こんにちは、らくからちゃです。
毎日、給料日を楽しみに生きております。今月は、半年に一回の通勤手当の支給が含まれていましたので、ホクホクです(*´ェ`*) いつもと金額が違うので、ちゃんと明細も見ておくかと思って封を切ると、見慣れない紙が入っていました。
君のお給料ちょっと上がったから、そのぶん社会保険料の金額が上がるよ。よろしくね!
ばーい人事部
なんということでしょう。増えた実感はまるっきりないのに、持って行かれる金額は増える...!圧倒的敗北感!!大変がっかりです。
ところで、皆様、健康保険料ってどれくらい払っているかご存知でしょうか?税金や年金と比べると、健康保険の話って、あんまり聞かない気がするんですよねー。健康に生活していると、あまり意識しない話かもしれませんが、知らないと損する要素も沢山あると思いますので、まとめてみます。
健康保険料の仕組み
給与明細を長雨ていると、お給料から天引きされる項目は色々とあります。
- 所得税
- 住民税
- 年金保険
- 健康保険
- 雇用保険
ざっとこんなもんですね。健康保険以外は、家族構成や貰っている額が同じなら、誰でも同じ金額ですが、健康保険の保険料はお勤めの会社によって異なります。この辺りは、以前記事にもまとめてみたのでよろしければ是非!
会社員の場合、それぞれの会社の参加している健康保険組合の運営している保険か全国健康保険協会の運営する「協会けんぽ」に加入することになります。ざっくりいうと、大企業が個別組合、中小企業が協会けんぽです。
どちらにせよ給与・賞与の額に保険料率をかけた金額が天引きされる保険料となりますが、その保険料率って結構違うんですよね。
以前調べた、従業員数が多そうな会社の保険料はこんな感じ。「社会保険料は折半」と良く言いますが、会社側が半分以上払っていればOKで、半分以上負担してくれている会社も結構あります。
会社名 | 従業員負担 | 事業者負担 | 合計 |
---|---|---|---|
トヨタ | 3.000 | 5.300 | 8.300 |
日立 | 3.700 | 5.000 | 8.700 |
パナソニック | 3.510 | 5.490 | 9.000 |
日本電信電話 | 4.560 | 4.710 | 9.270 |
ホンダ | 3.320 | 4.980 | 8.300 |
東芝 | 3.680 | 5.320 | 9.000 |
ヤマトホールディングス | 4.430 | 5.570 | 10.000 |
「協会けんぽ」の場合、保険料は、お住まいの都道府県によって異なります。こちらも前回作成したベスト3とワースト3でいうとこんな感じになります。
都道府県名 | 保険料率 |
---|---|
佐賀県 | 10.210% |
北海道 | 10.140% |
香川県 | 10.110% |
富山県 | 9.910% |
長野県 | 9.910% |
新潟県 | 9.860% |
こちらは基本的に折半ですので、本人負担額は、この半分になります。基本的に、健康保険組合(大企業)の保険料率のほうが、協会けんぽ(中小企業)よりも安いです。協会けんぽより安く出来る可能性があるから、個別の組合を作るのであって、高くなっちゃうなら解散したほうが良いってことになっちゃいますからね。
本人負担+会社負担の合算ですが、健康保険料を組合数でみるとこんな感じです。こうしてみると、結構ばらつきが大きいですねー。
(出典:平成 29 年度健保組合決算見込の概要を元に筆者作図)
こちらのサイトを見ると、本人負担が最も安いのはアステラス製薬の2.6%です。協会けんぽが概ね5%ですので、2.5%近くも差があります。これがだいたいざっくり額面の年収にかかってくると思えば良いので、年収500万円で年間12.5万円の差にもなります。これ、結構少なくない額ですよね。
大企業の健康保険は更におトク
じゃあ保険料が安い分、サービスが悪いのかというとそんなこともなく、基本的に大企業の個別健康保険組合のほうが手厚い保証が受けられると思って間違いありません。具体的には、以下のポイントが異なります。トヨタ自動車健康組合を例にみてみましょう。
1.高額医療費の上限
「医療保険なんて入らなくとも、医療費は月額の上限額が定められているから大丈夫!」ということは、聞いたことがあるひとも多いと思います。実際、どの保険に入っていても、月額での医療費の支払い上限額は、下記のように決められています。
一番該当する人が多いウで、だいたい8万円ちょいくらいでしょうか。何十万円も払うことから考えれば安いもんですけど、できれば支払いたくない額ですよね。それが大企業の組合に加入している場合、一月あたりで下記の金額を超えた場合、あとで差額がキャシュバックされます。
- トヨタ・・・2万円
- 日立・・・2万5,000円
- パナソニック・・・2万5,000円
病気や怪我をすると、何かと入り用ですので、この差は結構大きいと思いますよ。
2.疾病給付の上乗せ
また入院が長引き、働けなくなった場合も、月収の2/3はどんな保険に加入していても支払われます。ただこの金額に関しても、大企業の組合の場合、更に多く支給されるよう設定されている場合もあります。下図は、トヨタ自動車健康組合のケースです。
(出典:病気・ケガで仕事を休んだ時|トヨタ自動車健康保険組合)
お世話になるケースはかなり少ないと思いますが、それでもより多く・より長く貰える安心感はありがたいものですよね。
3.出産手当金の上乗せ
