特報とやま誤訳なの? サンダーバード 元は特急 JRは否定
ライチョウ人気「伝説にならないで」富山、石川でよく見かける店名「サンダーバード」。両県になじみの深いライチョウを英訳していると思われがちだ。しかし、実は正しい訳はグラウス(grouse)か、ターミガン(ptarmigan)。サンダーバードは北米の一部地域に伝わる神話に登場する鳥を指す。では、なぜ、誤解から生まれたサンダーバードがここまで広まったのか。理由を探ると-。(向川原悠吾)
石川県白山市のJR美川駅構内で一九九五年にオープンした喫茶サンダーバード。今は改装して店名は変わったが、当時を知る市地域安全課の畑竜太郎さんによると、特急サンダーバードから名前を取ったという。記者が英語名は違うと伝えると、「そうなんけ」と驚いた様子。その上で「絶滅が心配される鳥だから、伝説の鳥にはなってほしくないね」とうまい具合に切り返された。 富山県立山町のコンビニ「立山サンダーバード」も特急から名前を取ったという。九六年に開業した店主の伊藤敬一さんは「うちはライチョウの英訳ではないよ」と説明したが、息子の敬吾さんは「単にそのまま直訳したそうですよ」。真偽は不明だ。 特急以外から名付けたのは運転代行業の「サンダーバーズ代行」(富山市)。社長の谷口正晃さんは応援するプロ野球独立リーグ富山サンダーバーズから名を冠し、二〇〇八年に開業した。サンダーバードはライチョウと思っていた。「名前は違っても親しみやすくなってくれれば」と期待する。
では、その富山サンダーバーズはどう命名されたのか。社長の永森茂さんによると、県民から親しまれる名前にしたのだという。「ライチョウが根付く富山はグラウスより、特急が通るサンダーバーズでいいと思った。最初は『寒ぶりファイターズ』なんて案もあったし」と苦笑い。 元をたどれば、特急サンダーバードに行き着く。JR西日本によれば、当初は「特急雷鳥」だったが「特急スーパー雷鳥」となり、九五年から特急サンダーバードへと名が変わった。 「これは明らかに直訳しただけでは」。記者がそう尋ねると、担当者は「神話のサンダーバードのように力強く走ってほしいと願いが込められました」と口は堅い。ただ「直訳のミスかは知りませんが、ライチョウは意識したと思います」と、ぼそっとつぶやいていた。 誤った英語が広がる中で対策を講じているのは石川県能美市のいしかわ動物園。ライチョウ舎近くに「ライチョウはサンダーバードではありません」と書いた看板を数年前から置いている。飼育係の職員によると「看板を見て『え、そうなの』と驚く人は多いですよ」と効果を感じている。 専門家は現状をどう見るか。富山大の荻原洋教授(応用言語学)は「この時代、必ずしも英語の母語話者に合わせる必要はなくなっている」と指摘する。英語が共通語として世界中に広まった際、文法的に変化し、単語が間違っても英語として根付いた地域は多いという。「直訳のカタカナ英語でも、自信を持って使えばいい。それよりなぜそう呼ばれるか、経緯を説明できるようになることの方が自分たちの言葉として大事」と話す。 今、あなたにオススメ Recommended by
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