その背に乗っていた双子の闇妖精、アウラとマーレは、帝国の皇帝に対し「謝りに来ないと潰すぞ!」と脅しをかける────
◇帝国の受難(闇妖精の双子・序)────
『────────アインズ・ウール・ゴウン様は不機嫌です! 帝国の皇帝がすぐ謝罪に来ないのであれば、この国を滅ぼします! まず手始めに、ここにいる人間は皆殺しです! マーレ、やっちゃって!』[アウ]
『う、うん。えぇーい!』[マレ]
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!」
『はーい、皆殺しにしました! 早く皇帝が出てこないと、次は街を半分くらい潰します! では、カウントダウン開始ー! 10! 9! 8! 7!……………………』[アウ]
◇帝国の受難(闇妖精の双子・会談)────
「────────さぁ、使者殿。遠いところから来られたのだ。まずは喉を潤してはいかがかな?」[ジル]
「ゴクリッ────うん、まっず」[アウ]
「お、お姉ちゃん、失礼だよ」[マレ]
「なによ、マーレは美味しいと思うの? これ」[アウ]
「そ、それは、あんまり美味しくないと思うけど…………」[マレ]
「でしょ? というわけだから、もういらなーい」[アウ]
「これは申し訳ない。なにか好みのものがあるなら準備させてもらうよ」[ジル]
「あんたたちに用意するのは無理だと思うから別にいいよ。それで? 謝りに来るの? 来ないの? 来ないつもりなら、もうさっさとこの国滅ぼして帰りたいんだけど」[アウ]
「もちろん、ちゃんと謝罪に行くとも。ナザリックなる場所に誰かを送った記憶はないが、配下の者が勝手な真似をしでかした可能性はある。下のやったことは上が責任を取らなければならないからね」[ジル]
「あっそ。じゃ、今から一緒に行こうか」[アウ]
「それは少し待って欲しい。私もこの帝国を統べる身だ。すぐに国を空ける訳にもいかないんだよ。そうだね、準備も含めて十日────」[ジル]
「あぁん? 十日ぁ? あんた、アインズ様をそんなにお待たせする気?」[アウ]
「…………(ピクッ)」[マレ]
「十日もあれば、贈り物としてそれなりのものを用意できるだろう。つまらないものを贈っては失礼になるからね。それに、誰が君たちのもとに人を送ったのか、その責任の所在も調べる必要があるんだよ」[ジル]
「ふーん…………ま、いいや。元々アインズ様からはすぐ来るように伝えてこいって言われただけで、期限までは指定されてないからね。でも────あまり遅くなるようだったら、またあたしとマーレが戻ってきてこの国を潰すから」[アウ]
「…………分かった。準備も含めて、五日後には必ずそちらに伺わせてもらおう。それでいいかな?」[ジル]
「いいよー、五日ね。アインズ様にはそうお伝えしておく。…………あ、そうだ。もし人間をいっぱい殺しちゃったときは、アインズ様からお土産を渡しとくよう言われてるんだった」[アウ]
「お土産?」[ジル]
「そう、お土産。じゃあマーレ、やっちゃって」[アウ]
「う、うん。〈
「…………! な、なんだあれは!? 中庭にいきなり赤い樹が…………!」[バジ]
「落ち着けバジウッド。…………使者殿、あのお土産がなんなのか、ご説明いただけるかな?」[ジル]
「マーレ」[アウ]
「あ、あれは第七位階のドルイド系召喚魔法〈
「…………ただ、なにかな?」[ジル]
「近づくと、生きている人も枝に絡め取られて血を吸い尽くされちゃうので、その、ち、近づかない方がいいと思います」[マレ]
「どう? やっさしいでしょう、アインズ様は。お城でアンデッドが発生したら困るだろうからって、わざわざマーレに指示を与えてくださったんだから。感謝しなさいよ?」[アウ]
「…………ああ、ありがとう。お心遣い感謝すると、アインズ・ウール・ゴウン殿にもお伝えしてくれるかな」[ジル]
「分かった。じゃ、用も済んだしあたしたちは帰るねー。マーレ、行くよ」[アウ]
「う、うん。あの、し、失礼します」[マレ]
◆帝国の受難(闇妖精の双子・会談後)────
「くそっ! どうなってやがる! 何なんだよあの
「爺、あの
「正直に申し上げて、正確な位階は儂にも分かりかねます。ただ、第六位階以上であることは間違いないでしょうな」[フール]
「事実、か。…………ふぅ、私たちはとんでもないドラゴンの尾を踏んでしまったようだな」[ジル]
「陛下、短い間でしたがお世話になりました」[レイ]
