こんにちは、maru-shikakuです。
ピエール・ボナールといえば、望遠レンズで写した世界のように遠近感が薄く、極端に平面的な絵が特徴的な画家という認識でしたね。
実際若い頃の作品でこんな絵が展示されています。
《庭の女性たち》1890-91年 オルセー美術館蔵 クリアファイルの一部を撮影
長い縦長の構図に日本画で使われそうなパステルグリーン。
上のような感じの絵ばかり描いていたんでしょと思ってました。
でも、ボナールの生涯を通した今回の作品展を見たら、上の作品のような作風は一部で、結構色々と雰囲気を変えていたのがわかりました!
自分の上っ面なイメージが覆されて湧いてくる面白さ。
終わりつつある藤田嗣治展でも感じたこの面白さを、このボナール展でも感じましたね。
本国フランスでは近年ナビ派の画家たちへの評価が高まり、2015年にオルセー美術館で開催されたピエール・ボナール展では51万人が魅了され、2014年のゴッホ展に次ぐ、歴代企画展入場者数の第2位を記録しました。
出典:http://bonnard2018.exhn.jp/about/
日本ではどちらかというとマイナーな画家ですが、フランスでは超有名みたいですね。それほどの大家です。
とまあ展示そのものの魅力はあるのですが、音声ガイドも満足しまして・・・
神田沙也加さんがナレーションしてます!
アナ雪でいいなと思ってたこの声。その場で知ってノリでガイドを借りてみたのですがよかった!
では感想をどうぞ!
概要
会 期 | 2018年9月26日(水)~ 12月17日(月) 毎週火曜日休館 |
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開館時間 | 10:00~18:00 毎週金・土曜日は20:00まで。ただし9月28日(金)、29日(土)は21:00まで ※入場は閉館の30分前まで |
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観覧料(税込) |
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出典:http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/bonnard2018/
混雑具合
ボナールはやはり日本ではそこまで有名ではないせいか、人は多くありません。
国立新美術館はものすごく広いので、かなりゆったりと鑑賞することができます。
ホッと一息つきたいときに立ち寄るのがいいかもしれません。
感想
めっちゃ浮世絵
《黄昏(クロッケーの試合)》1892年 オルセー美術館蔵 クリアファイルの一部を撮影
ボナール25歳の作品。この頃の緑の使い方が好き。
影が一切なく、圧縮された風景は浮世絵の影響を受けまくってます。
手前の人たちの服の模様も浮世絵的で、立体感が全くない。
《大きな庭》1895年 オルセー美術館蔵 クリアファイルの一部を撮影
この絵はそこまで浮世絵ぽくないのですが、人物や動物の配置がやはり日本ぽい。
重なりが一切なく、上の絵だと犬とか女性のように真横を向いたポージングも現実離れしてます。右端の女の子なんか半分見切れてる。
ボナールの配置の仕方はかなーり独特で、そこが面白いポイントですね。
ここには載せませんが、ボナールの別荘?でくつろぐ人たちの絵がとっても印象的でした。
親しげに会話しているんだけど、みんな真正面か真横を向いて、居心地が悪そうなところに現代アートを感じました。
ポスターアートや挿絵もうまい!
《フランス=シャンパーニュ》1891年 川崎市市民ミュージアム蔵 クリアファイルの一部を撮影
画風から当然といえば当然ですが、当時大流行りしたポスター画にボナールは挑戦します。上はデビュー作。
めちゃシャンパンが溢れてますが笑。こういう演出はセンスですね。
こちらは演劇『ユビュ王』の主人公ユビュおやじ。
ミュージアムショップで売ってるクリアファイルの裏側に書かれてます。
漫画っぽいですよね。
ユビュおやじはキモかわいくて、中身は完全なオヤジ。今でいうと、テッドみたいな感じらしいです。
写真もよく撮ってた
wikipediaより 本展示にはありません。
こちらはボナールの自画像です。いやーイケメンですね。展示されてる写真にもかなーり決まってるセルフポートレートがありました。
彼はコダックのポケットカメラで絵の習作がわりに素っ裸の奥さんや、子供同士が格闘する日常風景を撮っていました。
夢中になるあまり、自ら素っ裸になった写真も。
わたしだったら絶対死ぬ前に処分しちゃう笑。
奥さん・マルトの衝撃の事実
《化粧室 あるいは バラ色の化粧室》1914-21年 オルセー美術館蔵 クリアファイルの一部を撮影
一日に何回も入浴しちゃう奥さんの、やっぱり入浴シーンをたくさん書き残してます。
この辺の作風はちょっとドガっぽくて、下を向いたり後ろを向いたりで顔が隠れて見えない。体のラインだけを見てくれと言いたげな絵です。
そのラインも、やせ気味の奥さんをモデルにしてるので、ルノワールとは正反対の、肉感があまりなく、すらーっとした感じ。
ドガと同じでボナールも足が好きだったっぽい。
奥さんが前のめりに座ってつま先を前に出してる絵とか、膝からつま先までのラインが綺麗でよかったな。
その奥さん、マルトですが、かなり衝撃の事実がありまして。
ボナール26歳の時、マルト16歳という10歳の年の差カップルが長いこと続きます。
ボナール58歳の時、ボナールを好きな女性に嫉妬してマルトの方から結婚を申し込み、無事籍を入れました。
そこでですよ。「実はわたし、あなたの2歳年下なんです」
/(^o^)\
8歳もサバ読んでたんかい。しかも本名マリアだって。
そんな告白を受け入れたボナールは芸術家の鏡です。
マルトはここにも。
《猫と女性 あるいは 餌をねだる猫》 1912年頃 オルセー美術館蔵
《ル・カネの食堂》1932年 オルセー美術館蔵 クリアファイルの一部を撮影
配置のクセがすごいボナールは、絵の中に唯一いるモデルの奥さんをも置物と同列に並べています。
前景の置物からどんどん絵の上の方に視線を移動させて、あっ、いたいた。という見方がボナール推奨の鑑賞法らしいですよ。
ちなみに上の方にもありますが、ボナールは猫をよく描きます。
《白い猫》 1894年 オルセー美術館蔵 クリアファイルの一部を撮影
なんとなく描きたいことはわかるけど、ちょっとキモかわの部類よ?
この猫に関しては美術館側もかなりイジってて、手ぬぐいにしたり、インスタで、
#びよーん猫
と題し伸びた猫の写真を募集してます。結構伸び伸びだなあ。
#びよーん猫 Instagramキャンペーン|オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展|国立新美術館 2018年9月26日(水)〜12月17日(月)
最後に
正直な話、晩年の作品についてわたしとしては、ボナールの個性が薄れていったような感じがして、それほどのインパクトは受けませんでした。たまたま今回の展示品がそうだっただけかな?
が、その手前の年代の作品については、浮世絵的で構図・物の配置が独特なところが唯一無二で、同時代の印象派画家たちと一線を画してます。そこが面白かったですね。
浮世絵に影響されたボナールはこれから再評価が進みます。生涯とともに彼を深く知れるボナール展は芸術の秋にぴったりですね。