骸骨道中膝栗毛   作:おt
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前回のあらすじ

デミ「モモンガちゃん!!早く私に気づいて!」

モモ「うるさいですね…」馬車ゴロゴロゴロ

デミ「あ、あぁ~ッ!」

モモ「はい。エ・ランテルから脱出。お疲れさまでした。」

デミ「うぅ……タイミング悪すぎたぁ……」

2週間前、知らない世界に放り出されたモモンガ一行であったが『王国は魔法技術が糞だからいく価値はないのでは』という懸念の声があり、結果、モモちゃんは帝国へと進むことになった。

しかし、この世界の神はなんだか、モモちゃんやデミちゃんのことがキライみたいで、完全にタイミングをはずしていまい、デミウルゴスの心イタイイタイなのだった。


16#それぞれの苦悩?

「あんな、約束をしてよかったのですか~?パンドラ様~」

 

不満そうな声が室内に響く。それなりに広い室内だが、窓等の外への繋がりが一切ないためか、狭苦しく感じてしまうようなデザインだ。

 

「今まで盗聴した内容や所蔵されている報告書を読んだ限りでは…問題ないでしょう!!」

 

さらに、動きが大きい人物が喋り始め狭苦しいに暑苦しいが追加される。某オーバロードがこの室内にいれば、余りの破壊力にひざを折ってしまうであろう演出である。

 

「まあ、これからの動向はパンドラ様に一任するって決めてますしー。戦略はプレイアデスのリーダーとしてそれなりですけど、政略はからっきしですからねー私。でもでも、これからは情報収集を第一に考えるから戦闘は出来る限り控えるようにって言ってたじゃないですかー?そこんところどうなんですー?」

 

「それを強くいったのは、あなたが面倒くさがって目の前のものや生物を破壊しながら進もうとするからですよ…普通に避けて進めば良いのにあれでは目立つでしょうに…」

 

「ええー歩くの面倒くさくないですかー?」

 

全く…とパンドラは肩をすぼめる。彼女が転移直後に桜花領域に引きこもりたいと駄々をこねていたのを思い出す。

 

見た目は清楚で神秘的な服装や姿をしているのに、なぜここまで中身が残念なのか。

他にも多くの残念姉妹を抱える、長姉のユリの苦労は計り知れない。

 

「一応、説明しておきますと今回の都市エ・ランテルで起きた騒動はカジットなるものとヤルダバオトなるものが手を組んでいるということが伺えます。」

 

パンドラがモーションを潜め、まじめな口調で説明をはじめる。

 

「さらに、カジットの目的は死の螺旋というこの世界独特の魔法儀式…。ヤルダバオトがこの目的を同じとしているわけではないでしょう。ヤルダバオトの真の目的は情報不足で読み取れませんが…。カジットより大きな規模で目的を捉えていると感じられる場面が多い。

…王国かはたまた別の国か、それぐらいかそれ以上の規模の目的であろうことは容易に想像できます。」

 

「ここからが本題ですが…。お嬢さんは、どうでもいいことに熱中しているおじさんといつまでも一緒にいてあげますか!!?」

 

パンドラがおどけた様にオーレオールに問う。

 

「そうですねー。おじさんと二人っきりてのは嫌ですね~」

 

「まあ、そういことをヤルダバオトも思ったんでしょうねぇ。法国の報告によるとヤルダバオトは現在はエ・ランテルには確認されていないそうですよ」

 

「ブフッ!!法国の報告って!!パンドラ様ナイスジョークですね!!」

 

「おっ!!!そこに気づくとはなんと勘の良いお嬢様なんでしょう!!」

 

「それほどでもないですよー…ということは、ヤルダバオトは今エ・ランテルを留守にしている…そうか!!だから、パンドラ様はあんな約束をあのおじいちゃんにしていたんですねー!」

 

「そうですとも!!戦闘をできるだけ避けるのはまだ基本方針ですが、ある程度の情報は集まりました!!カジットとやらと低級のアンデット、悪魔の群れを叩き潰すなど容易!!よって!!エ・ランテルの騒動の解決を提案させて頂いたのですよぉ!!」

 

「パンドラ様カッコイイです!!ポーズとかはカッコ悪いですけど!!」

 

「あっ…カッコ悪いですか?これ?」

 

少し、ほんの少し静寂がおこりオーレオールが口を開く。

 

「でも、ヤルダバオトがエ・ランテルに帰ってくる可能性だってありますよねー。そこんところは計算に入れてるんです?」

 

Natürlich(勿論)!!私達が出立すると同時に、この国の最高戦力の漆黒聖典とレベル80台の破滅の竜王がヤルダバオト討伐に赴くそうですよ」

 