「まあ、ちょっと待てレイナース。この先どうなるか分からんが、ナザリックへ同行してくれるなら、お前の呪いに関して聞く機会があるかもしれんぞ?」[ジル]
「それなら自分で聞きに行きます」[レイ]
「確かに、帝国騎士という身分は敵対視される可能性があるからな。だがその身分を捨てた、なんの後ろ盾も、なんの交換条件も持たないお前と、あの強大な力を持った姉妹を送りつけてくる奴らが素直に交渉してくれると思うのか? いきなり訪ねていったところで、ワーカーたちと同じ運命を辿るだけだと思うがな。それに比べ、私は一応招待されている身だ。奴らと接触を持つのにどちらが確実か、それはお前にも分かるだろう?」[ジル]
「…………もう少しだけお世話になります」[レイ]
「お前のそういう所、嫌いじゃないぞ。レイナース」[ジル]
「はぁ…………もうどうにでもなれって感じですな。しっかし陛下、招待されたっていうよりは脅迫されて呼びつけられたの方が正しい表現だと思いますがね」[バジ]
「そうはっきり言うなバジウッド。少なくとも今はまだ皇帝なのだ。何をするにしてもこちらが
「五日後にはどうなってるか分かりませんがね」[バジ]
「いつになく悲観的だな」[ジル]
「そりゃ悲観的にもなりますよ。陛下だって見たでしょう? あの
「中庭に生えた赤い樹────
「ええ、血気に逸った騎士の一人が切り倒そうと近づいた瞬間、枝に絡め取られてミイラ化しましたからね。第二位階の炎系魔法も無効化されたんでしたっけ?」[バジ]
「いや、第三位階じゃ」[フール]
「どう考えたって無理でしょ、陛下。あの庭に生えている樹の一本にすら、帝国の精鋭が手も足も出ないんですぜ? そのナザリックとかいう化物の巣窟は、森にあるんですよね? どうします? 行ってみたら森の樹が全部あれだったりしたら」[バジ]
「その場合は全員仲良く樹の養分になるしかないな。だが、もしそうなのだとしても行く以外の選択肢はない。私たちに選べるのは、化物の親玉であるアインズ・ウール・ゴウンに渡す贈り物の種類くらいだ」[ジル]
「…………相手が絶世の美女ならその作業も
「分からんぞ? あの姉妹を見ただろう。もしかしたらアインズ・ウール・ゴウンも女
「ははっ、ならせいぜいそいつを期待して、
「…………ちっ」[レイ]
「そう不機嫌になるな、レイナース。お前だって十分に美しいぞ?」[ジル]
「顔の半分は、ね」[レイ]
「そうだな。それを踏まえたうえで忠告しておく。ナザリックに着いてからどんな美女が出てきたとしても…………そう、例えあの双子を超えるような美女が現れたとしても、今みたいな態度は絶対に取るなよ? 相手は間違いなくフールーダをも凌駕する
「…………了解です」[レイ]
「ふぅ……………………爺、私はいったいどこで間違えてしまったのかな」[ジル]
「…………(すまんの、ジル。儂、実は裏切っとるんじゃ)」[フール]
◆帰ってきた双子────
「たっだいま戻りましたー!」[アウ]
「あ、あの、戻りました」[マレ]
「うむ、二人共ご苦労だった」
「ア、アインズ様!? わざわざ王座から下りて、あたしたちを待っててくれたんですか!?」[アウ]
「ああ。大切な任務を果たしてきてくれたお前たちを、私が出迎えずに誰が出迎えるというのだ?」
「ア、アインズ様ぁ…………!」[マレ]
「おっと」
「あぁー! ずるいマーレ! 自分だけアインズ様に抱きついてっ! あたしもっ!」[アウ]
「ははは、二人共そう慌てるな。私に抱きつきたいのであれば、いつでも応えよう」
「うふふぅ♡(すりすり)…………あれ? アインズ様、香水をつけてらっしゃいますか?」[アウ]
「ああ、マーレからプレゼントされてな」[マレ]
「なっ、マーレあんた、いつの間に…………」「アウ」
「え、えっと。この前アインズ様と、その、二人でお風呂に入ったときに…………////」[マレ]
「なんでも六階層に生えている草花から抽出したものだそうだ。爽やかな香りがするだろう? ありがとう、マーレ。とても気に入っている」
「い、いえ、そんな! アインズ様に喜んでいただけて、ぼ、ぼくこそ、その、う、嬉しいです! ありがとうございます!」[マレ]
「はははは、プレゼントをくれたマーレがお礼をいうのはおかしいだろう?」
「あ…………そ、そうですよね////」[マレ]
「……………………(お、弟の女子力が高すぎる…………)」[アウ]
◆皇帝が来るよ、どうしよう会議(in宝物庫)────
「パンドラズアクター、折り入って相談がある」
「おや、どうなさいました?
