容姿を揶揄する投稿もSNS上で相次いだ。

マーク・ハミルさんらと並ぶトランさん
トランさんはニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「私がアジア系の女性として、大人になる過程で学んだのは、私の居場所はすみっこの隙間にしかなく、物語の小さな役しか与えられないということ」「彼らのコメントは、その事実を再び証明しているようでした」と切り出し、これまで経験した差別の数々を記した。
トランさんを巻き込むかたちで行われたこの映画への攻撃の背後に、ロシアの情報機関が管理するボットなどの存在があった可能性を示唆する論文が10月、米国で発表された。
南カリフォルニア大学デジタル・フューチャー・センターのモーテン・ベイ研究フェローによる「憎悪者の兵器化ー最後のジェダイと、ソーシャルメディア工作によるポップカルチャーの戦略的政治化」だ。
論文でベイ研究フェローは、ライアン・ジョンソン監督に対し、映画が公開された2017年12月から7ヶ月の間に直接向けられたツイートを分析した。
まず、作品に否定的なコメントの50.9%は「政治的な背景があるか、人間の手によるものではないツイート」とした。
人間の手ではないツイート
「人間の手によるものではないツイート」のアカウントには、ロシア情報機関がこれまでも使ってきたボットや匿名アカウントと同じ特徴があるという。
「政治的背景があるアカウント」は、トランプ大統領のことなど、普段はスター・ウオーズと全く関係ない話題をツイートしたり、RTしたりしていた。
こうしたアカウントによるものを除くと、ライアン監督に寄せられたコメントのうち、映画に対する否定的コメントは全体の10.5%まで減ったという。
ボットや匿名アカウントなどが、対立を増幅した可能性があるということだ。
「大統領選や反ワクチンと同じ動き」
その上で「多くのファンはルーカスフィルムとディズニーがスター・ウォーズに政治を持ち込んだと考えているが、トランプ時代の分極化が、ファンの政治化をもたらした」という。
「ボットや匿名カウントなどの存在は、政治的説得工作の一環として、スター・ウォーズのファンを操作しようとしたことを示唆している」
「ソーシャルメディアでの偽情報のメカニズムは、反ワクチン運動や、2016年の米大統領選、そして、『最後のジェダイ』論争で共通している」と結論づけた。
なお、ロシアは情報機関がTwitterやFacebookなどのSNS上で、ボットや匿名アカウントなどを使い、米国などで世論の対立を煽る工作を行っていると以前から指摘されている。
トランプ氏が当選した2016年米大統領選にもロシアによる干渉があったと、米国家情報長官は断定している。また、ポンペオCIA長官は、11月に行われる米中間選挙に向けた工作が行われるとの見方を示している。
ジョンソン監督は「私の体験とも一致する」
A bit of Morten’s research came out awhile ago and made some headlines - here’s his full paper. Looking forward to reading it, but what the top-line describes is consistent with my experience online. https://t.co/MTRgmPxGgZ
ライアン監督は「私のオンライン上の体験と一致する」とツイートした。
Yoshihiro Kandoに連絡する メールアドレス:yoshihiro.kando@buzzfeed.com.
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