これが終わったら同じシーンを鈴木悟視点で投稿します。
「スズキサトル・・・あ、あの・・サトル様とお呼びしても?」
そう尋ねると死神は少し身じろぎするかのように体を震わせた。
「はは、私は”様”と呼ばれるような者じゃありませんよ・・気軽にスズキさんとでも———」
「あ、あなた様をそんな風に呼ぶことなどできません!お許しを・・・」
命の恩人、それも神の名をそんな気軽に呼ぶことなどできない。そんなエンリの思いが通じたのか「あ、はい。ではご自由に・・・」という声が聞こえた。
「あの、サトル様・・・お願いがあります」
気づいたらそんな言葉を口にしていた。
「ん?なんでしょうか」
突然の言葉にもかかわらずサトル様はやさしくその先を促す。——自分達の命を救ってくれた上に”神の血”まで恵んでいただいたのだ。これ以上甘えてはいけない——そう思い『すいません、何でもないです』と言おうとするが、出てくるのは別の言葉だ。
「両親を・・村のみんなの命も救っていただけないでしょうか?」
———ああ、ただでさえ返しきれない恩があるというのにさらに願いを口にしてしまった。
「村が・・突然さっきの騎士達に襲われて・・・お父さんは私達を助けるために立ち向かって・・・」
しかし他に頼れるものも存在しない。サトル様に縋り付きながらさらに懇願する。
「お願いします・・・私の・・私のすべてを捧げます!・・どうか・・・」
さっきはネムさえ助かれば他はどうなっても構わないなんて考えていたのに、いざ自分の命が助かってみればどんどん願望が溢れ出てくる自分に嫌悪感を感じる。
隣ではネムも自分と同じように「お願いします!」と言いながら縋り付いている。
サトル様からすればさぞ醜く見えているだろう。助けてもらっておきながらさらなる願いを口にする浅ましい姿は・・・
まるで時が止まったかのように沈黙が辺りを支配する。長時間———実際にはそう長くはなかっただろうが———じっとサトル様の眼を見つめながら答えを待つ———するとサトル様が静かに返答した。
「そんなものいりませんよ」
エンリは絶望すると同時に自分を恥じた。『私のすべてを捧げる』だって?おこがましい!どう考えたらただの村娘にすぎない自分にそんな価値があると云うのだろうか。
「誰かが困っていたら、助けるのは当たり前・・・ですから」
うつむいて涙を流すエンリにそんな声が聞こえた。驚いて顔を上げると少し視線を逸らしながら優しい笑み———表情がわからないのでそんな雰囲気がしただけだが———を浮かべた顔が目に入る。
「私にまかせてください」
そう言いながら二人の頭を優しく撫でる。白骨の手はごつごつしていたが、不思議と暖かかった。
「あ・・・」
その言葉が頭に染み込むと同時にさらに涙が溢れてくる。しかしそれは先の物と違いとても暖かいものだ。ネムと二人泣きながらただありがとうございますと繰り返すが、ほとんど言葉になっていない。
そんな二人を見てサトル様はどこからともなくハンカチを取り出して、涙を拭ってくれた。それはまるで水を織り込んだかように柔らかく、慈愛に満ちたサトル様そのもののように感じた。
◆
『少し離れていてください』と言いながらサトル様が歩いていく。頭から離れる手が名残惜しかったが、邪魔をするわけにはいかない。サトルさまは二人から数メートル離れたところで止まり。そのまま立ち尽くしていたかと思うと左手を前方に突き出す———が何も起こらない。
(いったい・・何を・・・?)
目の前の偉大な存在が何をしようとしているのか理解できない愚昧なこの身が嘆かわしい。そう思いながら固唾を呑んで見守っている中、それは突然起こった。
サトル様を中心に十メートルにもなろう巨大な魔方陣が展開される。魔法陣は蒼白い光を放ちながら半透明な文字とも記号ともいえるようなものを浮かべている。それはめまぐるしく形を変え、一瞬たりとも同じ文字を浮かべていないように見える。
そんな幻想的とも言える光景に見入っていたが、ふと視線を戻すとサトル様の右手には小さな砂時計のような物が握られていた。それが握りつぶされると、零れ落ちた砂が魔法陣の中を駆け回る。
『〈
そんな言葉が耳に届いた瞬間、周囲に六体の天使が光の柱と共に出現した。
「———すごい」
なんとも陳腐な言葉だがエンリにはそれ以上に適した言葉が見つからなかった。出現した天使は獅子の頭を持ち、広げられた翼と体を包む翼が一対づつ、計四枚の翼。体には光り輝く鎧を着用し、その手には目の文様が記された盾と穂先が燃え上がる炎で包まれた槍を携えている。
なんの知識もないエンリでさえ、途方もない力を持っていると断言できるその姿は圧倒的な存在感を放っている。
光の柱が消えると同時に、六体の天使達はサトル様の前に跪く。———神の前に跪く天使達。その光景はまるで神話の世界を切り取ったように神々しかった。そして先頭の天使が口を開く。
「〈
発せられる声は雄々しくも深い知性を感じさせる。その声にサトル様は頷くと、次々と呪文を唱えていく。
呪文の度にサトル様と天使達、そしてエンリとネムの体が様々な色の光に包まれる——と同時に体中に力が満ちていく。
驚愕しながら体の調子を確かめていると、サトル様がゆっくりとこちらに振り向いた。
「村まで案内してもらえますか?」
・童貞
・美少女
・上目遣い
・ボディータッチ
・・・つまりそういう事です。