2002年のワールドカップの日韓共同開催は千載に悔いを残す出来事でした。日本人は相変わらず韓国に対しては強い差別意識を持っていますし、韓国人は植民地支配と差別の恨みを忘れてはいません、円滑に行かない可能性が高いのですが、僻地のサッカー小国が分不相応に開催したがっているのだから、2つで1人前でいいだろうと考えた、国際サッカー協会の思案がそもそも間違っていました。

 案の定というか、韓国が日本を貶めたとか、韓国が八百長をやったとかいった非難が日本人の間から噴き出してきて、韓国への敵意が世間で強くなってきます、そこに草創期のネット右翼が乗ったのです。

 2002年当時は参加者も少なく、ネットの中の韓国非難も混沌としたものでしたが、闇の中で嘘を言い合っているうちに、無職やアルバイトという自分たちの立場を韓国に絡めて正当化する虚構をネット右翼たちは紡ぎ出します。

 日本人は世界で最も優秀な民族であるから、自分たちも大変に優秀な人間なのだ、それが定職に就けないのは在日韓国人が横取りしているからだ、日本社会は有能な日本人を差し置いて、無能な韓国人が特権で有利な仕事に就けるような仕組みになっているのだ、といった嘘がネット右翼の耳には心地よく響きます。

 インターネット関連の機器や接続料が安くなって、社畜的な正社員ではないので暇はたっぷりとあるが、お金がないという人がネットの世界に入って来ると、日本は世界で最も豊かな国であるのに自分たちがどうして貧しいのか、それは在日韓国人が日本の富を盗んでいるから、豊かに国に生まれながら自分たちが貧しい暮らしをしなければならないのだ、といった貧しさの理由も在日韓国人に求める議論が支持されるようになります。

 日本は豊かで素晴らしい国だ、日本人は最高に優れた民族だ、だから自分も優秀で素晴らしい人間であると、日本を持ち上げることによって自分を最高の地位に就け、現実社会での不遇は全て在日韓国人の所為である、それは決して日本人が能力的に落ちるから在日韓国人に富と仕事を奪われたのではなく、在日韓国人が卑劣な犯罪行為を繰り返して、自分が得るべき富と、就くべき仕事を奪ったのだという虚構の体系をネット右翼たちは、デマを闇のなかでやりとりするうちに作り上げることに成功したのです。

 実際にはその年代は、バブル崩壊後の就職氷河期に学校を出た時が当たっていたとか、自民党の労働環境の規制緩和政策によって企業が正社員を雇用する必要がなくなったとか、日本企業の国際競争力が落ちたとか、そういった状況の中で正規雇用にならない人が多かったのですが、ネット右翼はそれを日韓ワールドカップで芽生えた嫌韓に乗って在日韓国人に奪われたことにしていまい、その時点では野党だった、民主党が在日韓国人に不当な特権を与えた、日本人の富を与えた、有利な職を与えたというにことにしてしまって、民主党の幹部は在日韓国人でありその支配下にある政党としてしまいました。

 現実離れしたものですが、これによってネット右翼は、与野党の関係を日本人と在日韓国人の関係に置き換えることに成功した上に、自分たちの職に関する不満や生活の貧しさに関しても、それが是正できる方法を自分たち的には手に入れることができたのです。


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