制帽を抑え、うつむくTHE厨二病のポーズと共にセリフを言い終わるドッペルゲンガーは果てしなくダサい。

 

これを一部の人はカッコイイと思っているのが不思議だなー。とオーレオールは考えるが、別にいいか!と思考を放棄する。そして、思い出したように笑い始めた。

 

「ププぅ。そういえば漆黒聖典?でしたかぁ?盗聴されているの全然気づかないですねー。まじで面白すぎるんですけどブフゥ」

 

「まあ、至高の御方々の能力をあのレベルの人間では対処できないのは当然のことです…

私の行使できる本来の力の90%ですら!!彼らには遥か、高みにある能力!!ということですよ…」

 

「場合によっては私のバフが必要かと思ったんですけど、楽勝でしたねぇー。外の人間はやぱっり、下等ですよねー」

 

その言葉に全体的に斜め45度と形容できるポーズを解き、パンドラはオーレオールに姿勢を正し向かう。

 

「オーレオール様…その考えは改めて下さい。至高の方々に合流できるまでは何が起こるか分からないのです。人間にも私達を遥かに凌駕するプレイヤーは存在することは、この国の情報から明らかです」

 

至高の41人を話の引き合いに出され、オーレオールはシュンとする。自分の現状を再認識してしまったのかとパンドラは察する。

 

守るべき方はなく

守るべき場所もなく

そして、忠義を共にする仲間そして家族もいない。

 

それが、ナザリックのNPCにどれだけの精神的ショックを与えるのかは計り知れない。

しかし、そのショックを与えてでもこの部分は強く認識しなければならない。

 

モモンガは最後までナザリックを守ることに心血を注いでいた。たとえ、仲間に置いていかれようと。

 

親がそう願っていたのなら、子はそれを引き継ぎ叶え続ける。それが今のパンドラの行動指針になっていた。

実は、パンドラはモモンガの独り言や状況証拠から、この状況に陥った結論を自分なりに導き出していた。

 

それはユグドラシルが崩壊し、モモンガは最後に迎えにきた数人の至高の方々とリアルなる世界に避難してしまったというものだ。

 

つまりそれは

 

自分達はどうあがいても至高の41人に会えることはないということ…

 

 

 

 

「パンドラ聞いて驚くなよ!!スーラータンさんが久々にログインしてくれるらしいぞ!!」

 

(それは、それは…モモンガ様の喜ぶ姿が見させてくれたことに感謝せねばいけませんね。)

 

「それでも、最終日なのにこんだけしか集まらないのは悲しいな…

…畜生!!!なんでだ!!なんで!このナザリックを捨てることができるんだ!!ナザリックや!俺は…はもう無用の長物なのか!!?」

 

(お怒りをお沈めください!!どうか、悲しまないでください…私の姿を見てどうぞ、お喜びになってください…)

 

「こんなところで愚痴っててもだめだな…さて!!ユグドラシルの最後の日だ!!ログインしてくれるみんなのためにも、張り切って準備しなくてはな…まずは花火1000発だ!!みんな驚くぞぉ」

 

 

 

 

 

 

(私や他の者たちは置いていかれた…しかし、弐式炎雷様、武人建御雷様。モモンガ様をもう悲しませるのだけはお止めになってください。モモンガ様が幸せであることが…

私の何よりの幸せであります故に…)

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

「シャルティア…えろげってのは素晴らしい文化なんだぜ!そして、そのえろげの最高の部分を抽出した存在…それがお前だ!!」

 

「わた…わらわが最高の存在!!?」

 

「勿論さ!シャルティア。いえすろりーたのーたっち!!お前こそ俺の自慢の存在だ!!」

 

 

「むにゃむにゃ…そんなに褒められると、あそこがとんでもないことになりんす…zzz」

 

直に厳つい山肌に触れる場所に、あまりにも不釣り合いな存在が横たわっている。

その少女はこの険しい大自然のなかにいるのに警戒は皆無。

素敵な夢を見ているであろう顔はだらしなく、寝言を漏らしながらもにやけが止まる様子はない。

 

そんな、無邪気な存在に緑の巨体が近づく。少女の体の1、5倍はあろうこん棒を片手に携えたトロールである。

その顔は少女と同様に表情は緩んでいる。どうやら、今夜の晩飯を見つけられた喜びを隠し切れないらしい。

 

トロールがだらしないビール腹が上を向くほどに、棍棒を振り上げる。

もし、第三者がこの光景を目のあたりにしていたのなら、次の瞬間に訪れるであろう凄惨な光景を予測し目を背けることだろう。

 

