先週、このコラムで旧東独ザクセン州のケムニッツという町で起こった殺人事件と、その後の政治的混乱について書いた。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57310
8月26日、ドイツ人がナイフで襲われ死亡。容疑者として、二人の外国人が捕まった事件だ。当初、警察は容疑者の国籍を公表しなかったが、その後の発表では、両者とも中東難民。シリア人とイラク人で、すでに拘束されている。
殺人事件のあと、ケムニッツ市内では、右派、左派双方のデモが起こった。デモは1日では終わらず、両グループとも、大勢の市民に加えて全国から駆けつけた暴徒、フーリガンが混じり、エスカレートした。ザクセン州からの要請で他州の警察から応援の機動隊が駆けつけたが、ケムニッツ市内は一時、火の手が上がり、器物が破壊され、一触即発の事態となった。
さて、私の書きたいのは、それについての偏向報道だ。
メルケル首相、および、首相官邸のスポークスマンは、ケムニッツで外国人に対する攻撃、扇動があったことを非難した。そして、ほとんどの大手メディアがそれに続いた。名のある報道機関の、名のあるジャーナリストたちが、ケムニッツについてどのような報道をしていたかということは、先週も書いた。
ザクセン州では反民主主義の勢力が台頭し、極右の市民が町に繰り出し、外国人狩りを行っているという報道が、毎日のように紙面を占めた。ザクセンの州民全員が、極右としてバッシングされ続けたのである。
ところが、先週のコラムでも書いたが、外国人排斥の証拠のビデオが見当たらない。唯一、最初からあちこちのメディア(国営放送も!)が使ったのが、下記のビデオ。
これは、「ANTIFA ZECKENBISS」(ANTIFAというのは、アンティ・ファシズム、ZECKENBISSは大型の吸血性のダニの刺され跡)という名前の極左グループが、ユーチューブにアップしたビデオだが、いつ、どこで撮られたものかが不明だし、追いかけられているのが外国人かどうかもわからない。
警察は他にビデオを持っている人がいれば提出して欲しいと呼びかけていたが、私の探した限りでは、他の物はまだ目にしない。