「うむ…………じつは、な、その、人間の皇帝がこのナザリックに来ることは、お前も承知しているだろう?」
「
「うむ。それで、だな。その皇帝との会談に臨むにあたって、ふさわしい態度とはどのようなものか、と思案しているのだ」
「? いつも通りでよろしいのでは?」[パン]
「あー…………あれだ。一応、相手は一国を支配する指導者だからな。お前たちに接するのと同じ態度という訳にもいかんだろう。呼び出した内容が内容だから友好的にするわけにもいかないし…………」
「なるほど! 至高なる存在ゆえの
「ん? う、うむ、その通りだ」
「アインズ様と対等な存在は全次元、全宇宙、全世界でも四十人だけ! そして、その他の全てはアインズ様に仕える下僕か、踏み潰される虫けらのみ! であれば、虫けらの王に対してどのような態度を取るべきか、お悩みになるのも致し方ないことでございましょう!」[パン]
「あ、ああ、流石はパンドラズアクター。私の心を完全に理解しているのだな」
「もちろんでございます! このパンドラズアクター! このナザリックでただひとり、アインズ様によって創造された存在でありますれば!」[パン]
「…………(相変わらずテンション高いな)」
「つまり、アインズ様は客人以下、虫けら以上の中途半端な存在が相手なので、どのような態度を取るべきか迷っておられる。そういうことでございますね?」[パン]
「う、うむ。その通りだ」
「でしたら、必要最低限のことのみ口にされるのがよろしいかと。その際にはなるべく溜めを作るとなお良いかと思われます」[パン]
「…………溜め?」
「
「…………これでいいのか?」
「格の違いがあればあるほど、上位者からの言葉というのはその一言一言が重いものです。そして言葉と言葉の間に溜めを作れば、その重さはさらに増すでしょう。
故に、相手が虫けらの王程度の存在であるならば、アインズ様が発せられるお言葉はごく短いもので良いかと思われます。
細かな応対は
「…………そ、そうか(話さなくていいのは助かるけど、それじゃやっぱり舐められるんじゃないか? …………常時〈絶望のオーラ〉でも発動させておくか)」
「あとは…………そうですね、時には無言で相手をじっと見るのも良いかと思われます」[パン]
「…………ただ見るのか?」
「はい、アインズ様ほどの超越者ともなれば、もはや言葉すら不要! その神にも等しい視線に晒されれば、ただそれだけで心
「そ、そうか」
「
「…………う、うむ。助言感謝するぞ、パンドラズアクター。なにか望むものがあれば褒美としてとらすが、なにかあるか?」
「至高なるアインズ様にお使えすることこそ我が喜び! それ以上の褒美など有りましょうか!」[パン]
「誰も彼もがそう言うが、それは却下だ。何かないのか? 宝物庫の宝を磨くための新しい布だとか、マジックアイテムをじっくり観察するための眼鏡だとか」
「はぁ…………で、あれば…………」[パン]
「ん、なんだ? なにかあるなら言ってみるがいい」
「そ、その…………アインズ様のことを、ち…………父上! とお呼びしてもよろしいでしょうか…………?」[パン]
「…………まぁ、お前の創造主だしな。いいぞ、ただし二人きりの時だけな」
「あ、あぁ…………っ! ありがとうございます! 父上っ!」[パン]
「もうすぐお前の弟か妹…………か、もしくは性別のない下の子供が生まれるから、兄として仲良くしてやるんだぞ?」
「もちろんでございます! 父上!」[パン]
「うむ。では私は戻るから、引き続き宝物庫の守護は任せたぞ。
「ち、父上ぇえええええっ!(涙)」[パン]
◆皇帝が来るよ、どうしよう会議(in私室)────
「────────というわけで、だ。今回の皇帝との会談については、アルベドとデミウルゴスに任せようと思う」
「アインズ様…………! 私のことをそこまで信頼していただけるとは…………っ」[デミ]
「私
「うむ。それで、話の落としどころをどうするかだが…………」
「はい。アインズ様の目指すものは、私もデミウルゴスもしっかりと理解しております」[アル]
「ええ、アインズ様の智謀には遠く及ばぬこの身ですが、アインズ様のご計画からは決して外れぬとお約束いたします」[デミ]
「う、うむ、そうか。任せたぞ、二人とも(俺の計画ってなんだ?)」
「「はっ!」」[アル、デミ]
「うむ…………では、私から話すことはもうないのだが、二人からなにか報告すべきことなどあるか?」
「はっ、では私から一つ。これは報告というよりも確認事項になるのですが────アインズ様のお世継ぎがお生まれになる時が近づいております」[デミ]
「うむ。そうだな」
「お育てするための育児施設や、ご教育するための教育施設などはすでに完成しているのですが、その人事は未だ内定の段階にあります」[デミ]
「ああ、そうだったな。確か、育児施設の責任者候補がニグレドで、その補佐がペストーニャ。教育施設の責任者候補がアルベドで、補佐がパンドラズアクターだったか」
「はい、その通りでございます」[デミ]
「アルベド、すでにナザリック内の仕事をいくつも抱えているが、問題ないのか?」
「はい。基本的な実務はパンドラズアクターに取り仕切らせ、方針と決定のみ私が関わる形になると思いますので、問題はありません」[アル]
「そうか、それならそのままの人事で決定して構わない」
「ありがとうございます、アインズ様……………………えー、あとですね。実は是非にもお世継ぎのお世話役として働きたいと申し出ているものが一名いるのですが…………」[デミ]
「ん? 世話役? 育児施設で子供の世話を焼くのは、ニグレドの役目ではないのか?」
「いえ、それとは別に、なんと言いますか…………護衛と話し相手と戦闘教官を混ぜ合わせたようなものとでも言いますか…………その、一言で言えば『爺』になりたいと申し出ておりまして…………」[デミ]
「…………ああ、コキュートスか」
「…………はい」[デミ]
「んー……………………うむ、いいだろう。正直具体的に何をするつもりなのかはさっぱり分からないが、随分とその『爺』とか言うのになりたがっていたしな」
