Oct.1.2018
本庶 佑博士がこのたび,2018年度の
ノーベル医学生理学賞を受賞されました
がん免疫療法の新たな可能性を開いた
研究者として知られる方です
あのiPS細胞を発見された
同じくノーベル賞受賞者の
山中伸弥教授が,
いつであれお会いすると
最敬礼したい方であり,
医学界の真のカリスマだと
絶賛される方です
それまでの抗ガン治療薬が
免疫細胞の「アクセル」を
コントロールしようとするものだった
のに対し,
「ブレーキ」をコントロールしようと
逆転の発想をし,
その成果を現実に
がん免疫治療薬「オプジーボ」を
製薬にされました
恥ずかしながら小生は,
博士のお名前はかろうじて
耳にしたことはありましたが,
実際にどのような偉業をなされた方で,
どれほど世界の医学界に
貢献されてこられた方だったのかは,
存じ上げませんでした
先ほどNHKのニュースで,
山中先生がただただ尊敬されておられる
お方だと仰っていたので,
あの小生が敬愛する山中先生が
尊敬される本庶博士とは,
一体どのような方だろうと思い,
急遽,名言を調べてみました
結果,そこには,
科学者の中の科学者としか
言いようのない,
シンプル極まりないメッセージの
数々がありました
さらに,現代日本の抱える
精神的課題や教育的課題も,
ズバリと指摘される,
レーザーシャープな
鋭いことばもありました
本日は
ノーベル賞を受賞されたことを記念して,
本庶 佑博士の
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(和文拙訳)
まずは,科学技術にとって
「問題」とは何かを語られた
フレーズからです
科学技術というのは
一般に問題を見つけるのが
一番難しい
問題を現実的にアプローチ可能な
課題として提示できれば,
答えは半分以上出たようなもの
As for technology,
the most difficult is
to find a problem in general;
If you can suggest the problem
as a task possible to approach actually,
you have as well as got
more than half the answer.
学問の学問たる所以は,
「学び」「問う」ことです
今更ながらに
指摘する必要もないかもしれませんが,
現代日本の教育などでは,
「学び」ばかり強調され,
「問う」ことがいかに軽視されている
ことでしょうか…
この点につきましては,
既にアインシュタインも,およそ
100年前から警鐘鳴らしていました
続きまして,
基礎研究がいかに素晴らしいものであるか
についてのコメントです
基礎研究であれば
何百万何千万人という人を救えるし,
私が死んだ後だって,
誰かが続けてその技術を使ってくれれば,
ずっと患者さんたちの役に立つ
If you are engaged
in the fundamental research,
you’ll be able to save as many as
millions, or ten millions of people,
and after my death,
if someone continues using
my technology,
it will be useful for patients forever.
これにつきましては,
ほぼ同じコメントを山中伸弥教授も
仰っておられました
その基礎研究に対する思いが
報われる瞬間は,
ただただシンプルでした
普段,
基礎研究は地味で目立たなくても,
「あなたのおかげで救われた」
と言ってもらえると,
意義のあることだったと思うし,
本当に嬉しく思う
Usually, the fundamental research
is a chick and not prominent; however,
when someone says,
”You’ve saved me”,
I think it was significant,
and do feel it was so delighted
to have done it.
本庶博士の逆転の発想を生んだのは,
自らの信念を貫かれたことにあります
少なくとも,
メディアで少々叩かれたくらいで
引っ込むようでは,
先の道筋はつけられません
At least, if you withdraw yourself
after beaten a little just by the media,
you can’t have a prospect.
そして「日本社会」の
「長いもの」に対しては,
一切の妥協がありません
私は日本は外に開国すると
同時に内側にも開国してくれ
と言いたい
I’d like to say,
“Oh, Japan, please open yourself
inwardly, as well as outwardly.”
そして…
日本の中の
タコツボを全部壊して,
業界だの部課だのの枠に閉じこもらず,
全部ガラガラポンで,
率直にやろうじゃないですか
Why don’t you break
all the pots of octopuses
around Japan,
and be frank just all in public,
not by withdrawing
into the industries or departments.
アインシュタインは,
教育のあるべき姿は,
単なる知識の詰め込みではなく,
独立思考する個人のトレーニング
でなければならない,
と繰り返し訴え続けていました
この日本社会生まれ育った
本庶博士が,アインシュタインの
そうした視点に極めて近い
思いがあったことは,
間違いないようです
博士には,
近代科学の父・デカルトの,
あの「方法的懐疑」を
端的に貫こうとする,
「科学する精神」が満ち溢れています
教科書はうそばっかりだから,
信じるんじゃなくて,
疑わなくてはダメだ
There are quite a lot of lies
in the textbooks,
so you must doubt them,
not believe in them.
ブッダは,
私を疑え
とさえ,仰いました
疑って,疑って,さらに疑って,
それでも残る何かがあれば,
それを初めて信じよ,
と
その懐疑の炎は,しばしば,
超一流の科学者も絶賛するものです
できることをかけてばかりいては,
ぶれてしまいます
自分が何を知りたいのかを
明確にしてやっていかなければ,
いい研究はできません
if you chase only what you can do,
you will be shaken;
you can’t research well,
unless you make clear
what you want to do.
本庶博士の懐疑の炎は,
ただただ真理への道のためのものです
教科書が全部正しいんだったら,
科学の進歩はない
If all that te textbooks say are right,
there won’t be any progress in science.
本庶博士,
ノーベル賞受賞,
おめでとうございました!
それでは,このへんで