レジナルド・バックフィールド
Reginald Buckfield (イギリス)


 

 第二次大戦下の1942年10月初めのことである。ストルードのブロンプトン通りに住む主婦エレン・シムズが惨殺された。首を刃物で滅多刺しにされている。4歳になる息子は無傷で、その時のことをこのように語った。

「ママは兵隊さんにやられたんだよ」

 翌日、軍服姿の男が現場付近をウロウロしているところを捕らえられて尋問された。名前はレジナルド・バックフィールド。脱走兵だ。直ちに憲兵に引き渡されたのは云うまでもない。
 軍法裁判を待つまでの間、バックフィールドは小説を書いて暇を潰した。題名は『ブロンプトン通りの謎』。件の殺人事件をテーマにした推理小説で、しかも、犯人でしか知り得ない現場の状況が書かれていた。

「いや、もちろんフィクションですよ。こんな風に事件は起こったんじゃないかなあという私の想像の産物です。本当です」

 しかし、官憲は信じなかった。有罪になったバックフィールドは死刑を宣告されたが、後に精神異常と診断され、ブロードムア送りとなった。

 この事件、とても興味深いのだが、殺人現場の詳細と『ブロンプトン通りの謎』なる小説の内容がさっぱり判らない。2つを照らし合わせて論じることが出来ればいいのだが、残念である。
 この件については保留ということで、次行こう、次。


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)


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