かつて存在したその王国は <死> を祀り、
<死> の庇護下にありました。

他の神々と同じく <死> もまた遊戯に興じており、
自身の崇拝者を増やして、
別の神を祀る国を滅ぼすようけしかけていました。
王国の戦士は <死> に祝福された不滅の肉体を持っていたので、
<時> の戦士の早足、<理> の戦士の魔術の火矢、
<地> の戦士が持つ鉄の剣ですら討ち取ることはかないません。

そこで、兄弟たちは集まって知恵を出し合いました。
すると末子である <言葉> がやってきたので、
神々は自らを表す名を <言葉> に与え、
<言葉> による奇跡を起こせるようにしました。

<言葉> が自らの国から信心篤き民の一人を選び祝福すると、
その人間の言葉に力が宿ったのです。
人間は <力ある言葉の*****> を名乗り、
<死> の国との戦に臨みました。

*****が <言葉> の御名において呪詛を投げかけると、
災いが <死> の国を覆いました。
災いは大地を割り、水を枯らし、
<死> の祝福を受けていない民の全てを殺して去りました。

これを見た <死> は遊戯の結果に
すっかり興を削がれてしまったので不貞寝をはじめ、
他の神々も <死> が加わらぬならと一柱また一柱と
眠りにつきました。

そして……残された <死> の戦士たちは
傷を負うことはありませんでしたが、
怒りと憎しみのあまりその身はオバケへと変わり、
心には神々と人間たちへの復讐だけが残りました。

かくして神々の時代は終わり、
オバケと英雄、おとぎ話の時代が幕を開けたのです。

が、そんなおとぎ話の時代もいまは昔――