「なぜロトの剣は安いのか問題」 8つの仮説 【ドラクエ考察シリーズ】

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◆それなら2Gで買いましょう◆

 私には『ドラクエ』でどうしても納得できない疑問がある。それは、、、

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 なぜロトの剣は安いのか問題!

 『ドラゴンクエスト』に出てくる伝説の武器・防具といえば「ロトの剣」をはじめとするロトシリーズであるが、それらのアイテムは伝説と呼ばれているわりに市場価格があまりにも安いのである。

 たとえば『2』で必死こいてロトの剣をGETしたとしよう。売る気は更々ないものの自慢がてら道具屋へ見せに行いくと「ロトの剣ですね、それなら2Gで買いましょう」なんて、寝言みたいなこと抜かしやがるのだ。

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 ※実際の画面

 はあ? 自分、これ伝説の武器やで。
 はい。ロトの剣ですよね。ですから2Gで、、、
 話にならんわ、店長呼ばんかいワレホンマに~!

 なんてトラブルになってもおかしくない案件だろう。なぜロトの剣はこれほどまでに、商売人連中から不当とも思える低評価を付けられているのだろうか、、、



◆ロトシリーズの売価◆


 ※ジャケットに描かれている勇者の持つ武器・防具は、いずれの作品もロトシリーズではないように見える

 考察を始める前に、ロトシリーズについておさらいしておく。ドラクエの『1』,『2』,『3』はロト三部作と呼ばれており、ロトシリーズもロト三部作にしか出てこない(一部例外あり)。したがって今回の考察はファミコン版のロト三部作のみを対象とすることにしよう。

 それをふまえた上で、各作品におけるロトシリーズの売却価格を確認すると、、、

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 安っ!

 『2』のひのきの棒の売価が15Gであることを考えると、ロトの剣のみならずロトシリーズ全体が異常に安く見積もられていることを改めて痛感するのだ。



◆そもそもロトとは?◆

 『3』にはロトシリーズの武器・防具が出てこないため売価もないわけだが、その理由はロト三部作の時系列が『3』→『1』→『2』の順だからである。そもそも『3』の勇者がその功績を称えられ「まことの勇者はロトを名乗る」というアレフガルドの古い伝承になぞらえて、ときの王様から勇者ロトの称号を承ったという経緯があるのだ。

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 ※『3』エンディングより(イメージ画像)

 ラスボスを倒した『3』の勇者は人知れず姿を消してしまった。「そのとき彼が残していった武器・防具がのちの時代にロトシリーズとなった」というのが公式見解である。

 具体的にそれがどんな武器・防具だったのかについてはEDメッセージに具体名が語られていないため、諸説あるものの、2011年発行「ドラゴンクエスト冒険の歴史書」に以下のような思わせぶりな記述があった。

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III
「ロトの○○」という名前の装備品は登場しない。しかし、王者の剣、ひかりのよろい、ゆうしゃの盾は、とある理由で外見がロトの装備そっくり

 これ以上ない思わせぶりであるが、決定的なエビデンスとまでは言えないだろう。

 ひとつ、注意すべきは『3』の勇者=ロトではないという点だ。『3』の時点で勇者ロトは伝説上の人物だったので、それよりはるか以前に勇者ロトの発祥となったエピソードが存在したはずである。それを仮に『0』としよう。時系列にすると以下のようになる。

roto5.png

 なぜ『0』→『3』の間にロトシリーズが生まれなかったのかについては、初代ロトは素手だったとか、あるいは単純にどっか行っちゃったとか、そんなところだろう。その辺りは本題ではないので先へ進ませてもらう。



◆8つの仮説◆

 さて、お勉強の時間は終わりだ。背景もわかったし、いよいよ、ここからは様々な仮説について検証・ツッコミを入れて行くぞ!



1、偽物を疑った説

 まずはこれ。「なんでも鑑定団」なんか見ていると、本物だったら100万円、偽物だったら500円というようなシチュエーションによく出くわす。いつもその落差には驚いてしまうのだが、つまり道具屋は偽物を疑ったんじゃないかとするのがこの説である。今までさんざん偽物を売りに来たやつがいたんじゃないだろうか。しかしだとしたら「これは偽物ですね」ぐらいセリフがあってもいいと思うのだが、、、
 しかも、単純に金属のカタマリとして見た場合、その原価を考えたら2Gなんてことは無いだろう。もしかして武器・道具屋組合が偽物の買取を禁止しているのかもしれないが、その場合はキッパリと買取拒否するはずである。(本物なのに)


2、コンディションが悪かった説

 ファミコンカセットでも箱説が無かったり、汚れていたり、割れていたりしたら、その値段は大幅に下がる。この剣も、とんでもなく汚かったり、所々欠けてたり、折れてたりしたのではないだろうか、というのがこの説である。しかし、これも原価を考えたら、2Gなんてことは無いだろう。再利用できないほど朽ち果てていたのだとしたらそもそも武器として機能しないはずである。


3、呪われていた説

 ドラクエ世界には呪われている武器・防具がたくさん存在する。それらの呪いのグッズは武器・防具として恐ろしく秀でている代わりに、装備すると体が麻痺したり、王様から忌み嫌われたりというデメリットがあるのはご存知のとおり。それを踏まえて、実はロトシリーズも呪われていたのではないかというのがこの説だ。
 しかし呪いのグッズはむしろ高く売れることが多い(※)のだ。おそらくドラクエ世界には呪物蒐集が貴族や資産家の間で嗜(たしな)みのひとつとなっているのだろう。呪い専門の鑑定士が「いい呪いしてますねえ」とか何とか言って適当に高い値段をつけているんじゃないだろうか、大切になすってください、とか言って、、、

