こんにちは、badと申します。
今日はジンの話です。
近年、日本で“プレミアムジン”がちょっとしたブームなのは皆さまご存知でしょうか?
プレミアムジンとは文字通り高級路線のジンのことで、私の肌感覚だと700mlで3,000円を超えるプライスタグをつけたジンはすべてプレミアムジンと呼んで差支えないかと思います。
日本でのブームの火付け役になったのは2016年に操業をはじめた京都蒸留所の「季の美」というクラフトジン(=「一般的に、小さな蒸留所でつくられる個性の強いジン」のこと)だと言われています。京都産の柚子や玉露などのボタニカルに伏見の水を合わせる、徹底的に地場にこだわったプレミアムジンとなってます。
国産ウイスキー大手2社も負けじと追撃します。
2017年5月にサントリーのプレミアムジン「ROKU(六)」が、2017年6月にはニッカのプレミアムジン「カフェジン」が相次いで発売となります。
そして今や日本各地のいたるところで個性豊かなクラフトジンが作られるようになりました。その理由は2つあると私は考えます。
ひとつは、ジンの製造工程は途中までウイスキーや焼酎とほぼ一緒なので、小さな地場の酒造メーカーでも参入しやすいからです。
そしてもう一つは、ジンは使用するボタニカル(ジンの風味付けに使われる草根木皮のこと)によって個性を出しやすく、そこに地場ならではのものを使用することによりその地域を代表する特産品になりうるからです。
とうとう2018年7月には、日本各地のクラフトジンの蔵元が東京・秋葉原に集結して試飲会をするという「ジンライブ」という大規模イベントの第1回目が行われるにまで至りました。日本ではマイナージャンルだったジンだけのオンリーイベントが行われる…例えるならリヴァイ兵長の同人オンリーイベントが行われるレベルの衝撃度、と言えば伝わりますでしょうか(例えとして適切なのか自信ありませんが…)。
そんな記念すべき第1回目のジンライブにお邪魔して心ゆくまで様々なプレミアムジンを堪能してきましたので、まずはその様子をお伝えいたします。
霊木や牡蠣の殻まで使ってるジンがあった
秋葉原UDXで行われたジンライブ。前売り2,400円(当日2,800円)のチケットを買えば誰でも参加できます。
イギリスを代表するプレミアムジンのひとつ「NO.3」とアメリカのプレミアムジン「ジュニペロ」のブース。ジンにドライヴェルモットを加えマティーニにして供しておりました。ぜいたく!
前回のバーショー記事(http://r.gnavi.co.jp/g-interview/entry/bad/4618)でも紹介したヘンドリクスジンのブースです。このキュウリスライスを入れる飲み方、なんとメーカー公式の飲み方「ヘンドリクス・トニック」だそうです。他にもキュウリのピクルスを使った「ヘンドリクス・マティーニ」などの個性的なカクテルレシピが公式HP(http://hendricksgin.jp/)にあるので興味ある方はぜひお試しください。
ウイスキーのアイラモルトで有名なアイラ島に自生する22種のボタニカルを使用したプレミアムジン、ザ・ボタニスト。
アイラでジンをつくっているならスペイサイドでもジンをつくってます。こちらカルーンジンはクール・ブッシュ・アップルをはじめ北部ハイランド産のボタニカルを5種使ってます。
バオバブの実やデビルズクローなどアフリカ産のボタニカルを使った「エレファントジン」、アメリカ禁酒法時代にバスタブで密造ジンをつくっていたことに由来する「バスタブ・ジン」をはじめ、個性豊かなジンがたくさん!
個性豊かなジンなら日本も負けてません。こちら宮崎の蔵元・京屋酒造による油津吟(ゆずジン)。宮崎産の柚子、へべす、日向夏などの柑橘系ボタニカルを使ってるのはもちろん、ジンをつくるベースはなんと芋焼酎(!)だとのこと。
和歌山発のクラフトジン、KOZUE(槙)です。みかんの皮、山椒などの和歌山産のボタニカルを使ってます。ここまでは普通なのですが、
なんと真言宗・高野山で霊木とされ仏様にもお供えされるコウヤマキをボタニカルに使ってます。この発想、すごすぎません?確かに和歌山といえば高野山ですけども!高野山近辺ではコウヤマキがたくさん自生してるそうですけども!味はめっちゃスパイシーでいままで飲んだことない風味がします。太古の時代は世界中で自生してたコウヤマキ、生息するのはもはや日本と韓国済州島のみだそうです。貴重!