もう少し利用する可能性の高いものとして、産前産後休暇中に支給される「出産手当金」についても、上乗せして支給している組合もあります。下図は、パナソニック健康保険組合のケースです。
(出典:出産したとき|病気やけがをしたとき(療養の給付・家族療養費)|もっと知りたい『健康保険』のこと|パナソニック健康保険組合)
通常と比べ、月収の20%分の給付を3ヶ月受け取れますので、月収25万円でも15万円ほどは多く頂ける計算ですね。さらに一時金として受け取れる額を、数万円多めに支給している会社もあります。
4.埋葬料の給付
また、万一亡くなってしまった場合であっても、葬儀や埋葬にかかる費用を助成している組合もあります。下記は、東京証券業健康保険組合のケースです。
法定では5万円しか給付されないところ、被扶養者でも10万円、本人ならば月給1ヶ月分をどどーと乗せて支給してくれるそうです。
その他にも、保養所を持っていたり、フィットネスクラブを割引料金で利用できたりする組合もあります。身も蓋もない言い方をすると、病気をしても入院しても子供を生んでも死んでも元気に生きてても大企業の方がおトクという状況にあります。
なぜ格差が生まれるのか
じゃあどうしてこんな格差が生まれてしまうのか。単純に言うと、協会けんぽ(中小企業)は「出ていく金額が多く」「入ってくる金額が少ない」からです。
医療費は、年令とともに増加していきます。このことは、どんな保険に加入していても同じです。しかし協会けんぽの方が、加入者の平均年齢が高いため、支払われる医療費の金額が増大します。
(出典:協会けんぽの医療費の特徴について)
そのため加入者一人あたりの医療費は、年間で16%も高い金額になります。年齢調整をしたあとででも、5%ほど高い金額になっていますので、そもそも中小企業にお勤めの方のほうが、やや不健康なのかもしれません。
加えて大きいのが、大企業と中小企業の所得格差です。
(出典:協会けんぽの財政問題)
やや古いデータになりますが、それぞれの加入者の年収は
- 協会けんぽ・・・370万円
- 健保組合 ・・・536万円
と1.4倍近い格差があります。年収が少ないと、同じ金額を集めようと思っても、対年収の比率は大きくなりますよね。格差是正のために、国庫の補助も入っていますが、それでも格差が埋めきれておれず、所得の少ない人ほど負担割合が高い逆進的な状況であり「社会保障制度とは到底言えない状況」との指摘も、だよねと思えます。
国民皆保険制度の闇
中小企業よりも大企業で働くほうが有利になる仕組みは山のようにありますが、中には「儲かってるし、優秀なんだから仕方ないよね」と思うものもありますが、ことこの健康保険に関しては、「作られた格差」といっても仕方ないように思われます。
我が国では、全ての国民に、何らかの健康保険への加入を義務付ける「国民皆保険制度」をとっています。
任意加入としてしまうと、健康に不安のある人だけが保険に加入するようになり、そうすると一人あたりの医療費が高くなるため保険料が高くなってします。そうするとますます採算が取れると思う人(=健康に不安のある人)のみが加入してしまい保険制度が成り立たなくなります。そのため条件を満たした場合は、有無を言わず保険に加入することになっています。
俗に「逆選択」の問題と言われているものですが、みんなが安心して病院に行くことが出来る仕組みを作るため、すべての人に加入を義務付けているわけです。ところが、一緒に医療費を支払うチームを組む仲間が、社会全体の平均ではなく自分たちと同じような所得・健康状態の人たちに限定されると、富めるものはますます富み、貧しいものはますます貧しくなってしまいます。
例えば、首都圏のIT企業で作る関東ITS健康保険組合には、参加できる企業の条件として以下を設けています。
4.著しい低報酬月額の被保険者 (※1) がいないこと
(※1)標準報酬月額 118千円(8等級)以下の被保険者
5.被保険者の平均年齢が当組合の平均を著しく上回らないこと
6.扶養率については、当組合の平均を著しく上回らないこと (※2)
(※2)扶養率が1.0以上でお断りする場合もあります。
【 扶養率=健康保険で認定されている被扶養者数/被保険者数】
ざっくりいうと
- 貧乏人
- 年寄り
- 子持ち
は、保険料負担を増やす可能性があるから来るなということです。気持ちは分からんでも無いですが、本来の国民皆保険の趣旨と照らし合わせると、いかがなもんでしょうか?
更にそうして集めた資金をもとに、スポーツクラブに保養所、旅行まで分厚い加入者サービスを実現しています。まあスポーツクラブへの補助くらいは分からんでもないですけど、旅行代まで医療保険から補助してよいんでしょうか。健康保険料は全額所得控除されますけど、それを原資に遊びにいってるとすれば、脱税にも近い行為じゃないのかしら。
国民皆保険制度は、我が国の高度な医療制度の礎であり、なくてはならない社会システムのひとつです。その維持には、多くの国民の理解と賛同を必要とします。(NHKの受信料の状況を考えれば分かりやすいでしょう)それ故、こうした不平等を生み出すようなシステムは、些細なものであっても極力排除すべきです。
今回は取り上げませんでしたが、国民健康保険との格差問題や、後期高齢者支援金制度なども大きな問題です。目下、逆進性の高い消費税の増税を控え、格差拡大への懸念が高まっていますが、この機会に健康保険制度についても、考えてみても良い頃合いではないでしょうか。
ではでは、今日はこのへんで。