無人配送社会で日本は世界に見捨てられる

スマホ購入断念で感じた日本の暗い未来

2018年10月4日(木)

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価値を失う日本市場

 FeliCaが登場して何年も経っているのに海外メーカーがほとんど対応していないということは、日本の独自仕様に合わせるメリットを各社が感じていないということだろう。日本は急速な少子高齢化が進んでいて、今後市場は確実に縮小していく。市場価値を段々と失っていく上に、独自仕様に合わせた専用品開発が求められる日本は、世界の企業から無視されやすい市場になっていくと言わざるを得ない。

 記者が同様に世界から無視されることを心配しているのが、冒頭で触れた「無人配送」だ。自走ロボットやドローン、自動運転車などを使った無人配送サービスの実現を目指し、多くの企業が技術開発に取り組んでいるが、そのサービスが日本に来ない可能性がある。

 無人配送を実現するために欠かせないのが、詳細な地図データを使いこなす機能だ。機械が人間のように周囲の状況を判断して移動するにはコンピューターの計算スピードがまだまだ足りないため、予め詳細に地図のデータを調べておいて制御に使おうというわけだ。

 実は、この詳細な地図データが日本だけ独自の仕様になる可能性が高い。そうなると海外で産まれた優れた無人配送サービスが日本に輸入されづらくなる。逆に国内企業がサービスを開発する場合も、独自仕様はサービスを海外に輸出する上で足かせになりかねない。

 もちろん、そのリスクは日本の地図業界もよく理解している。現在、日本では複数の企業が出資するダイナミック基盤が中心となって自動運転向けに詳細な地図データの整備を進めているが、その関連企業の1社が世界で地図データの整備をする代表的企業である独Hereと協業し、データ仕様の互換性を目指していた。

 ところが風向きが変わる出来事が起こった。その互換性を目指してHereと協業していた会社であるパイオニアが9月12日、経営悪化を理由に海外ファンドから出資を受けると発表したのだ。もしこの出資が地図データ整備に影響を及ぼすようなことがあれば、未来の無人配送社会で日本が独自仕様を貫くことになりかねない。

 ダイナミック基盤がパイオニアの働きとは別に地図データを独自仕様にするリスクを重要視し、国際的に互換性のある形で整備ができれば記者の心配は杞憂で済む。が、ダイナミック基盤が日本企業だけで組織され、整備する地図は国内のみを想定していると聞くと、不安を覚える。

 なにせ日本は決済サービスがいくつも乱立してキャッシュレス文化がなかなか定着していないといった前例がある。複数の独自仕様の決済サービスが乱立すれば普及の妨げになるリスクは予想できたはずだが、リスクよりも企業側の都合が優先されたわけだ。そんな日本の現状を見ると、地図データでもリスクよりも企業の都合が反映されてしまうのではないかと考えてしまう。

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「無人配送社会で日本は世界に見捨てられる」の著者

広田 望

広田 望(ひろた・のぞむ)

日経ビジネス記者

物性物理学で博士号(理学)を取得。日経BPに入社後は「日経コンピュータ」や「ITpro」でIT業界を幅広く取材。2017年10月から日経ビジネス記者として、家庭消費財や化粧品を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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