「よ、よろしいのですか?」[デミ]
「もちろん付きっきりという訳にはいかないだろうがな。だが、私の信頼する守護者が、私の子供の相手をしてくれるのはむしろ好ましいことだと思っている」
「おお…………アインズ様。その言葉を聞けば、コキュートスも涙を流して喜ぶことでしょう」[デミ]
「もちろんお前もだぞ、デミウルゴス。お前の素晴らしい知恵や知識、そしてナザリックへの強い忠誠を、ぜひ我が子に伝えてやって欲しい。私は心からそう思っている」
「ア、アインズ様…………!」[デミ]
「うむ。ではコキュートスには爺をやってもらうとして…………アルベドたちも『責任者』では味気ないな。よし、育児施設は名称をナザリック保育園とし、責任者であるニグレドは『
「いえ。素晴らしいですわ、アインズ様。園
「ええ、アインズ様の深いご慈悲には、敬服などという言葉では到底足りません。敬意の心に上限などないのだと、今日改めて思い知りました」[デミ]
「も、ち、ろ、ん、愛情にも上限はありませんわ。アインズ様♡」[アル]
「あ、ああ、うむ。お前たちが喜んでくれるなら、何よりだ(特に深い意味はなかったんだけど…………まあ、いいか)」
「アインズ様♡ 私からもひとつよろしいですか?」[アル]
「ん? なんだアルベド」
「私たちの子供の名前は、もうお決まりになりましたか?」[アル]
「ああ、子供の名前か。うむ、候補はいくつかあるのだが、まだ絞りきれてはいないのだ。生まれてくるのが男の子か女の子か……………………そういえば、生まれてくる子に性別はあるよな?」
「はい、女の子でございます♡」[アル]
「そうか、女の子か…………って、もう性別が分かってるのか!?」
「はい、
「そ、そうか。では、候補は半分に絞れるな」
「ちなみに、どのような名前をお考えで?」[デミ]
「うむ。性別が決まってもまだいくつか候補はあるのだが…………女の子だった場合は、セレマ、アルキュミア、レスアルカーナ…………」
「……………………」[アル]
「あとはもっと単純に私たちの名前を取って、モモルとか…………」
「モモル! それがいいと思いますわ、アインズ様!」[アル]
「ん? そうか? だがセレマとかのほうが響きが良くないか? モモルはアルベドの『ル』しか入っていないし…………」
「いいえ! そんな錬金術
「そ、そうか? うむ、そこまでアルベドが気に入ったのなら、モモルを第一候補としておこうか」
「はい! アインズ様…………いえ、モモンガ様♡」[アル]
「ははは、その名で呼ばれるのも久しぶりだな」
「ずっと…………ずっとこの名でお呼びしたいくらいですわ…………♡」[アル]
「なんだ、アルベドはモモンガという名前の方が好きなのか? なら二人の時はそう呼んでも構わないぞ?」
「い、いいのですか!? アイ…………モモンガ様!」[アル]
「あ、ああ。それくらい別に…………」
「モ、モモンガ様ぁ♡!!!」[アル]
「おぉわっ!? ア、アルベド!? あ、こら、ちょっと、デ、デミウルゴスがいるから!」
「モモンガ様が…………モモンガ様がいけないのです! 我慢してたのに、ずっと我慢してたのに、我慢できなくなることを仰るから!」[アル]
「…………私はこれで失礼いたしますね」[デミ]
「あっ、デミ…………」
「ふーっ、ふーっ、さあ、モモンガ様、いつものように…………いつものように超位幻術を…………♡」[アル]
「あ…………あぁ…………………………………………アッーーーーーーーーーーー!」
◇帝国の受難(着いたよナザリック)────
「────────お待ちしておりました。ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下。私は皆様を歓迎するよう主人より仰せつかりました、ユリ・アルファと申します。そして後ろに控えます者は、私の補佐役であるルプスレギナ・ベータ。短い間ではありますが、よろしくお願いいたします」[ユリ]
「これはご丁寧にありがたい。貴女たちのような美しい女性をつけてくださったアインズ・ウール・ゴウン殿に心より感謝を。そして、私のことはそのように堅苦しい呼び方ではなく、どうぞジルと呼んでください。私と親しいものは、皆そのように呼んでくれるからね」[ジル]
「申し訳ありません、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下。私はアインズ・ウール・ゴウン様より皇帝陛下には礼をもって接するよう厳命されておりますので、先ほどのご厚意にお応えすることは叶いません。どうぞお許し下さい」[ユリ]
「そうかい? それは非常に残念だが、それがゴウン殿の命とあれば仕方ないね。それで? ゴウン殿にはいつお会いできるのかな?」[ジル]
「現在皆様を迎える準備をしておりますので、それが整うまではこちらでおもてなしさせていただきます」[ユリ]
「それは、そちらのログハウスで待たせてもらえる、ということかな?」[ジル]
「いえ、せっかくの
「ふむ…………生憎の空模様だが…………」[ジル]
「そのまま空をご覧下さい」[ユリ]
「どういう…………? うおぉっ! 」[ジル]
「…………なんだこりゃあ。どんどん雲が消えて、空が青く…………」[バジ]
「素晴らしい!! 第六位階の天候操作魔法…………いや、これはより上の位階の魔法ですな!?」[フール]
「これで過ごしやすくなったと思われますので、次はお飲み物をご用意させていただきます。…………来なさい」[ユリ]
「ふひぃいいいいいいっ!!」[フール]
「フ、フールーダ殿?」[バジ]
「あ、あ、あ、あれは
「おい、誰か! 精神安定系の魔法使えるやつはいるか!? フールーダ殿がいきなり狂ったぞ!」[バジ]
「いや、バジウッド。爺はたまにああなるんだ。魔法で新たな発見をした時とかな」[ジル]
「あ、そうなんですか?」[バジ]
「こ、こ、これ! 少し触ってもいいですかの!? ちょこっと、ほんのちょこっとだけじゃから!」[フール]
「いいですよ」[ユリ]
「うひゃはーーーーーっ!! おっほぅっ! 意外とツルツルしとる! 意外とツルツルしとる!
