「呪術廻戦」は週刊少年ジャンプの救世主になり得るのか?(感想)

マンガ「呪術廻戦」

閉塞感のある現在の週刊少年ジャンプの現状

今回は「呪術廻戦」(じゅじゅつかいせん)という週刊少年ジャンプ(集英社)に連載されているマンガを取り上げたいと思います。

かつて600万部の発行部数を誇った週刊少年ジャンプもいまや3分の1の200万部を割り込んでいるそうなんですが、ニュースメディアの論調のほとんどは少子化や電子書籍の普及を挙げているもののそもそもの原因はそこではないですよね。

ジャンプに面白い作品が少ない

端的に言ってしまうとこれだと思いますし、そういう声もみなさんの周りには多いと思うんですが、マスコミや専門ライターは気を使っているのか、言うと仕事を回してもらえなくなるのか、指摘している大手メディアはゼロだと思います。

だからと言ってしまうのも失礼かもしれませんが、現在の編集部がそれを理解していないようで、20年近く毎週買い続けてきた元読者としては心配でなりません。

(画像引用:週刊少年ジャンプ公式サイト「呪術廻戦」より)

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待たれる「ONE PIECE」、「HUNTER×HUNTER」に次ぐ看板作品

ジャンプの現在の連載作品に目をやると、「ONE PIECE」や「HUNTER×HUNTER」この二作品に関しては文句なく(誰が読んでも)面白い作品だと思います。

ただ、次の矢がないと思うんですよね。

確かに「約束のネバーランド」や「ブラッククローバー」あたりのコミックスは結構売れているとは思うんですが、看板作品かというと少し疑問です。

以前連載していた「BLEACH」や「NARUTO」クラスまでい行くかというと”ヲイヲイ”という突っ込みが入ると思うんですよ。

かつて「キン肉マン」や「ブラックエンジェルズ」(なぜかこの名前が出てきた(笑))が連載されていた当時から読んでいた身としては前述の二作品が歴代の看板作品に肩を並べるかというと、そこまでのポテンシャルや万人受けする内容ではないような気が経験からします。

また、小畑健先生の「DEATH NOTE」(作:大場つぐみ)や「ヒカルの碁」(作:ほったゆみ)のように連載終了から10年経っても語られる、思い出される作品かというと怪しいですよね。

まぁそこまでディスると軽く炎上してしまいそう(笑)なのでフォローしておくと、古くは「魁!!男塾」や「みどりのマキバオー」、近年だと「魔人脳噛探偵ネウロ」や「アイシールド21」ぐらいの、言うなればクリーンナップを支える二番や六番の花形ではないけど職人的なポジション・存在の作品だと思います。

ただそこからのブレイクスルーは厳しいかなというのが現在のジャンプの二番手グループの立ち位置だと思うんですよ。

そんな中、ネット上でも一部で評判も高いのが「呪術廻戦」なのですが、僕も最近の作品にしては

”お!ホームランを打てる(看板作品になる下地がある)かも”

と思ったで今回取り上げてみようと思ったわけです。

(前置き長すぎ)

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「呪術廻戦」とは

「呪術廻戦」とは芥見下下(あくたみげげ)先生により2018年の週刊少年ジャンプ第14号より連載されているマンガ作品となります。

ちなみにこの作品は、連載にあたり”ジャンプライジング”週刊少年ジャンプ創刊50周年記念特別新連載3連弾の第一弾として始まりましたが、残り二作品の「ノアズアーク」と「ジガ」は早々と打ち切りになっています。

2018年10月現在コミックスは2巻まで発行されているようですが、現在重版もかかり累計25万部が売れているそうで中々の滑り出しのようです。

あらすじ

両親がおらず祖父に育てられた虎杖悠仁(いたどりゆうじ)は、オカルト研究会に所属する普通の高校生ですが、”50mを3秒で走る”、”砲丸投げの球を投げると30m”といった伝説をもつ、てつもない身体能力の持ち主です。

