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死ぬ間際に見る夢に出てくる新曲ポルノグラフィティ『Zombies are standing out』感想

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ポルノグラフィティの夢見ると思うんですけど、その夢の中ではちっちゃいライブハウスにイスがちょこんと一脚だけ置いてあって。客は俺一人で、座ってたら当然みたいな顔してポルノの二人出てきて、一っ言も喋んないでおもむろに曲演奏し始めるんですけど、その曲知らねぇの。

「俺の中にいるポルノグラフィティが作り出した架空の新曲」で、それがもうゲボほどカッコよくてボロボロ涙流して目ぇ覚ますんですけど、起きてみるとその曲がどんな曲なのか、どういうメロディでどういう歌詞なのか、いくら考えてもまったく思い出せなかったんですね。

 


ポルノグラフィティ 『Zombies are standing out(short ver.)』

 

これでした。 全ポルノグラフィティファンが死ぬ間際に見る夢に出てくる新曲、それが『Zombies are standing out』でした。サムネ全盛期の西城秀樹か。

まず、単純に「音がめちゃめちゃ良い」。音楽って左右からしか聴こえないはずなのに、この曲に関してはなんか前後左右上下斜め、360°全方向から聴こえてくる。いやむしろ「耳」ってパーツ介さずに直で脳髄に音入れられてる感じするし、極端に言っちゃえば音の立体感、奥行きがすごくて音掴めるしなんなら食える。全身で音を味わう「食べる音楽」体験できるんですよ。やっすいイヤホンで聴いてるのにですよ。バカ高いヘッドホンなんかで聴いたら着けてるとこから頭溶けてくと思う。

イントロからもう漏らし散らすほどカッコ良くて、モンスターズ・ユニバーシティだったら確実に一発合格のおどろおどろしいデスボイス「ウ゛ァ゛ンディ゛ンア゛ァッ…ク゛ラ゛ァイ゛ンア゛ッ…」からのバッキバキのキレッキレのギター「ドゥデェゲレデェゲレレドゥデェレゲデェレデレェ」からの最近のポルノグラフィティお気にのオシャレ打ち込みドラム「デデデデデデェーーーーー!」なんらかの音「シュゥゥゥゥイイイイーーーー!」からの、岡野昭仁の

「ゾ」

ふるえた。Mr.Childrenの桜井和寿が、

「このアルバムを聴いたら、音楽をやめたくなるような、また、もう僕らを目標にするなんて思わないくらい圧倒的な音にしたい」

なんて新アルバムのコメントで言ってましたけど、俺はポルノグラフィティ岡野昭仁の「ゾ」聴いた瞬間その日から「ゾ」って言うのやめました。「今まで俺の言ってきた『ゾ』はいったいなんだったんだ…」って顔真っ赤して泣いたし、こんな「ゾ」を言える昭仁の才能を心の底から羨んだ。俺が野原しんのすけだったらその場で「みさえーーーーっ!」つって爆発して死んでる。

と、それくらい『Zombies are standing out』における昭仁の歌声は完璧パーペキパーフェクトで、今までもリアル・ソング・モンスターだったのに更に拍車かかってて、ラスサビの「立ち上がれ Living dead」の「リ゛ィ」とか「夢見た日を」の「ぅぉをォーーーーー!!」とかもうただの鬼神。

いや、それもそのはずなんですよ。今回の作曲は昭仁本人がやってるんですけど、彼って「ハイパードM三角木馬ボーカリスト」で、誰も頼んでないのに自分で「誰が歌えんだよこんなん」って曲作って嬉しそうな顔しながら「やりすぎたテヘ♡」みたいなこと平然と言う変態なんすよ。

いっこ前のシングル『ブレス』も、絶対ファルセットとか苦手なタイプのボーカリストのはずなのに「それェーーー!(裏声)ぞれの、みちィーーーー!(裏声)がある!」とかウラゴエ・バケツ・チャレンジやってんの?ひと裏声ごとにバケツの水かぶるやつやってる?ってくらい意味わかんないタイミングのファルセットブチ込んだりとか、他にもグニャッグニャにメロディの高低差激しい曲『瞳の奥をのぞかせて』やら、F1みたいにスピードバカ速の息継ぎゼロ曲『真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ』やら、ストイックすぎてもう普通の曲じゃ満足できないんだと思う。しかも、大半の歌詞書いてる新藤晴一先生も大概で「お前ならこのメロディにこの歌詞当ててもこれくらい歌えんだろ」って平気でメロディに対してめちゃくちゃな譜割りしますし。

