被災奨学生らを県提訴 熊本地震で百数十万円滞納 「1年猶予返済せず」 [熊本県]

 無利子で学費を借りられる熊本県育英資金を巡り、熊本地震で被災し、みなし仮設で暮らす1世帯に対し、県が滞納している百数十万円の支払いを求めて訴訟を起こしていたことが分かった。2日、県議会常任委員会で報告し、被災を理由とする返済の猶予期間は1年間で「その後、再三の催促に応じなかった」と説明した。議員らからは、被災者の生活実態に応じ、期間を延長するなどの柔軟な対応を求める声も出た。

 訴えられたのは、同県南阿蘇村の男性(50)と長男(23)、次男(22)、長女(20)の計4人。子3人は高校在学中の2011~15年度に育英資金を借り、男性は連帯保証人だった。

 県は、地震の猶予期間が終わった昨年4月以降、返済を促したが応じなかったとして今年6月、4人に滞納分の支払いを求めて熊本簡裁に提訴。9月に一括返還するよう判決が出た。県教育委員会は「奨学生本人と連絡が取れず、話し合う場を持つために法的措置を取った」と説明する。

 一家の自宅は16年の地震で半壊。男性はアルバイトなどで生計を立てていたが、職場が被災し一時は収入も途絶えた。妻(45)は「払いたくても払えない状態だった」と話す。

 県によると、被災を理由に返済猶予が認められた奨学生は約160人。滞納するケースもあるが返済の意思が確認できていたため、提訴に至ったのは今回が初めてという。県議会常任委で高木健次委員長は「借りた人の状況を考えながら対処しなければ」と県側に苦言を呈した。

 日本学生支援機構は、災害による奨学金の返済猶予期間を最長5年間とする。みやぎ奨学金問題ネットワーク事務局長の太田伸二弁護士は「復興に1年では到底足りない。減収などの事情がある場合は、それなりの猶予期間が与えられるべきだ」と指摘した。

=2018/10/03付 西日本新聞朝刊=

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