「…………うわぁ、キッショ」[ルプ]
「ルプスレギナ。思ってもそういうことは口に出さないの」[ユリ]
「うわっ、キッショ」[レイ]
「…………レイナース。あれでも一応我が国の筆頭
「…………そんなことより陛下。
「私にそんなこと聞かれても分かるわけないだろう。そうなのか?」[ジル]
「私もそう思います。やっぱり逃げていいですか?」[レイ]
「その場合、お前は帝国とは一切無関係の存在だと言うからな?」[ジル]
「…………ちっ」[レイ]
「けど陛下、俺もレイナースに賛成ですよ。今からでも逃げませんか?」[バジ]
「……………………爺! おい爺! 帰ってこい!」[ジル]
「イーッヒヒ! …………ん? 呼んだかの? ジルや」[フール]
「正気に戻ったか? 戻ったなら答えろ。アレはなんだ?」[ジル]
「ん、コホン。すみませぬ、少々取り乱したようですじゃ」[フール]
「…………(少々か?)」[バジ]
「いいから答えろ、爺。さっき
「さようです。私が何度も支配を試みて、未だ成し遂げられぬ強力無比なアンデッド。それが五体…………五体も…………五体もいるのですじゃぁあああああっ! もういっぺん! もういっぺん、触らせてくだされぇ!」[フール]
「…………見ただろう、バジウッド。爺はまるでアテにできん。ということは、逃げるにしても転移ではなく走って逃げることになるわけだが────逃げ切れると思うか?」[ジル]
「…………無理でしょうなぁ。馬と駆け比べをした方が、まだ勝算あるように思えますわ」[バジ]
「ならこのまま進むしかあるまい。幸い、向こうはもてなしてくれると言っているわけだしな。こうなったら全てを委ねる以外に道はないだろう」[ジル]
「…………そろそろ準備を再開させて頂いてもよろしいでしょうか?」[ユリ]
「あ、ああ、すまない。ほら爺! 帰ってこい! ハウス! ハウス!」[ジル]
「アヒィーハァーッ! …………はっ! し、失礼しました、陛下。少々興奮してしまったようです」[フール]
「…………(だから、少々じゃねぇだろ)」[バジ]
「こほん…………お見苦しいところをお見せした。どうもゴウン殿の強大な力を垣間見て、興奮を抑えることができなかったようだ。許して欲しい」[ジル]
「いえ。末端とは言えアインズ様のお力の一部に触れたのです。そちらのご老人の反応も無理もないことだと思います」[ユリ]
「…………(末端? 爺をおかしくさせるような化物ですら、ここでは末端扱いだというのか!? 確かに机を運ばせたりと下僕のような扱いをしているが…………)」[ジル]
「では、お飲み物をご用意いたしましたので、皆様お席へどうぞ」[ユリ]
「…………ああ、ありがとう。ご馳走になるよ」[ジル]
◇帝国の受難(アインズ様に謁見)────
「アインズ様。バハルス帝国の皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。お目通りをしたいとこのとです」[アル]
「…………うむ」
「…………!(アンデッド! あれがアインズ・ウール・ゴウン! そして、隣に立つ美女は王妃か? 周りを固める配下も化物ぞろい…………いったいどうなってるんだ、この墳墓は!)」[ジル]
「……………………(じっ)」
「…………これは、挨拶もせずに失礼した、アインズ・ウール・ゴウン殿。この墳墓…………と言っていいのかな? ここのあまりの素晴らしさに言葉を忘れてしまってね。私はご紹介頂いた通り、バハルス帝国の皇帝…………」[ジル]
「誰が口を開くことを許した。それと、下等な人間風情が立ったままアインズ様に謁見するつもりかね。〈ひれ伏したまえ〉」[デミ]
「「…………ぐっ!?」」[ジル以外]
「…………っ!?(なんだ!? あの蛙の化物は、声で人を操るのか!?)」[ジル]
「…………ほぅ、マジックアイテムですか。アインズ様の前にそのような
「…………よい、デミウルゴス」
「はっ、失礼いたしました、アインズ様。〈自由にしたまえ〉」[デミ]
「…………失礼した、バハルス帝国の皇帝よ。部下の非礼は謝罪しよう」
「いや、謝罪など…………」[ジル]
「……………………(じっ)」
「…………っ(くっ、予想以上の化物だ。精神支配や精神異常を無効化するマジックアイテムを装備しているというのに、この圧力…………今にも膝が崩れ落ちそうだ…………!)」[ジル]
「────アインズ様は、長きに渡る安息を下賎な盗賊どもに破られたせいで非常に不機嫌なのです。ですから、それを指示したと思われる首魁の弁明を、是非とも聞かせてもらいたいと仰っているのよ」[アル]