ボシュ

 

トロールの棍棒が振り下ろされる前に、トロールの体から物質が貫通する音が鳴る。

 

「…ったく、どこをみてもトロール、トロール、トロール…しかもほとんどが初心者の頃にお世話になったような初期種だし。しかし、やっと人間種見つけられたよ。だみ声以外の声が聴けると思うと少しテンション上がってきますねー」

 

男がトロールに刺さっていた手を抜く。体格は明らかにトロールより小柄だが感慨のない態度からその男がトロールよりも遥かに格上なのが読み取れる。

 

「さてさて、こんなところで寝てるってどういうやつなのかね…ん?」

 

飄々としていた男がフリーズする。

 

「…えっ!?こいつシャルティアだよな?ナザリックのNPC!?」

 

 

 

 

 

(なんでありんしょう…この懐かしい気持ちは…)

 

安心する気配と形容できるものに包まれたような感覚をシャルティアは、睡眠によりまどろんだ意識のなかで感じていた。

 

ちなみにシャルティアには、睡眠不要の指輪が装備されているのでこの様に眠りこけていること自体、本来なら異常事態である。

勿論、アルベドやデミウルゴスはともかくシャルティアは、そんなことは微塵も考えていないが…

 

そんな、心地いい状態にあるシャルティアであったが何やら呼びかけられていることを察知する。

これが吸血鬼の花嫁であれば、むかつくし殺してやろう。そうそれなりに不機嫌なシャルティアが目を開ける。

 

「なんでありんすか?人の睡眠をじゃまするというのは、それなりに覚悟が出来ているということでありんすよね?」

 

不機嫌であることを顔全体で表現しながら、その相手を視界で捕える。

 

「お…お前ナザリックのNPCのシャルティア・ブラッド・フォールンだよな?久しぶり…?」

 

次の瞬間。シャルティアの口から絶叫が上がる。まさしく信じられないものを見たものの反応のテンプレといった流れである。

 

「えっ…俺そんなこわい恰好してるかな…?」

 

戸惑うシャルティアをみて、その男もローテンションで戸惑う。

 

絶叫が上がり

絶叫が上がり

絶叫が上がる。

 

――1分後

 

「ももももも…もしかしてでございますが、弐式炎雷様でしょうか!?失礼しました!!御身の前でこの粗相。シャルティア・ブラッド・フォールン!一生の不覚!!」

 

ようやく、ある程度?落ち着いたシャルティアが土下座で喋り始める。

 

「…!!そうだよ。おれは弐式炎雷であってるよ。しかし、またなんでこんなところで寝てたの?」

 

弐式炎雷は、今更ながらNPCが流暢に喋ったことに驚く。

MMMORPG――ユグドラシルでそんなことをすることは絶対無理であるからだ。

 

つまり、ここはゲームの中じゃない…

 

衝撃は大きいが動揺はしていない。シャルティアに会う前から不思議に思うことはあった。

トロールの部族らしき集団との接触。だみ声でなにを言っているか多少しか聞き取れなかったが確実に言葉を話していた。

 

(あんな不細工な顔で、日本語喋ってる時点でゲームのキャラと思うよな…普通。ってことは俺ゲームキャラじゃない普通?の生物殺しちゃってるじゃん…まっいいか)

 

元々の考えすぎない性格のためそこは、軽いノリでそこは流し、炎雷的に一番なぞであった部分を質問する。

 

「てか、こんなとこですやすや眠ってるってどういう状況?」

 

その言葉でシャルティアは周りを見渡し、わかりやすく愕然とする。本当に分かりやすい。

 

「えっ…えーと、私は第二階層で待機していた記憶しかないです!!お、お役に立てず申し訳ございません!!」

 

14歳ほどの少女が必死に土下座し頭を地に叩きつける姿に流石の弐式炎雷も焦る。

 

「えつ!?そんな必死に謝る?世間話じゃん!?ちょっと、もうちょい楽にしてよ。…えーと、確かアイテムBOXにあったはず…」

 

弐式炎雷がガクブルするシャルティアを努めて無視して、ちゃぶ台と座布団を取り出す。

 

「ほら、まあここに座って落ち着いて喋ってみ?ほら今お茶いれるから」

 

周りは岩山なのにこじんまりとしたくつろぎ空間が出来上がる。

 

空間が出来上がる頃には落ち着いたシャルティアが、お茶は私が入れます!!と血相を変えてバタバタしてるのを見て面倒くさと思ったのは言わないでおいてやろうと弐式炎雷は思った。

 

(ぺロロンさんはこういう鈍くさい女子が好きだったんだっけ?語ると長いんだよな…あの人も)

 

シャルティアがせかせか非効率的に動くのを見て、弐式炎雷は在りし日のぺロロンチーノを思い出す。

 

(俺も語ると長いけど、アインズ・ウール・ゴウンはそういうこだわり蘊蓄馬鹿多かったな…。建やんもまあまあだけど、博士とかタブラさんとかひどかったわ。大体、モモンガさんが聞き役にはなってたがなあ)

 

ここで弐式炎雷はあれ?と思う。モモンガや建御雷はどうなっているのだろうか?

