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ソニー銀行がパブリッククラウドサービスで動作する富士通の勘定系システムの導入に向けて具体的な検討に入った。日経コンピュータの取材で2018年10月3日までに分かった。高い信頼性が求められる勘定系システムにクラウドサービスを全面採用するのは珍しい。コストを抑えながら、FinTech関連の新サービスを迅速に投入する狙いだ。
ソニー銀行は富士通が開発中のクラウド勘定系の第一号ユーザーとなる見込みだ。勘定系の動作基盤に富士通のパブリッククラウドサービス「FUJITSU Cloud Service for OSS(旧称K5)」を採用し、2020年以降の稼働を目指すとみられる。
勘定系システムの動作基盤を「オンプレミス」と呼ばれる自社構築のサーバーからパブリッククラウドに置き換えて、ハードウエアの購入や更新、保守の手間を省く。FinTechなどを前提とした最新のアプリケーションを導入することで、新商品や新サービスを投入しやすくもする。従来と比べて半分の期間で新たな金融サービスを提供できる可能性がある。
クラウド勘定系の導入に先がけて、ソニー銀行は2019年3月までに社内の業務システムや銀行の周辺系システムを米アマゾン・ウェブ・サービスのパブリッククラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」上に全面移行する計画である。さらに2019年秋以降、新たな財務会計システムもAWSで動かす予定だ。銀行業務の中核である勘定系までクラウドを採用し、競争力の強化につなげる。
クラウド勘定系は入出金や口座管理、為替といった銀行の中核業務を支えるシステムをインターネット経由で提供するサービスを指す。オンプレミスの従来システムよりも構築や維持にかかるコストを3割ほど減らせるとされる。
歴史的な低金利に人口減少が追い打ちをかけ、銀行を取り巻く経営環境は厳しさを増している。一層のコスト削減が避けられない状況であり、クラウド勘定系は有力な選択肢の1つになり得る。
石川県の北国銀行もクラウド勘定系を採用する方針を固めている。Windowsで動作する日本ユニシスの勘定系パッケージ「BankVision」を米マイクロソフトのパブリッククラウドサービス「Azure」で2021年5月にも動かす計画だ。