「…………(黙って座ってるだけで、アルベドやデミウルゴスが勝手に話を進めてくれる。これは便利だ)」
「待ってもらいたい、アインズ・ウール・ゴウン殿。私はこの地に人員を送る指示など出していないのだ。それを指示したと思われる貴族については、こちらで既に特定し、処断してある。部下が勝手を行ったことについては深く謝罪し、その証としてこれをお渡ししたい。バジウッド、あれを」[ジル]
「はっ!」[バジ]
「デミウルゴス。それをこちらに」[アル]
「はっ」[デミ]
「……………………これは、首か(どうしろってんだ、こんなもの)」
「それこそがあなたを不愉快にさせた首魁。帝国で伯爵位を持つ貴族、フェメールの首だ。どうかこれを謝罪の証として受け取って欲しい」[ジル]
「…………なるほど。確かに受け取った、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿」
「私のことはどうかジルクニフと呼んでくれ。長い名前だからな」[ジル]
「…………そうか、私のこともアインズでもゴウンでも、好きに呼んでもらって構わない。────では、ジルクニフ殿。せっかく貰った首だ、有効活用させてもらおうか。〈中位不死者創造〉」
「なっ…………!?」[ジル]
「おぉ! す、素晴らしいぃ!
「…………! (マジかよ! フェメールの首があの化物に…………!)」[バジ]
「列に並びなさい、
「? 忙しくなる、というのはいったい…………」[ジル]
「……………………(俺も聞きたい)」
「知れたこと。この墳墓にすら外の喧騒が持ち込まれるというのなら、外を静かにすればいいだけの話。アインズ様は、再び静寂が訪れるまで順次地上の国々を滅ぼされるおつもりよ」[アル]
「なっ…………!」[ジル]
「……………………(マジで!? いや、ブラフだよな? …………ブラフだよね?)」
「ま…………待って欲しい、ゴウン殿! 国を…………そう、この地にゴウン殿の国を建国されたらどうだろうか? そして、我が帝国と同盟を結ぼうじゃないか!」[ジル]
「同盟? 従属の間違いじゃありんせんかあ痛ぁっ!?」[シャル]
「ちょっとシャルティア! あんたアホなんだから黙ってなさいよ!」[アウ]
「だ、誰がアホでありんすか!」[シャル]
「過去の自分の行いを思い返してみなさいよ!」[アウ]
「…………くっ、否定しきれないでありんす…………っ!」[シャル]
「…………騒々しい、静かにせよ!(俺だってちょっとパニクってるんだから!)」
「「はっ! 申し訳ありません! アインズ様!」」[アウ、シャル]
「…………失礼した、ジルクニフ殿。で、同盟だったか? 構わない、結ぼうじゃないか(アルベドがこれ以上物騒なこと言う前に)」
「そ、そうか。それは良かった…………では、同盟国である私たちに望むことがあるなら、早速聞かせてくれないかな?」[ジル]
「…………すぐには思いつかないな。デミウルゴス(なんかあるか?)」
「はっ。帝国の代表者とは、私が話を詰めさせていただきます」[デミ]
「…………う、うむ(そういう意味で呼んだわけじゃないけど…………まあいいか)」
「では、こちらからは秘書官を…………ロウネ・ヴァミリオン!」[ジル]
「────はい! 帝国のために、全身全霊をもって行わせていただきます!」[ロウ]
「任せた。ではゴウン殿、私はこのあたりで帰るとしよう。貴殿との同盟に際して、準備しなければならないことが数多くあるからな」[ジル]
「…………そうか。では、デミウルゴスに外まで送らせよう」
「い、いや、それには及ばない! せっかくだから、帰りもあの美しいメイドの方々にお願いしても良いだろうか?」[ジル]
「…………ふむ、構わないとも。では、扉を開けた先に先ほどのメイドが待っている。彼女たちに送ってもらうといい」
「我が儘を聞いてもらって感謝するよ。ゴウン殿」[ジル]
「…………なに、同盟者のささやかな望みを叶えるくらい、当たり前のことだ。そうだろう?」
「そうだね…………同盟者とは、そうあるべきだね…………」[ジル]
◇帝国の受難(帰路)────
「…………陛下」[バジ]
「…………どうした、バジウッド」[ジル]
「マジヤバイっすね、あそこ。調度品ひとつとってみても、我が帝国と同等の物が何一つ見当たりませんでしたよ」[バジ]
「ああ。どれもこれも、
「圧倒的な戦力差を見せつけられ、財力でも遥かに上回られている…………これってもう、詰みじゃないですか?」[バジ]
「…………これだけ力に差があれば、下手な小細工は通用しないだろうな。まともにぶつかっても、搦手でも、どちらにせよ勝ち目はないだろう」[ジル]
