【プロ野球】巨人・由伸監督、今季限り電撃退任 3年目もV逸、自ら「辞めます」2018年10月4日 紙面から
巨人・高橋由伸監督(43)が今季限りで退任することが3日、決定した。山口寿一オーナー(61)が都内の球団事務所で取材に応じ、明らかにした。高橋監督は今季が3年契約の3年目。4年ぶりのリーグVを目指したが優勝争いに絡めず、同オーナーへ辞意を伝え、受理された。後任監督については「今日のところは言えない」としたが、理想像を「経験、実績が必要」と話し、原辰徳前監督(60)の球団史上初となる3度目の登板が決定的となった。 43歳の青年指揮官が、今季限りでユニホームを脱ぐこととなった。シーズン残り2試合、クライマックスシリーズ(CS)進出、日本一の可能性もある中での電撃決定。山口オーナーは「新しい体制で今月下旬のドラフト会議に臨みたいと思っているので、ギリギリのタイミング」と公表に至った理由を説明した。 高橋監督から辞意を明かされたのは先週。電話で「直接会って話がしたい」と伝えられ、その後の対面の席で「責任を取りたい」という言葉があったという。「本人は非常に決意が固かった」と同オーナー。その場では預かり扱いとし、数日前に辞意を受諾したという。 戦力の過渡期にバトンを渡された。就任1年目が2位、2年目が4位に終わり、4年ぶりリーグVを目指した今季。岡本、吉川尚ら若手を積極的に登用し、台頭に導いた。一方で、坂本勇ら主力の故障者が相次いだほか、救援陣がそろって離脱、不振に陥るなど誤算が続出。優勝した広島に大きく離され、一度も優勝争いに絡むことができず責任を痛感。任期満了で身を引くこととなった。 山口オーナーは、高橋監督に対し「申し訳ない」と言葉をかけたといい、指揮官交代とともにフロントの刷新にも言及。「監督一人のせいではない。体制も今後、改めていきたい。GMも含めてですね」とし、鹿取GMの退任も避けられない状況となった。 高橋監督に代わる新監督について具体的な言及は避けたが、理想の後任像を「難しい状況で引き受けてもらうことになる。そうするとやはり経験、実績といったところが必要かな」とした。条件に鑑みれば、在任12年でリーグ優勝7回の原前監督以外に候補者はおらず、4年ぶりの再々登板が決定的となった。 読売新聞グループ本社の渡辺恒雄主筆とは相談を重ね、情報を共有しており「任せる」と一任されているという同オーナー。今季の全日程終了を持って、速やかに新体制に移行することになる。 ◆「CSへ残り2戦全力」その胸に去来するものは…。巨人・高橋監督は、広島戦(マツダ)へ向けて3日、空路移動。広島市内の宿舎で報道陣に対応し、辞任に至った思いを口にした。 「監督を引き受けた時から、チームの勝敗は監督が背負うと思ってやってきました。その思いは今も変わってない。監督として責任を取らなくちゃいけない。責任を取って辞めますということを山口オーナーの方に直接、伝えました」 就任3年間で2位、4位、今季は12年ぶりシーズン負け越しが決まったが、CS進出の可能性を残し、この日、DeNAが敗れたため3位に浮上。それでも、指揮官は「結局、優勝争いというところにいかなかった。優勝を目指してどこのチームも戦うわけですから、そこで勝てなかったというのが現実」と言い訳はしなかった。 残り2試合へ向けて「残りの試合も、私がやるということには変わりない。何とか勝ってね。(CSへは)他力なところはあるのかもしれないですけど。就任した最初の1試合目と同じ気持ちでやろうと思っています」と前を向いた。 <記者の目>事実上の解任劇2006年から、10年間の長期政権を築いたのが原前監督。その輝かしい実績によって指揮官に集中した権限を、球団の手に戻す一手として、白羽の矢を立てたのが高橋監督だった。 ただ、フロントも必死で支えたが思うようにサポートできない。FA補強もその一端だ。16年オフに糸井は阪神へ、岸は楽天へ移籍し、大島は中日残留…。去就が白紙だった陽岱鋼を獲得するため、5年契約という長期契約で必死に説得せざるを得ず、お世辞にも好結果が出たとは言い難い。 さらに、指揮官が我を貫く場面もあった。昨オフ、フロントは村田真ヘッドコーチの退任に動いた。これにストップをかけたのが高橋監督。勝負の3年目へ不退転の決意を見せたからこそ、フロントは最後、指揮官の考えをのんだ。 ただ、ふたを開ければ球団ワーストの4季連続V逸。受け入れがたい現実に、読売本社首脳は早い段階から監督人事に動き、コーチの人事案も持ち上がっていた。 結局、常勝を義務付けられるのが巨人。原前監督は、第2次政権で6度のリーグVを成し遂げた。もはやなりふり構っていられない。読売本社による勝利至上主義が垣間見える事実上の解任劇だった。 (巨人担当・川本光憲)
|