生物系にいたんですが、白衣が苦手すぎて(笑)
――カラビナテクノロジーさんでの現在の業務内容を教えてください。
川上 うちでは、納品しない受託開発をやっています。システムって、使われ始めてから価値が出るものなんですね。納品をゴールにしてしまうと、良いものではなくなるんです。そういう概念をなくし、継続的にお客さんと一緒にサービス開発をやっていくスタイルで受託開発をやっています。
――いわゆる「アップデート主義」ですね?
川上 そうですね。週1回お客さんとミーティングしています。内容は一週間でできる業務の範囲、進捗の共有、あとは「こういう方向にピボットをしたい」というご相談を伺ったりですね。お客様が望む形はいろいろ変化していくので、随時対応するために認識の共有をやっています。
――ご経歴について伺います。2013年に九州工業大の大学院をご卒業されたそうですが、大学院ではどういうことをやられていたんですか?
川上 バイオインフォマティクスという分野があって、DNAやタンパク質、いろいろな生物の生命現象を計算機を使って研究する分野です。例えばDNA配列で「病気の人はこういう配列」「健常者はこういうDNA配列」というのを大量に比較し、「こういうDNAがある人はガンになりやすい」みたいなことを実験するとか。僕の研究では、それらを計算機を使って行なっていました。実験結果の論文やデータベースを集約し、キュレーションしたりもしていました。
――分野としては、生物工学に近いのでしょうか?
川上 そうですね。がっつり白衣を着て研究するところもあれば、白衣を着ずにパソコンの前でずっと計算をやっている研究室もあります。僕は後者でした。どちらも生物現象を解明する研究をしているのですが、白衣を着る方は苦手で。小さな試験管にスポイトで材料を入れて何本並べるとか、培養したりとか、その作業が苦手すぎて。スポイト持っている手が震えて、「アル中か」って言われてました(笑)。
――生物工学からITに移られたということですが、内容にはそこまで違いはないのですか?
川上 分野が生物系だっただけで、WEBサイトを作ったりサーバーを触ったりは学生の頃からやっていました。就職にあたり、医療の分野を最初に探しました。生物に興味があったのは、大本には医療に興味があったからなので。
前職では他の大手ベンダーが作った電子カルテの導入をメインにしていたので、そこに配属になりました。電子カルテでも富士通、東芝、NECとかメーカーがいろいろあるんですけど、そういうソフトウェアをそれぞれの病院さんに合わせた形にカスタマイズして導入する業務をやっていました。
基本的には病院に常駐でしたね。システムを作ったり、お客さんにヒアリングして「この業務にはこういう申込書が必要、出力できる機能を作って」という要望を聞いたり。操作説明も業務の一環なので、看護師さんやドクター向けに電子カルテの操作説明をやっていました。
――そこにちょうど3年ぐらいいらしたんですね。転職を考えられたのはどういう理由があったんですか?
川上 他のベンダーさんが作ったパッケージ、商品をカスタマイズして入れるというのが主な業務でしたので、一からサービスを作る仕事をして、Web技術にもっと触れたいという思いが次第に強くなりました。
それに「スーツを着ずにクリエイティブなことをやっている人たちって、かっこいいな」という憧れもありました。早い段階で、WEB業界に転職しようと思っていたんです。幾つか回っているうちに、今の会社の代表に会ったという感じですね。
「学ぶために、コミュニティを作る」スタイル。
――カラビナテクノロジーさんには、どういった経緯で入社することになったんですか?
川上 Wantedly経由で「ちょっとお話でもどうですか」という連絡をもらいました。いろいろ話を訊いて、「リモートワークできる会社を探してるんです」と伝えたら「じゃあ制度を作るからウチにおいでよ」と言われて。「そんな簡単に会社の制度を作れるのか、この人面白いな、フィーリングが合うな」と思って入社を決めたという経緯です。
――リモートワークを希望された理由は、どんなところがあったんですか?
川上 僕は北九州に住んでいるんですけど、カラビナテクノロジーは福岡市内にあります。通勤に1時間ちょっとかかるんですね。その時間がもったいないなと思っていて、フルリモートの会社にも応募していました。でも、いきなりフルリモートも不安だなと思って、リアルとリモートのバランスが取れる会社を探していたんです。カラビナに入ってから最初は会社に通って、週2ぐらいでリモートしていました。今はリモートではなく、北九州のコワーキングスペース「COMPASS小倉」に席を設けてもらいそこに通っています。
――ご自宅でのリモートから、コワーキングに勤務先を変えた理由はなんですか?
川上 カラビナとしても地域課題に着目していて、その一環として北九州を選んでいるという側面もあります。ただ、一番は個人的な理由ですね。子どもが生まれると家では邪魔が入りますし、今年の夏ほど暑ければエアコン代もかさみます。それより、コワーキングスペースを借りて仕事をした方が設備が整っていますし、入居してる人たちとの交流もできますから。
――ずっと福岡にいらっしゃいますが、外に出てみようとは思わなかったんですか?
川上 出張とかで3ヶ月東京いたりということはありましたが、ITであればどこでも働けると思っていたので。地元に家族もいますし、父と母は今こそ元気ですけどなるべくこっちにいたいと思っています。
――「ChaChaTech」と「PyFukuoka」というイベントを主催するようになったきっかけは、どのあたりにあるんですか?