「今は同盟国ですが、いずれは属国決定ですかね」[バジ]
「属国は最も
「…………そいつぁぞっとしませんね」[バジ]
「ああ。見たところ、あそこに人間は一人もいなかった。いや、あそこは人間がいられるような場所ではなかった。奴らにとって、人間は対等の存在たり得ないということだろう」[ジル]
「家畜…………ってぇとこですかね」[バジ]
「家畜の餌、かもな」[ジル]
「ははっ、それが一番ありえそうなのが恐ろしい。…………しかし、あのアインズ・ウール・ゴウンというのは凄い迫力でしたが、あまり口数は多くありませんでしたな。むしろよく喋っていたのは隣の…………あれは王妃なんですかね? ともかく、隣に立ってた美女がほとんど喋ってました。実はあのアンデッドはお飾りで、実権はあの美女が握ってる、みたいなことはありませんかね?」[バジ]
「ないな。あのゴウンの支配者ぶりをお前も見ただろう?」[ジル]
「ああ、『騒々しい、静かにせよ!』ですか? 確かにあのカリスマはうちの皇帝以上だったと思いますが…………」[バジ]
「ふん…………あの一言で、あの場にいた化物どもは全員姿勢を正し、かつゴウンに対し尊敬の目を向けていた。お飾りの王に出来ることではない。となれば、あのゴウンは恐ろしい智謀の持ち主だということになる」[ジル]
「なんでそうなるんです?」[バジ]
「考えても見ろ。絶対的な支配者であるゴウンが、ほとんど口を開かなかった。それはつまり、全てヤツの想定通りに事が進んでいたということだ」[ジル]
「なっ…………!」[バジ]
「あいつは、私との会話がどう進みどう決着がつくか、全て読み切っていたのだ。何一つ想定外の事態が起こらなかったから、口を出す必要がなかった。あいつが無口だったのは、それだけの理由だろう」[ジル]
「じゃ、じゃあなんですか? あの化物は、フールーダ殿を遥かに超える魔法詠唱者であり、同時に陛下を手のひらで転がすような策略家だってことですか!?」[バジ]
「そうなる。認めたくはないが、認めざるを得ない。敵の力を認めないのは、その時点で自分の負けを認めたようなものだからな。だが、まだだ…………まだ私は諦めんぞ」[ジル]
「…………なにか手があるんですかい?」[バジ]
「同盟だ」[ジル]
「同盟ってぇと…………」[バジ]
「帝国、王国、法国、聖王国による、人類国家の大連合だよ」[ジル]
「…………そんなことが可能ですかね?」[バジ]
「違う。それしか方法がないのだ。それを成し遂げない限り、人類に未来なはい。まずはその第一手として、王国との戦争だな」[ジル]
「今回は仕掛けないってことですか?」[バジ]
「逆だ。今までにない打撃を王国に与える。あの化物を巻き込んでな」[ジル]
「そんなことすりゃあ、帝国はあの化物の支配下だと思われますぜ?」[バジ]
「完全にはそうならないよう、裏で手を打つ。まずはあの化物がどれだけ恐ろしい存在なのか、世界に知らしめなければならないのだ。そのためなら、帝国はあえて泥を被ろう」[ジル]
「血まみれなうえに、泥まみれですかい? 鮮血帝」[バジ]
「ふん、
「最後のは勘弁して欲しいですが、まあ泥くらいなら俺も一緒に被りますよ」[バジ]
「ああ、嫌だと言ってもぶっかけてやるさ。…………さて、まずは帰ったら王国に対する宣戦布告書を────────あっ」[ジル]
「どうしました?」[バジ]
「レイナースはどうした?」[ジル]
「え? 馬車の近くにいませんかね? ────────いませんね」[バジ]
「あいつ、まさかあそこに残ったのではあるまいな」[ジル]
「…………ありえますね。呪いを解くことに人生捧げてるやつですから」[バジ]
「はぁ…………奴らが何か言ってきたら、好きにしてくれて構わないと言っておけ」[ジル]
「いいんですかい? 四騎士が二騎士になっちまいますが」[バジ]
「仕方あるまい。あいつも覚悟の上で残ったのだろう。あと、二騎士は語呂が悪い。せめて双騎士と名乗れ」[ジル]
「おお、流石は陛下。では明日から双騎士筆頭のバジウッドと名乗りましょう」[バジ]
「二人しかいないのに筆頭も何もないだろうが…………あぁ~、もう嫌だ。帰って寝たい」[ジル]
「俺は寝ますよ」[バジ]
「クソっ! 貴様もゴウンの生贄に捧げてやろうか!?」[ジル]
「ははは、そうなったら残るはニンブル一人ですな。絶対ストレスでハゲますよ、あいつ」[バジ]
「私も帝国初のハゲた皇帝になるだろうよ。……………………それまで帝国が残っていればの話だがな」[ジル]
◇謁見後(ナザリックサイド)────
「────────と、いうようなことをあの皇帝は考えていることだろう」[デミ]
