日本銀行が金融政策決定会合で、長期金利をゼロ程度に誘導する目標は維持しつつも、変動幅の拡大方針を打ち出したのが7月のことだった。
この決定が行われた7月31日の長期金利は0.05%だったのが、翌8月1日には0.129%まで上昇、9月21日の終値は0.130%になっている。明らかに、長期金利のベースが一段高くなったといわざるを得ない。
住宅ローンの利用を考えている人にとって、将来の住宅ローン金利負担の増加を意味するたいへん深刻な事態になってきた。
住宅ローンにはふたつの金利タイプがあり、変動金利型は市中の金利動向によって適用金利、返済額が変化する。借入後の金利上昇による返済額増加リスクがあるものの、その分金利は低く設定されている。
いまひとつが固定金利型で、こちらは当初の金利が変わらないので、返済額も変わらずに安心感があるが、その分金利が高くなる。
このうち、変動金利型の金利は政策金利である短期金利に連動するので、いまのところ大きな動きはないが、固定金利型の金利は長期金利の動きに大きな影響を受ける。
実際、民間ローンの金利の指標となっている固定金利型の10年固定に関して、りそな銀行は、8月4日に最優遇金利を0.70%から0.75%に引き上げた。通常、大手銀行は毎月第1営業日に金利を見直す仕組みで、りそな銀行も8月1日に0.70%と前月からの金利を据え置くと発表したばかりだったが、長期金利の上昇を受けて急遽引き上げることになったわけだ。
大手銀行にこうした変則的な対応を迫るほどに、今回の日本銀行の決定は大きなインパクトを与えた。実際、その後9月に入ってから他の大手銀行も一斉に金利引上げを実施、10年固定の最優遇金利は図表1のようになっている。三井住友銀行の金利は半年間で0.10%上がって1.20%という高い水準、0%台を維持しているみずほ銀行もこの半年で0.15%の上昇を記録している。