川上 一時期機械学習の勉強をやっていたんですが、1人でやると挫折してしまう人が多いというのがあったんです。同じような悩みを持っている仲間と集まる場をつくろうと思って、東京の会社の社長の方にアドバイスもいただいて始めました。
そうしたら人脈も増えて、貴重な情報を共有してくれるエンジニアの良き仲間が増えたましたね。「学ぶために、コミュニティを作る」スタイルになってきたという感じですね。
――言語に特化したコミュニティなんですね。
川上 最初はデータサイエンスだったんですけどPyFukuokaはPythonに特化したコミュニティです。ChaChaTechという北九州のコミュニティは、北九州を盛り上げるために作りました。福岡市内ではそれこそメルカリ、LINE、GMOペパボ、ヌーラボとかが先頭に立っていろいろなイベントが起きているんですが、福岡県内でもちょっと離れたところでは全然そういう動きはないので。「ここはいっちょ盛り上げるか」という感じですね。最近はリモスタというリモートワーカー向けの勉強会コミュニティも立ち上げました。
――機械学習はどういう部分が難しいんですか?
川上 数学的な要素がすごく強くて、最低でも大学レベルの数学が必要になるところですね。機械学習の勉強をするまで「大学の数学って何に使うんだろう」とずっと思っていたんですが(苦笑)。数学の中でも線形代数とかベクトル、行列、あとは微分積分のちょっと難しくなったやつ。加えて統計学の要素も必要ですし、それでいてプログラミングする能力が要る。
常に勉強すること。
――業務を行なう上で、大事にしているモットーや好きな言葉がありましたら教えてください。
川上 常に勉強することですね。高校までは勉強していたんですが、大学の志望校に受かってからは安堵感からかサボってしまい(苦笑)社会人になってから猛烈に勉強し直しました。大学院には行きましたけど、どちらかというと「まだ就職したくない」という不純な理由だったので。
――とはいえ、大学院を出たアドバンテージはあるのでは?
川上 大学院での勉強が活きているかというと、そうでもないですね。ただ、その頃に出会った人たちは今でも繋がりがあるので、どこかでバイオインフォマティクス分野にも手を出すかもしれないですね。
――自身の成長のために日々行なっていることも、やはり勉強でしょうか。
川上 勉強しないとストレスになるぐらい、少しでもいいので勉強する感じですね。プログラムを書いたり、エンジニアリングだけじゃなくデザイン思考の勉強やスタートアップ系の本を読んで「起業家ってどういうことを考えてるんだろう」とか。読書をしています。
勉強する時間は、子どもが寝たあとの1時間とかですね。短い時間でも、少しでも前に進む。勉強する場所はリビングです。テレビがついてても、あまり気にならないので。
自由度が高い状態が、一番ストレスがないです。
――ここからは、川上さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。
・専門性向上 5
エンジニアである以上、持っているスキルを伸ばしたいので5ですね。
・仲間 5
いろいろ勉強会をやってきた中で、「1人では限界がある」と痛感しました。周りに人がいるから勉強も続けられます。会社から出たメンバーでも、未だに仲良くしている人もいます。LINE Fukuokaさん、Fusicさん、GMOペパボさん、ベガコーポレーションさんあたりに勤めている人と飲みに行ったり、交流とかもありますね。会社の枠を超えた仲間が結構いるという感じですね。
・お金 1
お金はあった方が良いですけど、「後でどうとでもなる」というイメージです。スキルを磨けばお金もついてくると思っているので。
・事業内容 2
事業が面白いか面白くないかは捉え方次第だと思うので。楽しくやろうと思えばできると思いますし、関わった案件から何も学びがないというのはないと思っていて。そんなに気にしていないですね。
・働き方自由度 5
前職も含めて、「自由度が低かった」というのが1番ストレスを感じていたかなと。意見を言っても意味がない社風とか、ITなのになぜ会社に行かねばならないのか? とか。うちの会社は副業もOKなので、副業を通じて他のスキルを伸ばせるのも魅力的です。自由度が高い状態が、一番ストレスがないと感じています。実際にサイドプロジェクトとして「Work designers」という北九州に特化したサービスを北九州仲間とはじめました。
・会社愛 2
代表の福田が言ってることなんですけど、「この会社じゃなきゃダメだ」というのは別に思わなくていい、「でも、この会社に集まりたい」という雰囲気の会社にしたいと。カラビナにいる人は、1人でも生きていけるノウハウを身につけてほしいというのが社長としてはあるんです。「会社のために」というのは嫌いだ、と本人が言っていました。
――一騎当千の強者が集まった上で、カラビナさん自体も魅力的でい続けるという。
そうですね。そういう意味合いもあって、会社愛をあえて小さくしているという感じですね。自分がとった行動が結果的に会社にとって得だったらいい、という気持ちでやっています。
まずは行動してほしい
――最後にこれから転職を志す人たちに向けてメッセージをいただけますか?
最初の転職する一歩を踏み出すのは、すごく勇気がいると思います。特に、家庭を持っている方はなおさら。でも、必ず今の状況から良くなると信じて、まずは行動してほしいと思います。
――今の会社がイマイチでも、なんとなく満足してしまわないでもっと上を目指してほしいと。
そうですね。自分に合った会社が必ずどこかにあるので、それは大小関係なく。でも、そういうことは行動を起こさないとわかりませんから。まずは行動することが大事です。
<了>
ライター:澤山大輔
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