景況感、足踏み鮮明 9月短観大企業製造業
貿易戦争・原料高・自然災害で3期連続悪化

2018/10/1 10:43
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企業の景況感の足踏みが鮮明になっている。日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の業況判断指数(DI)は前回6月調査から2ポイント悪化のプラス19だった。悪化は3期連続。貿易戦争で輸出に懸念が出ているほか、原材料高や自然災害が逆風になった。2012年から続く景気回復の持続力への不安も出始めている。

業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業を差し引いた値。大企業製造業では17年12月調査でプラス25と11年ぶりの高さを付けてから悪化が続いている。3期連続の悪化はリーマン・ショックの影響が続いた09年3月までの6期連続以来の長さだ。QUICKが事前に集計した市場予想平均(プラス21)も下回った。

米中が追加関税を課すなど貿易戦争が深まっていることが景況感に影を落としている。生産用機械や業務用機械で業況感が3~5ポイント悪化した。将来の世界経済の減速や輸出の減少を懸念する企業も増加。自動車や化学などが先行きの業況感の悪化を見込んでいる。

もう一つの重荷が原料価格の上昇だ。原油価格が1バレル70ドル台に上昇し、石油・石炭製品は18ポイントも悪化。窯業・土石製品や繊維も11ポイントと大きく悪化するなど素材業種を中心に影響が広がっている。

大企業非製造業の業況DIもプラス22と2ポイント悪化した。悪化は8四半期ぶり。天候不順や自然災害が打撃となったほか、人手不足が一段と深まっていることも影響している。

一方で設備投資は強気の計画を維持した。大企業全産業で18年度は前年度比13.4%増を見込む。9月時点の比較では90年度以来、28年ぶりの高水準だ。日銀によると現時点では「貿易戦争の影響で設備投資を具体的に先送りしたという事例はほとんどない」という。

短観は全国約1万社の企業を対象としたアンケート調査。中小企業を含め調査対象が幅広い。速報性も高いことから、景気の変調をいち早く映すことがある。今回の調査期間は8月27日~9月28日で、回収基準日の9月10日に約7割の企業が回答した。台風21号や北海道地震は9月上旬にあったため「影響を踏まえていない回答も含まれる」(日銀)という。

18年度下期の想定為替レートは1ドル=107円29銭と6月調査とほぼ変わらなかった。ただ足元では113円台後半まで円安が進んでおり、為替面では今後、輸出企業の収益に追い風となる可能性もある。

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