村の方向を伝えると、サトル様は天使達に道中危険がないか探ってくるように指示を出す。その背中を祈りながら見守る。――――どうかみんな無事でいますように。
「サトル様!さっきのって魔法?文字がこう・・・ぶわーってなったすごいやつ!」
そんな中、手持無沙汰になったのかネムがキラキラした目をして問いかける。まだ先ほどの興奮が冷めきっていないようだ。
「こら!サトル様にそんな失礼な口聞いちゃダメでしょ!」
すぐに注意した後、慌ててサトル様の様子を窺う。幸いサトル様は特に気にした様子もないようだ。
「はは、大丈夫ですよ。子供は元気なのが一番ですから。・・・さっきのは超位魔法のひとつで〈
「・・・見たことないです」
これは自信をもって断言できる。あれほど幻想的で神々しい光景を見たら忘れるわけがない。
「そのあとのピカピカもちょーいまほうってやつなんですか?あれやってもらってからすっごく体が軽いの!」
「いや、あれはただ全体化しただけの強化魔法だからそんなに大した事はないよ。あれも見たことないですか?」
しいて言えば、最初に唱えられた。『ボディ・オブ・・・なんとか』ってやつが友人の見せてくれた服を丈夫にする魔法に似てた気がする。次々魔法が唱えられたので正直ほとんど憶えられなかった。
ただ、失礼だがサトル様が使うような魔法を彼が使用できるとはとても思えない。―――いや、そもそも人間が神と同じ魔法を使おうとすること自体が間違っているのではないだろうか。
「はい、薬士の友人が魔法を使えるんですけどどれも見たことないです。・・・あの、あれは特別な魔法ではないのですか?」
そんな様子を見てサトル様がう~んと首を傾げる。
「まあ人によって習得している魔法は様々ですから。きっと私とは方向性が違うんでしょう。・・・ぷにっと萌えさんがいればもっとすごい強化ができましたよ」
プニットモエ・・・プニット・モエ?名前だろうか。そんな疑問を感じ取ったのかサトル様が続けて答える。
「えっと、ぷにっと萌えさんはアインズ・ウール・ゴウンの一人で味方の強化が得意だったんです。」
彼がいただけでパーティーの強さが跳ね上がったなぁ。と呟くサトル様の様子からとても親しい関係であった事が伝わってくる。
「アインズ・ウール・ゴウン?」
またしても知らない名前が出てきた。それに気づいたサトル様が『あ、すいません』といって補足する。
「アインズ・ウール・ゴウンはギルド―――あ~えっと私の仲間達の事です。私を含め四十一人で構成された集団をそう呼んでいたんですよ。・・・今はもう無くなってしまったんですが」
「サトル様のお仲間と言うことはきっとすばらしい方々だったんでしょうね」
そう返答した瞬間、サトル様がすごい勢いでこちらに振り向く。こちらを見つめる眼差しには圧力さえ感じられる。
「そうなんです!ほんと私にはもったいないぐらいみんないい人達だったんです!ぷにっと萌えさんは指揮官系を中心にした
突然饒舌になったかと思いきや矢継ぎ早に仲間たちの事を話すサトル様。ああ、友人がポーションについて語る時もこんな感じだったなー。などと思いながら聞いていると唖然としているこちらに気付いたのかサトル様がコホンと咳ばらいをする。
「・・・すいません。仲間達の事を話すのは久しぶりだったのでつい」
「い、いえ・・・大丈夫です」
確かにあっけにとられてしまったが、サトル様がどれだけ仲間のことを大事に思っていたのかが伝わってきた。不謹慎かもしれないがとても微笑ましい気持ちになる。
「アインズ・ウール・ゴウンは昔はとても有名だったんですけど。・・・まあしかたないことですね。忘れ去られるのは寂しいですが」
少し寂しそうにサトル様が笑うと同時に天使たちから返事が届いた。
仲間の事になると早口になる鈴木悟が書きたかった。