【香川県】セラミックス製品開発への実直な想い〜基礎にあるのは試行錯誤の大量のデータ〜

製造業

1948年創業の株式会社アムロン(本社:香川県高松市)は鉄鋼商社として、スタートして、建築、機械、IT、環境分野に事業展開しています。
一商社として、中間流通をさせるだけでなく、どういったことが市場に提供できるのか考え、工場設備を整え鉄骨関係や建築素材の加工にも対応できるよう、流通以外にも幅広い事業基盤をもっています。その中でも環境分野として土壌・水質汚染対策などの技術提案を中心に行う環境事業部では、EMセラミックス製品の製造を通して水質浄化、無農薬栽培の振興を支援しています。今回の取材では、そのセラミックス製造にかけるこだわりをお聞きしました。

香川県高松市 【 株式会社アムロン 開発本部環境事業部 】

取材日:2016年6月24日

セラミックス事業を始めたきっかけ

約25年前、岩﨑一雄会長は、自分の生き方を模索して、何かボランティアをしようと考えていた時期に比嘉照夫教授と出会いました。当時、高松市ではEMに関する農業指導が活発に行われていたこともあり、EMの講演会に参加したことがきっかけでした。講演を聴いた後日、ある営業マンの「うちでもEMを使っていますよ」という一言によって岩﨑会長はEMに興味をもつようになりました。
その後、EMの普及に携わる方々と交流を深め、EM技術を使ったセラミックスを作ってほしいと依頼を受けました。しかし、アムロンの主力事業は創業当時から鉄鋼商材を流通させること。製造した実績が全くないセラミックスを、会社として商品化したことは、これまでありませんでした。

「本業と無縁の物だし、事業として経験も実績もない。ただ、EMの普及に役立つことであるならばやろう」と岩﨑会長は決意。そして、その動機は善からきているのか、そこに悪はないのか自分自身に問いかけ、製造に踏み切りました。陶磁器の製造地として有名な愛知県瀬戸市から専門家を呼び、工場の片隅に製造用の機械を集めてラインを組むところから始めました。セラミックスの品質も機能性のことも何もわからないゼロの状態からのスタートでした。
  • アムロンの名前の由来は社内報のタイトルである「てつわん」。「Arm of Iron」から「AMRON(アムロン)」という社名が誕生しました。
  • 代表取締役会長 岩﨑一雄氏
ポイント
トップインタビュー
アムロンが目指す場にエネルギーを与えるリーダー像について
人生とは自分の想いから設計するもので、それが線になって絵となり、現実に現れてきます。自分の人生はこうしていこうというアンテナがあるから、情報を受信できます。リーダーは物ごとをあらゆる視点から常に俯瞰して見て、チームを目指す方向へ駆り立てながら、夢を与えていくものです。その方向性がどのような未来に繋がるのかを示していけば、社員のやる気、生きるエネルギーに繋がります。また、目標は願望ではいけなくて、夢には必ず期日を設定しています。来年にはここまでいく、何年後にはここまでいく、それが実現性のある夢です。それが短期では計画になり、長い目で見れば展望になります。展望になれば、現在からそこに向けて軌道修正ができるようになります。

昔の人は「若いころに苦労せよ」とよく言っていましたが、若い時にこそ苦労することが大切で、年をとって成功した人の話を聞くと若い時に苦労した人が多い。「人は2杯のコップの水を飲み干して死ぬ。1杯は甘い水、もう1杯は苦い水だ」という話があります。自由奔放に生きて、甘い水ばかり飲んでいたら年齢を重ねた時に残っている水は苦い水だけ。私は30歳の時に自分なりの人生設計をして、甘い水を封印しました。だからこそ、今の私があると思っています。
代表取締役会長 岩﨑一雄氏

失敗の繰り返し、それでも機能性が高いセラミックス製品を目指して

井上常務取締役(左)と製造現場担当の小山さん(右)、藤田さん(中央)
チーム一丸となって調査した結果、EMセラミックスの製造を始めるにあたり、製品化への大事なポイントは「土」と「水」であるということがわかりました。

「良い製品を作るには、必ず良い材料を揃えて使わないといかん」。その岩﨑会長の想いもあり、全国から土を取り寄せて、3種類にまで原産地を絞り込みました。そして仕入れの度に重金属汚染がされていないかどうか調査し、水は工場を建設した土地の地下150mにある水脈から直接汲み上げて安全な製品作りに徹底的にこだわりました。

ふさわしい原材料が見つかり、次は機能性の高い製品を作るための実験に着手。実験専用の小型焼成炉を使い、機能性の高いセラミックス製品を作るためのレシピを見つけようと、何百回と焼いて失敗と工夫を重ねました。
「四角く焼きあがったセラミックスの固まりをハンマーで砕いて、粉にしては実験を繰り返し、身体中が粉まみれになりながら、製造していました(笑)」と当時を振り返る井上さん。試行錯誤の末、積み上げられた焼成温度や時間のデータの数々は自動焼成炉のシステムに入力され、焼成から自然冷却の工程までを製品別、季節別にプログラムを構築し、コンピュータ管理でEMセラミックスの大量生産ができるようにしました。
  • 不純物が少ない綺麗な地下水を汲み上げ、工場内に引き込んでいる。この水をEMセラミックスの製造時に使用。
  • 棒状になった粘土は円柱状に刻まれる。
  • 1日1回で200㎏製造するコンピュータ制御の焼成炉。
  • 焼成炉は季節に応じた工程もプログラム化しているので、自動対応。

データの存在が信頼できる製品に繋がる

アムロンのセラミックス製品は原材料の段階から機能性を高めるために使用するものを吟味しています。製品によって、土の配合率や種類、さらに焼成温度を変えて、焼いています。焼く温度によって、セラミックスの性質は大きく変わります。表面にできる微細な孔の数が変わってくるためです。700度ほどの低い温度で焼くと、吸着性が高いセラミックスが出来上がります。吸着性が高いセラミックスは、電子顕微鏡でないと見えないほどの微細な孔の中に微生物が定着して水中に存在する有害物質の分解を促進したり、ホルムアルデヒドなどの化学物質を吸着除去することに一役買います。

例えば、窒素の分解に特化した製品は、河川の水質浄化に適しています。海水はリンによって汚れやすく、河川の淡水は窒素が多いと汚れるという傾向があります。使い分けられるように、そこで、用途に合わせてリン吸着と窒素吸着のどちらかに特化した2種類のセラミックスを、積み上げたデータを基に製造しています。建材や塗料専用の粉末状の製品もあり、ペンキなどに少量入れることにより、化学物質の吸着除去に効果を発揮します。

「セラミックス自体の機能性にもとことんこだわり、実験を何度も重ねて導き出した結果が製品開発に活きています。能力の部分には誠心誠意、力を込めています」と井上さん。この一言がアムロンの環境分野に向けた製品の信頼性を表しています。そして、環境事業部では、地球環境への想いを形にするために、実験データを基にした製品開発や技術提案にこれからも注力していきます。

 
  • 磁器化したセラミックスをアクセサリーに。
  • 水道水中の化学物質の吸着除去に活躍する「素焼きパイプ」。
  • 多孔質セラミックスである「素焼きタイプ」は水槽に入れても、水質の維持に役立つ。
  • 住環境悪化の防止に役立つ室内専用のセラミックス。家具に付着しているホルムアルデヒドや悪臭を吸着する。