【名護】名護市の東と西の海岸に面する二つの地域を突風が襲った。屋我地島の済井出では住宅の屋根を吹き飛ばし、ブロック塀をなぎ倒した。久志では公共施設に駐車中の車1台が横転したほか、十数台が損傷した。
いずれの現場でも倒木があり、突風のすさまじさを見せつけた。台風24号が沖縄地方に接近する中、住民や目撃者は「今まで経験したことがない竜巻だった」と顔をこわばらせた。
済井出の樋渡(ひわたし)武人さん(65)の家は、屋根などが吹き飛び全壊状態になった。妻のヨシ子さん(74)、6歳と8歳の孫と4人でテレビを見ていたところ突然、屋根が飛んだという。すぐに家の外に逃げ出し、4人にけがはなかった。樋渡さんは「いきなり屋根が飛びパニックになった」と顔をこわばらせた。樋渡さんらは本部町の親族の家に身を寄せると言う。
金城千代子さん(75)は午後5時半ごろ、家の中にいて「ゴオオオ」という音を聞いた。外を見ると、渦を巻いていろいろな物が飛んでいた。「家の中にいたが、もう怖くて怖くて震えた」と語り、初めての体験に首をすくめた。
集落では、住民がなぎ倒されたり大木や崩れたブロック塀の撤去作業に追われた。夜遅くまで、消防や地域住民が行き交い、重機の音が響いた。
久志では、名護市マルチメディア館みらい4号館に駐車していた車1台が横転。数台の車が突風で移動し、窓ガラスが割れた車もあった。突風発生時に区民公民館にいた宮里一史さんによると、直径約30センチの太さがある木2本が倒れたという。「公民館のドアが勢いよく開き、大きな音を立てて閉じた。今まで経験したことのない風だった」と話した。複数の民家で一時的な停電もあったが、すぐに復旧した。
北山高1年の西平優斗さんは午後5時半ごろ、竜巻とみられる現象を撮影した。「車中から撮ったので正確な場所、動いているかどうかも分からなかった。車で迎えに来た祖母と、来た道を引き返そうと話した。竜巻を初めて見たが、そのときは恐怖でしかなかった」と語った。【琉球新報電子版】