「特殊技能だ タダじゃやらない(If you’re good at something never do it for free)」これは大ヒット映画『ダークナイト』でジョーカーが発した名台詞。だが、この世には技術職や専門職相手に「ねえ、無料で◯◯やってくれない?」と頼む人が存在する。
ある男性アーティストも、ネット上で「ねえ、私の絵を描いてくれませんか? タダで!」なんてメッセージを受け取りまくってきたとのこと。もう、そんなのウンザリ! そこで男性は、ある対策を思いついた。その方法が痛快だと、ネット上で賞賛を集めているのでご紹介したい。
英バーミンガム在住のジョン・アートンさんはプロの画家として活躍している。彼の Instagramアカウントには、マイケル・ジャクソンやプリンスといった有名人から『スター・ウォーズ』シリーズのキャラクターまで、本物と見まごうばかりの精密なイラストが多数アップされている。これらのイラストを目にして、アートンさんに絵を依頼してくる人も多いようだ。
なかには「タダで描いて!」と言ってくる人もいる。海外メディア『Bored Panda』によると、アートンさんの元には、週に2、3人の割合で、無料リクエストが寄せられるという。
アートンさんが「白黒のイラスト、A4サイズで150ポンド(約2万2000円)から描きますよ!」と料金を提示しても、「あなたのイラストの大ファンです。無料で描いてもらえますか?」「今回だけはタダでお願いできる? 本当に金欠なんだけど、彼女に何かプレゼントしなきゃいけないんだ」と返ってくるのだ。
そんな人々に対して、アートンさんは策を講じることにした。以下のやり取りを見てみよう。
客:「私の絵を描いてくれる?」
アートンさん:「お金を払っての依頼ですか? それとも無料版イラスト?」
客:「無料版で。この写真の絵を描いてほしいの。1週間以内に完成してもらえるかな」
アートンさん:「完成しましたよ。3、4時間ほどで描けました」「背景が寂しい気がしたので、太陽を描き足しときました」
え、背景までつけるなんて、アートンさん大丈夫? と完成品を見てみると……こ、これは!
……そう。アートンさんは、自身が売りにしている精密なイラストではなく、テキトーに描いた落書きをこの “お客さん” に提供したのだ。
また「一生の宝物にするので、本当に本当にお願い! とにかく写真の通りに描いて」と、人気バンド『ワン・ダイレクション』のメンバーのイラストを無料で依頼してきた人に対しても……
……「髪型が難しくて、手こずってしまいました」なんてメッセージを添えて同様の落書きをプレゼント!
アートンさんがそのようなやり取りを Instagram上で公開したところ、「サイコーだね!」「めっちゃ笑った」「真似させてもらいます」「落書きですら、私の絵よりも上手い」などの拍手喝采が集まって話題となった。
アートンさんは、フォロワー向けのプレゼントやチャリティとして、無料のイラストを描くこともあるというが、通常は無料仕事は請け負わないそうだ。次のように皮肉交じりに、しかし切実にその理由を説明しているのだった。
「絵を売って暮らしているプロのアーティストとして、このようなリクエストが寄せられるのは恐ろしいことです。ここまでくるのに何年も真剣に練習をしてきました。時間やお金もたっぷりと使っています。それらの全てを捧げて、無料で誰かの自画像を描く機会が与えられてとても幸いです」
参照元:instagram @jonarton [1]、[2]、Bored Panda、Story Pick(英語)
執筆:小千谷サチ
▼アートンさんの作品。美しい……
▼こちらはアートンさんが8歳、28歳で描いたイラスト。上達するために、努力をされてきたのだ
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