ふるさと納税、返礼品で大混乱…韓国産は「○」で岩手産は「×」の理由とは? 野田前総務相「最初の志を思い出して」
「ふるさと納税」制度が混乱している。野田聖子前総務相は、過度な返礼品で多額の寄付を集める自治体を制度の対象から除外する法改正を行う方針を打ち出した。総務省は地場産以外の返礼品も規制しているが、韓国の友好都市の産品が返礼品として存在する自治体がある一方、別の自治体では国内の友好都市の産品が取り下げられた。その理由は-。
ふるさと納税をめぐっては総務省が昨年4月、返礼品の調達費を寄付額の30%以下にするよう全国の自治体に要請。今年4月には返礼品を地場産品に限ることを求めた。
同省担当者によると、現在各自治体に対し、基準の範囲に収まらない返礼品の有無を自主的に調査し、結果を申告するよう求めているという。
千葉県袖ケ浦市では、同市内のテーマパーク「ダチョウ王国」にちなみ、ダチョウ肉を使ったソーセージやレトルトカレー、ダチョウの卵を使ったカステラを返礼品に入れていたが、肉や卵が茨城県内で生産されていたことを受け、同省に「地場産品に入らない」と回答。関係事業者と話し合いながら、返礼品リストから取り除くことを検討している。
同市では市内のゴルフ場に関連するゴルフボールや帽子なども返礼品としていたが「生産は海外で行われていたため、地場産ではないと判断し、返礼品から取り除くことを検討している」と同市の担当者は語る。
静岡県富士宮市では、韓国の栄州(ヨンジュ)市で生産された高麗人参の濃縮液などを返礼品に含めている。明らかに地場産品ではないが、富士宮市の担当者は「富士宮市と栄州市は友好都市で、その関係の中で2016年から高麗人参をふるさと納税の返礼品に追加することを検討していた。話し合いがまとまり、返礼品に追加されたのは今月で、総務省の調査に回答した時期にはまだ返礼品に入っていなかった」と打ち明ける。
これに対し、隣接する同県富士市は、友好都市関係を結ぶ岩手県雫石町の特産品である牛肉や乳製品などを返礼品から除外した。
同市の担当者は「確かに地場県産ではないので、(総務省から)はっきり指摘を受けた以上、抵抗する理由もないので返礼品から除外した。富士宮市の事例を考慮すると、明確な基準を設けてほしいとは思う」と首をかしげる。
前出の富士宮市は、調査を取りまとめている静岡県に対し、栄州市との検討の上で地場産ではない高麗人参を返礼品に追加していることを報告済みだという。今後、同省や県から指摘を受けない限り、このまま返礼品として扱う方針だという。
11月には同省が再び各自治体に返礼品の調査を要請するという。この調査で高麗人参も「地場産品に当たらない」と指摘を受けるのかと思いきや、同省の担当者の説明は「返礼品の基準は現時点では『地場産品に限る』というシンプルな内容だが、今はまだ各自治体の現状を知る段階で、白黒はっきり付けようというわけではない」というものだった。
結局、友好都市の特産品が返礼品として認められるのか認められないのか、現時点でははっきりしない。
不明瞭な基準に異議を唱えたのが、昨年度の寄付額が135億円と全国トップだった大阪府泉佐野市だ。返礼品を規制する総務省の方針を「一方的に条件を押し付けている」と批判。同市が大手メーカーのビールや地場産ではない牛肉などを返礼品としている理由を「人気の産品がなく、アイデアを積み重ねてきた」と説明した。
これに対し、野田前総務相は「一部の突出した行動でふるさと納税が目指していた姿が失われてしまう。泉佐野市は最初の志を思い出してほしい」と反論している。
不安定な基準に自治体は右往左往するしかないのか。