「全くもって愚かでありんすねぇ。人間がどれだけ集まったところで、守護者の一人にも太刀打ち出来んせんでしょうに」[シャル]
「…………あんた、自分が操られたの忘れてない?」[アウ]
「うぐぅっ!」[シャル]
「まあ、今はアインズ様のご指示によって守護者各位が
「内部分裂ぅ? それって、あたしたちがアインズ様を裏切るように仕向けるってこと?」[アウ]
「う、裏切る? ぼ、ぼくが、アインズ様を?」[マレ]
「はっ! 愚かでありんすねぇ」[シャル]
「だからあんたが…………」[アウ]
「シャーーーーッ!」[シャル]
「うわっ、威嚇してきた!」[アウ]
「……………………(とことことことこ)」[マレ]
「? マーレ、どこに行くのです?」[デミ]
「…………あっ…………あの、皇帝に餓食孤蟲王さんの卵を植え付けに行こうかと思って…………」[マレ]
「いや、それはちょっと…………」[デミ]
「…………マーレは時々やることがエゲツないでありんすよね…………」[シャル]
「想像したら鳥肌が立った…………」[アウ]
「愚かな人間の頭の中でだとしても、自分がアインズ様を裏切ることを想像されるのが許せないのよねぇ。分かるわ、その気持ち。私もアレの脳天を叩き潰してやりたかったもの」[アル]
「アノ皇帝ハ忠義トイウ言葉ヲ知ラヌラシイ」[コキュ]
「皆の憤りは分かりますが、あの人間はまだアインズ様の計画に必要な駒です。勝手に殺さないように。わかったね、マーレ」[デミ]
「は、はい。ごめんなさい、アインズ様…………」[マレ]
「う、うむ。よい、気にするな、マーレ」
「話を戻しましょう。皇帝はアインズ様の思惑通りに動き、ナザリックは一つの国として表の世界に進出することになりました。そこで私からひとつ提案なのですが、アインズ様が王となられた際の呼び方を皆で考えてはどうか、ということです」[デミ]
「ふむ。いずれ神となられるアインズ様の呼び方がただの『王』では、その御身に相応しくない。そういうことでございますね?」[セバ]
「その通りだよ、セバス」[デミ]
「素晴らしい提案だわ、デミウルゴス。では、なにか案のあるものはいるかしら?」[アル]
「はいはーい! 最強王がいいと思います! アインズ様は最強だから!」[アウ]
「
「あの、アインズ様はとてもお優しいので、
「アインズ様は世にナザリックの正義を成す御方。…………
「ふむ、皆なかなかに素晴らしい案ですね。私は────────アインズ様の崇高なる英知を湛え、
「私はもう至高神と名乗っていいんじゃないかと思うわ」[アル]
「いやいや、アルベド。そこは王で頼みますよ…………コキュートスはどうです?」[デミ]
「ソウダナ…………アインズ様ハ我ラ異形ノ者達ヲ従エ、今後モ多クノ種族ヲ支配下ニ置カレル御方。魔ヲ導ク王────魔導王ナドハドウダロウカ?」[コキュ]
「おぉ…………素晴らしいじゃないかコキュートス。まさにこれからのアインズ様の計画を体現するかのような呼び名だ…………アインズ様、いかがでしょうか?」[デミ]
「うむ。コキュートスの案を採用しよう(最強とか絶世美貌とかに比べたら一番まともだし)」
「畏まりました。ではその旨、帝国の秘書官を通して伝えておきましょう」[デミ]
「任せた」
「では次の議題ですが…………ユリがナザリックの外で帝国の女騎士を拾ったそうです」[デミ]
「…………なんだそれは、置いて行かれたのか?」
「いえ、どうやら自分の意思で残ったそうです。なんでも呪いを掛けられていて、それを解いてくれるならどんなことでもすると言っているそうですが…………」[デミ]
「強力な呪いなのか?」
「いえ、顔が少し爛れる程度の弱い呪いです。ペストーニャに見せればすぐにでも解呪できるでしょう」[デミ]
「そうか、なら解いてやれ」
「よろしいのですか?」[デミ]
「同盟国の騎士だしな。それに、顔の爛れは女にとって辛いものだろう」
「おお…………なんと慈悲深い…………では、そのように致します」[デミ]
「一応帝国には問合わせておけ。ここに連れてくるくらいだから、身分の高い者である可能性がある」
「畏まりました。では、次に王国との戦でアインズ様が使用される魔法についてですが────────」[デミ]
色々あって久しぶりの投稿となりました。
またちょこちょこ更新していく予定です。
ちなみにですが…………
1、マーレが使っていた〈血を吸う怪樹〉(ジュボッコ)はオリジナルです。原典は日本の妖怪。
水木先生の日本妖怪大全に載ってます。
2、レイナースは帝国に戻らず、ナザリックの下僕になりました。
今後出てくるかは未定です。
…………こんなとこかな?
ではまた次回~