入院中の祖父を見舞った悠仁ですが、その日元気に受け答えしていた祖父が突然亡くなります。

唯一の肉親を亡くした悠仁ですが彼の前にある男性が現れ”呪物を返せ”と迫ってきますが、悠仁は箱しか持っておらず中身である特級の呪霊”両面宿儺(りょうめんすくね)”の指は、オカルト研究会の先輩たちが学校で調べている最中でした。

その強力な呪力に吸い寄せられる形で下級の呪霊が彼らに襲いかかって来るのですが、それを悠仁らも把握し助けに向かいますが、強力な呪霊の力の前に驚異の身体能力をもつ悠仁と彼の前に現れた男である”2級呪術師である”伏黒恵(ふしぐろめぐみ)も適いません。

身体能力だけではどうにもならず手詰まり感の漂う中、悠仁は伏黒から”呪力がねぇオマエがいても意味ねーんだよ”と言われますが、まっすぐな性格の悠仁は即座にあることを思いつきます。

それは呪力の塊である両面宿儺の指を食べ、自分の中に取り込むことだったのです。

それがとんでもない呪霊の指であることを知らずに取り込んだ悠仁でしたが、伏黒も危惧したように当然両面宿儺に体を乗っ取られます。

伏黒も彼を”救う対象”から”祓うべ対象”へと変えますが、悠仁はとんでもない身体能力と性格のせいもあってか体を取り返し、学校に現れたた呪霊を見事退治します。

しかしながら特級呪霊を体に取り込んだ人間を回りは当然放っておくわけにもいかず・・・


呪術廻戦 1 (ジャンプコミックス)

といったお話です。僕なりの解釈を入れながらまとめてみました。

芥見下下

この芥見下下先生ですが、いまだ正体が謎とされており、実は女性説が流れています。

年齢は1992年生まれの26歳らしいということは判明しているのですが、この「呪術廻戦」が初の連載作品のようです。

「呪術廻戦」の前日譚が描かれた作品として「東京都立呪術専門学校」という作品も存在しますが、男性ぽい絵柄ながら新人離れした構成力と読み込ませる力にはかなりの可能性を感じます。

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感想

ポテンシャルは十分も画力がまだ足りない

さて、ここから「呪術廻戦」の感想および僕なりの評価を書いていきたいと思います。

この作品、ネットの某掲示板などでジャンプ関連の話題となると名前が挙がることが多いですね。他のブログなどでも非常に絶賛している方もよく見ます。

僕も一応この記事を書くにあたり、再び最初から少しだけ読みなおしたのですが、初めての新連載をした人とは思えないほど絵がしっかりとしており、キャラクター設定や構成など安定感を感じます。

ただ、絶賛するほどかと言われると?ですね。まだまだこの先の展開しだいかなという感じはします。

内容を見ていくと、確かに新人作家にありがちな独りよがりな展開、何をやっているのか分からないバトルシーンなどもなく安定感たっぷりです。このあたりは考えてみるとスゴイことですし、構図なんかもイイですよね。見せ方上手いと思います。

ただ、やっぱり一番気になるのは絵柄やキャラクターデザインです。

この作品のセリフの言いまわしや呪霊や呪力などの設定などはよく考えられており、面白いという方の意見も僕として納得できる部分はあるんですよ。

ただ、残念ながら画力がまだそこまで追いついていないような印象を受けます。

バトルシーンなどは後述するマンガを意識したような迫力のある構図・見せ方をしているんですが、まだまだ絵面がゴチャゴチャしているように感じます。

結局のところそのあたりが洗練されていないので、書こうとしているものや書きたい描写というのは感じ取ることはできるんですが、初見だと読み飛ばされる可能性さえ感じます。

