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安倍総理に「切腹せよ!」と迫られた「ポスト安倍」最有力者の名前

これが政治の逆説だ

内閣の中枢から党の要職へ

この1週間、内外で重要ニュースが相次いだ。日米首脳会談と第4次安倍改造内閣の発足、それに伴う自民党役員人事である。どれも、当コラムとしては見逃せない。そこで、今回はすべて採り上げよう。

時間は前後するが、まず第4次安倍改造内閣・自民党役員人事からだ。一言で言えば、改造内閣は無難な顔ぶれで、とくに目新しさはない。あえて言えば、片山さつき氏と注目の石破派から起用された山下貴司氏の入閣くらいだ。

片山氏はかねて入閣が噂されていた。私は10月1日未明放送の『朝まで生テレビ!』でご一緒したばかりだが、番組でも冒頭から「入閣するかどうか」が話題になっていた。財務省出身で能力の高さ、討論でのキレ味は折り紙付きだ。何の心配もない。

山下氏は当選3回ながら異例の抜擢である。元東京地検特捜部検事で、10月3日付の産経新聞によれば、ワシントンの日本大使館勤務時代には「米国内で日本政府を相手取った慰安婦訴訟で指揮をとり、最高裁まで争った末に勝訴した」という。実に頼もしい。

 

私が注目しているのは、加藤勝信・前厚生労働相の党総務会長への横滑りだ。加藤氏は内閣の中枢である内閣官房副長官、大型省庁大臣である厚生労働相に続いて、党の要職に就いた。誰から見ても「ポスト安倍」の後継レースに名乗りを上げた格好だ。

安定した答弁に定評があるだけでなく、内閣官房副長官時代には2014年5月、初代の内閣人事局長も兼任した。私は、この内閣人事局長就任こそが安倍首相の加藤氏に対する信頼の高さを物語っている、とみる。なぜか。

一部マスコミは当時、この人事について、加藤氏ではなく杉田和博・内閣官房副長官(警察庁出身)の就任を断定的に報じていた。それは完全な誤報だった。当のマスコミは加藤氏就任が発表されると、あたかも安倍政権が方針転換したかのように繕った。そんな方針転換の事実もない。「誤報の上塗り」である。

そもそも内閣人事局とは何かといえば、幹部官僚人事を差配するのが仕事だ。

それまで官僚人事は役所が決めていて、政治は口出しできなかった。役所内での出世はもちろん、退官後の天下りも役所が面倒をみるから、首相官邸に勤務する官僚でさえ、出身官庁の顔色をうかがっていた。それでは、政治主導にならない。

そこで幹部官僚人事を内閣人事局に一元化して、首相官邸が差配する仕組みに改めた。いわば、政権基盤を固める要の仕組みである。霞が関にとっては、逆に役所秩序の根幹を揺るがしかねないので、トップ人事が注目された。

内閣人事局長人事は安倍晋三首相と菅義偉官房長官の2人しか知らない専権事項だった。結論は、首相も官房長官も最初から「加藤氏起用」と決めており、まったくブレていない。

そこで「杉田氏起用」と報じられると、2人はどうしたか。菅官房長官はすぐさま安倍首相の執務室に飛び込んで「総理、方針を変えたんですか」と確認した。すると、首相は「いや、オレは菅ちゃんが変えたのか、と思ったよ」と返し、2人で大笑いになったという。