で、そんなデスマーチを経て今回持ってきたのがこの曲なんですけどウォイウォイ…たぶんこれ岡野昭仁にとって「最高に歌いやすい曲」なんですよ。声の乗り方とか明らかに違うしめちゃめちゃ気持ち良さそうに歌ってる。演奏自体は激しいけど、メロディの高低差もそこまで激しくないし、曲のスピードもちょうどいい、急なファルセットもない。それこそ『アポロ』だったり『メリッサ』だったりの、昭仁の一番の武器のスパーン!とストレートに響く高音が一番映える曲だと思うんですね。ゆえに最強。

そして歌詞。われらが新藤晴一大先生。 それを踏まえてどんな歌詞書きやがったんだと思ったら、バッチバチにメロディに乗る言葉選び、してます。本人が、「イントロのボイスエフェクト(当初はもう少し音程が高かった)から着想して書いた」「曲としてもスリリングでシリアスなテーマが合うけど『ゾンビ』がホラーでもあるしポップでもあるちょうどいいキャラクターだった」的なことを言っていたように、元々曲のイメージからそれに合う詞をつけていくタイプの作詞家なんですけど今回、詞の内容、単語、すべてにおいてアニマル浜口親子かってくらいの親和性。いつにも増して「このメロディにはこのフレーズしかない」っていうのをバチバチ当ててくるんで気んん持ち良くてヨダレ出そうになります。

新藤晴一の歌詞って、初期の頃はどちらかっていえば「文章としても読める歌詞」みたいなのを重視してるふしがあったんですけど、最近の手法として「日本語詞と英語詞を絶妙に混ぜる」ってのを多用してて、歌詞掲載サイトのインタビューでも、

「(良い歌詞とは?)メロに乗った時に、映える言葉。文学ではないので言葉単体で成り立っていてもしょうがないと思います。」

「(「やられた!」と思わされた1曲)『太陽は罪な奴」(サザン)。“高気圧はVenus達の交差点”、文章の意味とかじゃなく、メロと共に頭にスッと入ってくる。これが歌詞だと思います」

歌ネット:言葉の達人/新藤晴一さん

って言ってるように、言葉の意味だとか、歌詞カードに文字が並んだときの美しさだけじゃなく「歌詞」としてより洗練できるかみたいなのを考えてる感がめちゃくちゃあって、メロディに乗ったときに、岡野昭仁が歌ったときに、はじめて言語レベルじゃなくて本能レベルで理解できるような言葉選びしてて、「慈悲なき闇で War cry」とか正直1ミリも意味わかんないけど「わかる…」ってなる。 

このポルノグラフィティ2人のプロ中のプロの仕事だけでも十分に最高傑作なんですけど、今回はアレンジも最強にバケモン。YouTube公開されてる部分1番までの展開はソリッドというかわりとシンプルなデジロックだったのが、2番入った瞬間バグります。エコーのイジり方が一瞬壊れたんじゃねぇかって思うくらいの不協和音で普通にボーカル追い抜かしてくるんですけど、その中毒性もうただの麻薬。しかも、そっから曲の雰囲気が一段と変わって「怒り」とか「憎しみ」っていうただただ攻撃的なイメージの曲だったのが「切なさ」とか「悲しみ」みたいな感情も内包されて激しくて荒々しいんだけどめちゃくちゃグッとくる。『Zombies are standing out』はゴリッゴリのロックナンバーなんですけど、こんなんバラード以上にバラードです。その流れでCメロ→ギタソロ間奏→大サビに行くんですけど、ここなんてもはや聖歌。ドラマティックすぎて一生消えない鳥肌立った。

そしてまた無音の使い方がうんんまい。序盤でも書いた岡野昭仁が放つ宇宙一の「ゾ」、頭サビ、1番サビ、2番サビ、「ゾ」の一瞬、全ての音、消えます。「無音を制するものは音楽を制する」って有名な言葉があるんですけど、ポルノグラフィティ、無音の魔術師です。オーフェンと呼びたい。

 

声、メロディ、歌詞、アレンジと四位が完全に一体と化した『Zombies are standing out』。ちな現時点で「ポルノ ゾンビ」で検索かけるとけっこうな上位ページに、

「性的映像を見続けると脳がダメージを受けて「ポル脳」になり脳が収縮し中毒化し、常に新しい刺激的な映像を求めるゾンビ状態「ポルノ・ゾンビ」になる」

とか色んな意味で死ねる地獄記事が出てくるんですけど、これあながち間違ってなくて聴くと奇しくもまったく同じ現象、ポルノグラフィティを求め続ける「ポルノ・ゾンビ」になれます。死して生きろリビングデッド共。