 

(最初はゲームのバグかと思ったが…シャルティアがいる以上ナザリックのNPCは勿論。モモンガさんや建やんも近くにいるのでは…?)

 

シャルティアに遭遇したのは、弐式炎雷が情報を集めようと捜索を始めた初日。自分がこの見ず知らずの土地に移動させられてすぐ遭遇できたのだ。

これには嫌でも期待が高まる。

 

(モモンガさんや建やんがいたらこのゲームみたいな世界を一緒にクリアするってのもいいな)

 

ゲーム脳で弐式炎雷は楽観的に考えていた。

 

――シャルティア・弐式炎雷の現在地

  大陸中央トロールの国――

 

実際は、モモンガ達とは大きく離れた場所にいたのだが。

 

――

「亜人、アンデットときて次は悪魔らしいぞ。」

 

やれやれと余裕そうにバハルス帝国の長ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは呟く。ただ、その声色には隠し切れない――日頃から傍に侍るものにしかわからないであろう微量な揺らぎがあった。

 

その部分を見逃す無能な部下は帝国にはいない。結果として誰かがそのことを指摘するのだが、大体その役はバジウッドが引き受ける。

 

「陛下どうしたんですかい?すこし元気がないように思える感じですよ?」

 

「なんだ?そのフワフワした疑問は?まあ、元気がないというよりも怪訝に思っているというのが正しいな…」

 

周りの部下たちが耳を自分に傾けているのを確認しジルクニフは言う。

 

「今回の悪魔の首魁…ヤルダバオトだが、爺にも居場所の特定…さらには強さも分からない。ということだ。」

 

周りの人間がどよめく。フールーダ・パラダインの魔法は世界最高クラスであることは、帝国だけでなく周辺国家にまで轟くレベルである。それがきかない相手…。

 

「確か、聖王国の騒動を鎮圧したナーベもフールーダ様の探知にかからなかったということでしたね?」

 

ロウネが不思議そうに、少し禿げた頭を傾ける。

 

「そう、そこが私も引っかかっているのだ。爺の魔法が通じなかった相手はそういない…法国関係者以外ではな」

 

「つまり、陛下はナーベやヤルダバオトが法国となんらかの関係をもったものでないかとお考えになっているということでよろしいでしょうか?」

 

「断定はできんがな…ただあの国は最近、王国を本気で潰しにきている。ナーベはともかくヤルダバオトの騒動は、法国が裏で糸を引いていてもなにもおかしくはない」

 

「でしたら、帝国まで火の粉が飛んでくる可能性は低く見積もるべきでしょうか?」

 

ロウネの言葉にジルクニフは、端正な顔を歪め熟考する。そして、大して時間を空けず答える。

 

「いや…法国がくさいというのはあくまで推測の域をでん。油断した策をとるのは愚行だ。

…しかし、この調子では先日届いた聖王国の使節団受け入れは見送ったほうが良さそうだな」

 

わざとらしく手と首を振るジルクニフにバジウッドがニヤニヤしながらつっこむ。

 

「いやいや、陛下。聖王女が嫌いだから気が進まないってぼやいてたじゃないですか」

 

「女王と話ができないのは非常に、非・常・に残念だが例のナーベがいる一行が帝国に向かっているというのは非常に嬉しい事実だ。できれば取り込みたいがな…」

 

帝国…もっというとジルクニフは優秀な人材を欲している。戦場で今は亡きガゼフ・ストロノーフ戦士長を直接、勧誘した話はいまでも宮廷で話題に上がる。

 

(しかし、法国が絡んでいるとはいえあの男を失うのは非常に大きな損失だと思うがな…)

 

法国はなんだかんだ、人類の繁栄に繋がらないことは選択しない国である。ガゼフの殺害にも理由があったことをジルクニフも把握している。しかし、納得はできない。

 

(今、帝国と法国の国力には大きな差があるだろう…ガゼフが消えた分、モモン一行を取り込みたいが対ヤルダバオトの準備であまり気をさけないのは口惜しいな…)