だから、最初から読んでいる読者には受け入れやすいものの、いきなりこれを見せられた時に目に留まれるかというと微妙な感じがするんですよね。

例えなるなら”化粧をすると美人になるスッピンブス”という感じで学生時代はまったく持てなかった女子高生という感じがするんですよね(女性の方スミマセン)。

つまりはポテンシャルはあると思うんですが、どうしても現状化粧の仕方がまだよく分かっていない、もしくは化粧をしていないような作品に感じます。

このあたりは鳥山明先生の作品とは対極にある感じがどうしてもするので、書き込み過ぎているというのが原因という印象があります。

「BLEACH」+「HUNTER×HUNTER」÷2で期待大

あまりディスるのも目的ではないので、逆にいいと思ったことを書きたいと思いますが、初めて読んだときに感じたというか、まず思い浮かんだのは「BLEACH」ですね。

キャラクター設定やストーリー設定が非常に似ており、当然好きなんだろうなとは感じたんですが、スタートの時点では方向性やキャラクターの味付けもまだ弱かった「BLEACH」に比べると読ませる内容・展開になり上回っていると思います。

これからの登場人物や描写次第というところではありますが、同じ王道路線を受け継ぐ存在しとして楽しみな感じがします。

また、最近特に似てきているというか影響を受けているのがよく分かるのが「HUNTER×HUNTER」ですよね。

セリフや能力の制限、バトルの描写という雰囲気などは直接的ではないにしてもモロに影響を受けている感じがしており、ネクスト「BLEACH」、ネクスト「HUNTER×HUNTER」として十分期待が持てる作品であり作者に才能を感じます。

キャラクターや呪霊のデザインをもう少し詰めてほしかった

最後は少し立ち返ってしまいますが、何がこの作品に足りないか?と考えた時に僕の結論としてたどり着いたのはキャラクター達のデザイン面です。

ストーリーや見せ方を含めた構成などは非常にいいと思うんですよ。キャラクター設定もいいと思います。

しかしながら、

主人公やその他登場人物たちがイマイチカッコよくない

この部分がどうしても引っかかるんですよね。

何度も言うように本当に見せ方や展開はイイんですよ。でもなんかカッコよくないというか主人公に惹かれないんです。

先ほど挙げた「BLEACH」は最初なんだか絵面がきれいなオカルト作品として始まり全く魅力的ではなかったんですが、途中からバトル漫画+お洒落な絵柄+いくつもスピンオフ作品を作れるほどの魅力的な登場キャラクター達、という部分を突き詰めた結果、ジャンプの看板作品に昇り詰めました。

最後のほうはインフレしまくりのご都合主義でしたが愛するべき主人公黒崎一護は健在でしたよね。

しかしながらこの「呪術廻戦」に関してはまず主人公があまりカッコよくない+登場人物たちもどこかで見たようなキャラクターデザインで没個性という感じがします。

例えば「BLEACH」であれば”ハゲ”や”巨乳”、”ツンデレ”、”変態科学者”、”ロリ”などといった要素をうまく絡めながら、時にはそれを笑いに変えて上手く話を進められていたんですが、そこの部分がどうしても弱いせいか作品のクオリティのプラスにはなっていないような気がするんですよね。

最近はメガネをかけたおっさんが何となくカッコいいバトルをしているんですが、キャラクターに感情移入しにくいので”ああこのキャラクター殺さないでぇ・・・”というのがないんですよね。読んでいても”面白そうな展開なんだけど何だかもったいない”という感情が生まれてしまいます。

具体的に言うと「キングダム」の楊端和(ようたんわ)や羌瘣(きょうかい)のような愛すべきキャラクターになりそうな登場人物もまだいないんですよね。

非常に分かりにくい表現かもしれませんが、登場人物たちの書き分けは出来ているものの、見ただけで”こいつはこういうやつ”といった部分が弱く、味方も敵も同じ色合いに感じてしまうのです。

まとめ

最終的にまとめると、週刊少年ジャンプの看板作品となるべきポテンシャルを非常に感じさせる「呪術廻戦」なんですが、今はバランス的に言えば描きたい場面を表現するだけの魅せる画力が少しだけ足りていない印象を受けます。

好意的な見方をすれば、新人としては平均以上の作品だとは思いますが、10年経った時に覚えていそうなキャラクターがいるかというと残念ながらゼロです。

今はこのあたりを週刊連載を通して磨いていく時期だとは思いますが、短期的に部数やアンケートのみで連載の期間を決めるのか、この作者の才能を信じてある程度我慢するのか編集部の手腕を見守りたいと思います。

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