熊本地震:生活保護を利用中でも義援金は受け取ることができ、金額に上限はありません

災害は人を選びませんが、被災・避難・再起には貧富の差が影響します。(写真:児玉千秋/アフロ)

熊本地震に際し、義援金と生活保護がどういう関係にあるのかを解説します。

結論からいえば、生活保護利用者も義援金・補償金・賠償金等(以下「義援金類」)を受け取れます。

金額に上限はありません。

ただし、福祉事務所に対して手続きが必要です。

生活保護利用者も、本来は無条件に受け取れるはずの義援金類

生活保護費用は、あくまで「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するものです。災害など不測の事態に対する備えは、前提とされていません(それでも多くの方々が、爪に火を灯すように貯金をされます。必要ですから。そして「貯金できるほどの余裕があるなら削れる」論の根拠にされたりします)。

災害は、その人が生活保護なら避けて通ってくれるわけではありません。むしろ生活保護の方々の住環境は、地域の「ふつう」より劣悪なことが多いため、生活保護ならば、より多くの被害を受けている可能性も高いです。

災害で住むところがなくなった場合、そこにあった電気製品や寝具が使えなくなっていたりもするでしょう。

義援金類は、あくまで被災に対するものです。

ですから「生活保護だから受け取れない」、あるいは「生活保護だから制限がある」わけがありません。

また、「生活保護だから、保護費以外の収入があったということで行政に召し上げられる(収入認定)」ということもありません。

(後記:ただし、「包括計上」(とりあえず受け取れて自由に使える)が可能な金額には、事実上の上限があり、40~50万円と考えられています(参照:ダイヤモンド・オンラインの拙記事))

ただし、義援金類の受け取りには一定の手続きが必要

厚生労働省の局長通知には、義援金類に対して「無条件に受け取れる」と「自立更生のためなら受け取れる」の2種類が含まれています。

東日本大震災以後の運用では、ほぼ「自立更生のためなら受け取れる」となっています。

このためには、「自立更生計画書」という書類を福祉事務所に提出する必要がありますけれども、被災して義援金を受け取ろうとうする場面で、将来何にいくら使うかが明確になっていることは考えにくいので、概算で「避難にいくら、新しい住まい探しにいくら、使えなくなった電気製品や家具の購入にいくら」と書いておけば大丈夫です。

もちろん、福祉事務所に収入申告を行っておくことは大前提ですが、万一余ったとしても「余った分は収入申告しなくてはならない」ということはありません。また「実際には避難せずに済んだので、子どもの制服と学用品を買い直した」というときに「用途が違うから」と返還を求められることもありません。

用途として認められる範囲も広く、事実上、その世帯が被災前に使用・所有していたり、あるいは使用・所有の予定があったモノやサービス、被災前の状況に戻すために必要なモノやサービス全般が含まれます。「災害から日常へ」の自然のなりゆきを考えれば、当然の話です。生活保護だからといって、復興のための特別なルートがあるわけではありません。

厚労省が用意した「自立校正計画書」様式。同じ項目と内容があればメモ用紙でもよい。
厚労省が用意した「自立校正計画書」様式。同じ項目と内容があればメモ用紙でもよい。
災害時の自立更生に必要とされる品目例一覧(厚労省による)。
災害時の自立更生に必要とされる品目例一覧(厚労省による)。

義援金を受け取っても、生活保護は打ち切りにならない

もしも義援金類が「一人あたり1000万円、夫妻と子ども8人で1億円」というような金額ならば、「当分はそのお金で暮らしてください」と、生活保護の中断・打ち切りが検討される可能性は高いでしょう。

しかし実際には義援金類は、避難や生活再建に対して充分とはいえない数十万円単位の金額であることが多いです。

そういう問題は、最初から発生しません。

義援金類を受け取ってから生活保護を申請する場合には要注意

被災して生活が立ちゆかなくなり、「生活保護しかなさそうだ」という状況にある場合、先に義援金類を受け取ってしまうと、

「手持ち金がまだあるから」

ということで、つまり「充分に貧困にはなっていない」と判断され、生活保護の対象とならない可能性もあります。

「住むところがなくなり、現に避難所生活をしていて、大変で」

といっても、本来の住居ではない避難所で生活保護を受けることが実際には困難なのです(「行き倒れ」と同様の運用の考え方(現在地保護)で受けられますし、厚労省もそういう考え方で柔軟に運用するよう通知を出していますが)。

生活保護しかなくなる可能性がありそうだったら、義援金類を受け取る前に、まずは生活保護に詳しい法律家等に相談を。

情報源

  • 相談窓口

生活保護問題対策全国会議:生活保護のことで相談したい場合は、こちらへどうぞ(相談先リスト)

(生活保護に限らず、生活困窮全般に対応可能です)

義援金問題を含め、災害支援・災害からの復興と生活保護について、誤解野多いポイントが分かりやすくまとめられています。

生活保護と義援金について、1995年の東日本大震災まで遡り、どのような制度があり、どのように運用されてきたかを解説しました。

お近くの困窮しているかもしれない被災者の方が気になる方、生活保護を利用していて義援金の受け取りを迷っている方がお近くにいる方は、ぜひこの情報を、必要とされるご本人にお伝えください。

隣の福岡県出身者として、どうぞよろしくお願いします。

(参照:Y!ニュース:熊本地震から一ヶ月:いち九州出身・東京在住者の「どう考える? どう行動する? これからどうする?」