 ※ 『3』の般若の面(売価1G)など一部のアイテムを除く


 

4、勇者しか扱えない説

 万が一、呪われていたとしたら勇者になんらデメリットが無いように見えるのはなぜか。この疑問を解決するのがこの説である。ロトシリーズの武器・防具はロトの血筋の者でないとまともに扱えないようになっている呪物なのだ。きっと。
 しかしだとしたら2Gという値踏みは不可解である。前述の通り、ドラクエ世界には呪いグッズの市場が確立していることは間違いない。たとえばその呪いがロトの血筋の者以外の人間が触っただけで死ぬレベルだったらそもそも買取を拒否するだろうし、そうでないなら、もっといい値段で買い取るはずである。どちらにしても不可解なのだ。


5、三種の神器説

 ご存知、三種の神器は天皇の所有物だからこそ本物だとされている。ロトシリーズも同様に勇者が持っていたからこそロトシリーズと呼ばれるようになったのではないかというのがこの説である。たとえば『3』の勇者が持っていた剣は、後世に伝わっているような立派なものではなく、当時はボロボロの棒切れみたいなものだったのかもしれない。時代を経て打ち直されたり、装飾が施されていったのかもしれないのだ。『2』の世界ではロトシリーズが最強の武器ではないことも傍証となろう。
 しかし、だとしたら「そんな装備でよくラスボスを倒せたな」というツッコミは避けて通れない。それとも前述の「勇者しか扱えない説」とミックスして、普段はボロボロの棒切れだけど、勇者が持った途端、立派な剣に変わるとでも言うのだろうか、、、 


6、組合の協定説

 アカデミー賞のトロフィーであるオスカー像は売買が禁止されており、万が一売りに出された場合は1ドルでアカデミーへ譲渡しなければならないという規定があるのはご存知だろうか。これと同様にドラクエ世界の武器・道具屋組合には「ロトシリーズは○○ゴールドで買い取る」という協定があるのだと主張するのがこの説である。
 ドラクエ世界における伝説のロトシリーズは埋蔵文化財であり、その所有権は王室にあるためロトの血を引く者以外は単純所持しているだけで処罰の対象となる。したがって買い取られたロトの剣は、すぐさま王室の役人が飛んできて没収していく。有事のとき本物の勇者へ託すため、王室にはロトシリーズを所持・保管しておく責務があるからだ。
 だとしたら、なおさら本物の勇者である主人公がロトシリーズを売却できてしまうのはシステム的におかしいという反論があるかもしれないが、そもそも「道具屋にロトシリーズを売り払っちゃうようなやつが本物の勇者なわけがない」というのが王室の見解なのだろう。我々は試されているのかもしれない、、、




7、道具屋には識別できない説

 『3』の勇者が残して行った武器・防具について確定的な公式アナウンスは存在しない。したがって「ラスボスを倒したときの装備」と解釈すると、どの武器・防具でクリアしたかは、そのプレイヤーにしかわからない情報(未プレイの場合は誰にもわからない情報)であるから、当然、道具屋には識別できないと考えるのがこの説である。
 たとえば、ひのきの棒で『3』をクリアしたプレイヤーにとっては、ひのきの棒こそロトの剣ということになるだろう。ドラクエが手本にしたゲームのひとつであるWizardryシリーズに注目すると、同作では正体不明のアイテムを識別なしで売ると相応の売価になることから、ロトの剣の2Gも何か相応のアイテムの売価だと主張するのがこの説の最大の特長だ。しかしロト三部作のドラクエ世界で売価2Gに相当するアイテムは今のところ見つかっておらず、また、なぜ2Gに統一されてしまっているのかについても明確な答えは示されていない。



8、容量の制約上「買取拒否パターン」を入れられなかった説

 最後は少々メタ的な理由。ドラクエ第一作目である『1』は容量が極小だったことから、データ節約のため涙ぐましい努力がされたことで知られている。おそらく「それは買取できません」という買取拒否パターンのセリフも、容量の関係で削らざるを得なかったのだろう。苦肉の策でロトの剣、並びにロトの鎧の売価を、プレイヤーが絶対に売らないであろう最低金額の「1G」に設定したのではないかと主張するのがこの説だ。

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 ※『2』で実装された買取拒否パターンのセリフ

 それをふまえて、『2』では念願の買取拒否パターンが実装されたわけだが、なぜかロトシリーズは買取拒否にならず、安価で売却されてしまうというネガティブな設定だけが引き継がれてしまった。その理由についてこの説は「スタッフの遊び心だったのでは」と推測するにとどまっている。




 以上が主な8つの仮説である。

 個人的には一番最後の仮説のようなメタ的なものではなく、思わず想像力・妄想力がフル回転してしまうようなドラクエ世界の物語の中で説明できる理由を探しているのだが、皆さんなら、どんな回答を導き出すだろうか。



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聞かせてくれい!




 ※ちなみに『3』では、死んだ者を生き返らせることのできるアイテム「世界樹の葉」も、そのチートな効能のわりに売価がわずか3Gと異常に安いのだが、こちらは昔から議論されている「ドラクエ世界における“死”とは何か問題」に絡んでくるため、今回はあえて距離を置いている。

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