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【社説】

安倍改造内閣が発足 改憲より信頼回復だ

 自民党新執行部と改造内閣が発足した。新体制の下、これまでの強引な政権・国会運営を転換できるのか。政治への信頼回復に最優先で取り組むべきだ。

 自民党総裁選で連続三選されたことを受けて、安倍晋三首相がきのう自民党役員人事と内閣改造を行った。安倍氏にとっては最後の三年間の始まりである。

 まず、注目したいのは憲法改正に向けた自民党の布陣だ。

 党の改憲原案を取りまとめる党憲法改正推進本部長には下村博文元文部科学相を、原案を国会提出する際、了承が必要な総務会を取り仕切る総務会長には、加藤勝信前厚生労働相を起用した。

◆今秋の提出に反対多数

 下村氏は首相出身の細田派に所属し、首相との関係も近い。加藤氏は総裁選で一部が石破茂元幹事長を支持した竹下派所属だが、二〇一二年の第二次安倍内閣発足以来、官房副長官や厚労相として一貫して首相を支えてきた盟友だ。

 首相は、憲法九条に自衛隊の存在を明記するなどの改憲案を主張し、改造後の記者会見でも、秋に召集予定の臨時国会に自民党改憲案の提出を目指す意向を示した。

 自らと近い関係にある二人を改憲手続きの要となる職に就け、改正憲法の二〇年施行に向けた環境を整えようとしているのだろう。

 しかし、改憲は、その是非を最終的に判断する国民が切望している状況とは言い難い。

 党総裁選での連続三選を踏まえて行われた共同通信社の全国電話世論調査では、秋の臨時国会への党改憲案提出に「反対」とする回答は51・0%に上り、「賛成」は35・7%にとどまった。

 安倍内閣が最も優先して取り組むべき課題でも、改憲は下位にある。与党の公明党の理解すら得られない改憲を、強引に、拙速に、進めるべきではない。

◆「森友」責任とらず続投

 次に、閣僚の顔触れを見てみよう。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、河野太郎外相、茂木敏充経済再生担当相、世耕弘成経済産業相、公明党の石井啓一国土交通相の六閣僚が留任した。

 首相が政権の「土台」と位置付ける主要閣僚を閣内にとどめ、政権安定を優先させたのだろう。

 ただ麻生氏は、森友学園を巡る決裁文書の改ざんや、事務次官が辞任に追い込まれたセクハラ疑惑を巡り、財務省のトップとしての責任をとるべき立場にある。

 にもかかわらず、続投とは、首相が一連の政権不祥事を軽視しているとしか思えない。自らの任命責任を回避するために、閣僚の責任をあえて問わないのだろうか。

 同様に、首相の盟友である甘利明元経済再生相の党選挙対策委員長への起用にも苦言を呈したい。

 秘書や自身の現金受領問題で閣僚を辞任した甘利氏は、あっせん利得処罰法違反容疑などで告発されたが不起訴とされ、その後の衆院選でも当選を果たしてはいる。

 とはいえ、大臣室で現金を受け取る行為への不信感は拭えず、説明を十分果たしたとは言い難い。

 国会で野党の追及にさらされる閣僚起用は見送られたが、来年の統一地方選や参院選を仕切る選対委員長は党四役の一角だ。要職起用を免罪符としてはならない。

 十九閣僚のうち初入閣は半数を超える十二人に上る。総裁選で争った石破氏の派閥から衆院当選三回の山下貴司氏を法相に起用したが、ほとんどは衆院当選六~八回のベテラン議員で、新味にかけることは否めない。

 首相は、総裁選で支援を受けた各派閥に配慮して、閣僚待機組を起用したのだろう。

 その余波なのだろうか、女性閣僚が片山さつき地方創生担当相一人の起用にとどまることが気掛かりだ。

 一四年九月に発足した第二次安倍改造内閣は「女性の活躍推進」を掲げ、五人の女性閣僚を登用した。野田聖子総務相、上川陽子法相の女性二閣僚を起用した昨年八月の内閣改造と比べても、後退した印象は否めない。

 首相が「女性活躍」の旗を引き続き掲げるのなら、党内にこだわらず、民間からの女性登用も含めて検討すべきではなかったか。

◆強硬な政治姿勢は慎め

 共同通信社の全国電話世論調査によると、安倍内閣が最も優先して取り組むべき課題は「年金、医療、介護」「景気や雇用など経済政策」「子育て・少子化対策」の順に多い。いずれも暮らしに密接に関わる政策課題ばかりだ。

 政権が一丸となって全力で取り組むのは当然としても、その前提となる政治、行政への信頼回復も急務である。信頼を欠けば、国民の理解や協力は得られない。

 そのためには国民の声や野党の言い分にも真摯(しんし)に耳を傾け、これまでのような強硬な政治姿勢をまず改める必要がある。自説を言い募るだけでは信頼回復など望めない。信なくば立たず、である。

 

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