 

まだ、見ぬ救国の英雄に思いを馳せるジルクニフであった。

 

――

 

「聞いていない…こんなの聞いてないぞぉ!!!」

 

生気の感じない地下室に男の怒号が木霊する。

 

カジットは混乱の極致とも言える状態に陥っていた。

最初はヤルダバオトとアンデットによる負のエネルギーボーナスステージともいえる現象に浮かれぱなしであったカジットだった。

 

本来、予定していた時間の1/4の時間でアンデットになれるであろう負のエネルギーが溜まり、カジットはズーラーノーンに伝わる転生の儀式をこころみたのだった。

 

(そう…あそこまでは良かった!!やっと、やまぬ胃痛から解放されると…)

 

しかし、現状をみて分かる通りいつまでたってもカジットの体に変化はない。

 

(なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜ)

 

コツン、コツン

 

混乱するカジットの下に聞いた覚えのある足音が近づいてくる。

カジットの胃はストレスで限界寸前までせり上がっている。吐かないのがカジット自身不思議なくらいだ。

 

「やあ、カジット。君の行った儀式は失敗に終わったみたいだね」

 

人の心にスッと入るような気着心地の良い声であるが、今のカジットには死神の出す死音としか感じられない。

 

「そ、そうみたいです…しかし!!まだ望みはあるはずです!」

 

カジットは必至に言い訳を発しながらも察する。目の前の悪魔は自分を殺す気であると。

 

「なぜ…だ。儀式が失敗したからか!?お前には関係ないだろ!!なぜ私を殺す!!?」

 

「そう取り乱さないでくれたまえ…別に儀式の失敗を私は攻めているわけではない。君の言う通り、私にとって君の儀式の成功の有無は、行き掛けの駄賃のようなものさ。ただ…」

 

カジットの体が何等分かに分かれる。

 

「この世界には復活魔法が存在するようだ…程度は低いようだがね。念には念を入れて燃やしておこう。おや?狙ってやったわけではないが、火葬になるね。ちゃんと弔われて良かったじゃないか…ん?」

 

デミウルゴスの顔が皮肉気なものから真剣なものに変わる。

メッセージを受信する独特のポーズをとりながら、デミウルゴスは内容を吟味する。

 

「なるほど、強者が釣れましたか。やはり、王都に向かわせて正解でした…確か、アダマンタイト級の一つはきっちり潰したので、もう一つですかね…?」

 

「しかし…憤怒の魔将と同レベル帯が二体。アダマンタイト級の冒険者だとするには無理がある強さだ…。これは法国のものの可能性…プレイヤーではない?王都が半壊したタイミング…」

 

デミウルゴスは、得られた情報から考えを纏める。しかし、断定するには情報が足りない。

 

(かの知謀の王モモンガ様であれば、これだけの情報でも状況と相手の思惑を断定できるでしょう…ウルベルト様であれば圧倒的な魔法でこの国ごと容易く塵にしてしまうでしょう…やはり、私はひどく劣っている。)

 

デミウルゴスの思考がネガティブになるのも仕方のないことと言える。

今回のデミウルゴスの作戦における至高の41人探しの部分は、1つの収穫もなかったからである。

辛うじて強者は釣れたが恐らく、プレイヤーではない。

 

(なるほど…これは試練だ!至高の41人!!かの方々が私の忠誠を高めるために課した試練に間違いない!)

 

油断すれば、折れそうになる心に喝を入れデミウルゴスは王都に向かった。

 

 

 

 

「おやおや…この灰には生命反応があるようですねぇ…これはなにやら大きな手掛かりになりそうですねぇ!!」

 

「こんなことしてて、本当に至高の御方々に会えるんですかー?関係ないならもう、寝てていいですかー?」

 

「そうですね…この場所は詳しく調べる必要がありそうです!!お嬢様はおくつろぎぃ下さってもよろしいですよ!!」

 

 

…to be continued

 

 

 

 

 




・オーレオールについて
オーレオールの性格は
書籍8巻のユリのセリフ。妹逹はシズ以外、性格に難有りといった内容と
不死者のoh二巻のちょっとユルいセリフから連想しました。
これを見れば分かると思いますが、完全にオリキャラです笑

また、7巻扉絵の100レベルNPC 集合絵にオーレオールがちらっと写ってるんですが
これ、右側がカルマ値(比較的)プラス寄りで左側がカルマ値マイナス値説がありますので、そこから推測してオーレオールのカルマ値は極悪で設定してます。

ちなみにコメントでオーレオール出してくださいって、コメントがついた時は少し焦ってました笑







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