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【政治】

山口代表 6選承認 公明党大会

 公明党は三十日、東京都内のホテルで党大会を開き、山口那津男代表(66)の六選を承認した。井上義久幹事長(71)が副代表に就き、後任に斉藤鉄夫幹事長代行(66)を昇格させる新執行部の人事も決まった。山口氏は大会で「安倍内閣を支え、国民の負託に力強く応えたい」と訴えた。安倍晋三首相が唱える憲法九条への自衛隊明記案には「緊急性がない」と慎重姿勢を示した。

 二〇〇九年の衆院選敗北後に代表に就いた山口氏の六期目がスタートする。任期は二年。記者会見で、山口氏は執行部人事の狙いを「世代交代を着実に図る意味が含まれている」と説明した。来賓として党大会に出席した首相は、改憲を念頭に「公明党と誠実に真摯(しんし)に議論していきたい」と理解を求めた。

 執行部人事では、北側一雄副代表兼中央幹事会会長(65)、古屋範子副代表(62)、石田祝稔政調会長(67)を再任した。党大会後の中央幹事会で、国対委員長に高木陽介氏(58)、選対委員長に佐藤茂樹氏(59)が指名された。

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◆公明、改憲巡り正念場

 三十日の公明党大会で六選が承認された山口那津男代表にとって喫緊の難題は、改憲問題への対応だ。安倍晋三首相は来年中の国民投票も視野に、今秋の臨時国会への自民党案提出を目指している。公明党は改憲論議を急ぐことに慎重だが、安倍政権を支える与党の立場だけに厳しい判断を迫られる可能性もある。 (山口哲人、金杉貴雄)

■明快

 「公明党としては、憲法九条の改正は緊急になされるべきであるとは、必ずしも言えないと考えている」

 党大会で山口氏は、首相が改憲に強い意欲をみせる現状を懸念する地方組織の質問に、はっきり答えた。幹事長に就任した斉藤鉄夫氏も、記者会見で「今すぐスケジュールうんぬん、国会発議うんぬんという段階ではない」と強調した。

 山口氏は慎重に言葉を選ぶことが多いが、改憲では明快な物言いが目立つ。

 首相は九月二十日の記者会見で、自衛隊の存在を明記するなど四項目の自民党の改憲案に関し、臨時国会への提出に向けて「友党の公明党と調整したい」と表明。しかし山口氏は翌二十一日のBS番組で「公明党とだけ調整を先行して、それから国会に出すことは考えていない」と事前協議に応じない方針を明言した。

 この日の党大会でも「憲法改正に前向きな政党だけでなく、幅広い合意をつくり出す努力がまず必要だ」「世論調査で、『優先すべき政治課題』で憲法改正は決して高い順位でないことも冷静に見極める必要がある」などと、改憲を急ぐ首相への苦言を連発した。

■封印

 公明党は、憲法に新しい権利を加えることを検討する「加憲」の立場。一方で「平和の党」を自任し、国民の理解が十分でないまま進められないとも訴える。支持母体の創価学会も、改憲への拒絶反応が強い。最重要視する来年の統一地方選と参院選に悪影響を与えかねない改憲論議は封印したいのが公明党の本音だ。

 山口氏が態度を硬化させているのは、警戒感の裏返しでもある。公明党には自民党との政策協議で、党方針に本来そぐわない合意を強いられてきた歴史があるからだ。

 他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を巡っては、公明党内にも違憲論があり、山口氏は当初「断固反対」「憲法の精神にもとる」と批判していた。だが、与党協議で押し込まれ、最終的に容認に転じた。自民党に連立解消をちらつかされた結果だった。

■けん制

 改憲発議は衆参両院の三分の二以上の賛成が必要で、予算や法律を通すときのような「与党」の枠組みは直接関係ない。それでも首相が公明党との事前協議に意欲を示したのは、「三分の二」を確保するには同党の協力が不可欠なためだ。集団的自衛権行使容認などの「成功体験」を念頭に、まず同党を説得したい考えとみられる。

 ある自民党幹部は「山口氏の発言は、連立与党としてどうなのか」とけん制。十月下旬に召集される見通しの臨時国会に向け、自公の神経戦が激しさを増しそうだ。

 

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