広島発のクラフトジン、桜尾です。広島と言えばレモン、そこまでは読めますが、なんと牡蠣の殻までボタニカルに使ってます。まさにThis is 広島。
マルスウイスキーで有名な本坊酒造のプレミアムジン「和美人」です。マルスといえば信州のイメージですが、ウイスキーの蒸留所が長野にあるだけで、本坊酒造自体は鹿児島の酒蔵なので鹿児島県産ボタニカル9種を使ってます。ちょっと茶色がかった真ん中の瓶は、和美人をウイスキー樽で熟成させた限定品だそうです。残念ながら終売品ですが、もちろん本坊酒造は太っ腹なので試飲させてくれます。天国なのでは?
他にもここで紹介しきれなかった個性豊かなプレミアムジンはたくさんあります。興味ある方はぜひ一度プレミアムジンの世界をお試しください。
自宅でオリジナルの自家製ジンをつくってみよう
さて今回はさらに一歩踏み込み、自宅でジンを漬けて世界に一つだけのオリジナルジンをつくってみようと思います。ジンは一般的に蒸留の過程でボタニカルを漬けており市販のものはほとんどがこの製法でつくられています、が、蒸留後に漬け込む製法も存在します。その代表格が先に名前を挙げたバスタブジンで、そのようにしてつくられたジンをコンパウンドジンと呼びます。かいつまんで言えば、ジンは果実酒と同様に自宅で作れるということです。
まずは漬け込む食材を探しましょう。せっかくオリジナルジンをつくるということなので、むやみやたらに漬けるのでなく、テーマのある食材を選んで漬けると面白いと思います。
私事で恐縮なんですが、筆者はこの原稿を書いている時期に旅行に行っておりまして、たまたま通りかかった赤城高原サービスエリアで群馬県産の地場野菜をたくさん売っていたのでこれらを使って群馬をテーマにしたジンをつくろうと思い至りました。
ジンに合いそうな食材を…ということで群馬県産の梨・福耳からし(ちょっと辛い万願寺とうがらし)・米ナスを選んでみました。
ベースリキュールにはウォッカを使います。甲類焼酎でもつくれなくはないですが、度数の低い酒で果実酒をつけると果実から出る水分で薄くなってしまうので、度数の強い酒を使うのがお勧めです。
ジュニパーベリーを用意します。ジンとはジュニパーベリーを主にして様々なボタニカルで香りづけした酒なので、これがないとジンはつくれません。
ビンは果実酒用のビンや密封ビンを使うのが便利ですが、間口さえ広ければその辺の空きビンを使っても大丈夫です。ちなみに筆者は今回桃屋のメンマの空きビンを使用しました。
まず梨からいきます。実をジンに使うのはもったいないので、実は普通に梨として食べます。余った種をジンに使います。
種で果実酒がつくれるの?と思うかもしれませんが、果実酒の世界では果物の種を漬けるのは割とメジャーな技法です。
ジュニパーベリーと梨の種にウォッカを注ぎます。これで数日漬けましょう。
次はナスです。こちらは皮をジンに使います。ナス?なんで?と思うかもしれませんが、ヘンドリクスジンがキュウリを使ってるとのことなのでナスも以外と合うのではないかと考えてのチョイスです。
こちらもジュニパーベリーとウォッカを加え数日漬けこみます。
福耳とうがらしです。こちらも種のみを使用します。
ジュニパーベリーを加えてウォッカを注ぎました。
余談ですが余ったナスと福耳からしは揚げびたしにして食べました。美味しかったです。
3日漬けた梨ジンを味見…美味い!
さて、3日漬けた梨ジンを味見してみましょう。…おおお、これはジンだ!ジュニパーベリーのスパイシーな香りの奥底に、梨の甘さ、フルーティーなニュアンスがあります。これだけでも十分美味い。
続いてナスジンです。…笑っちゃうくらいナスの味がしました。これはナスだ。
福耳からしジンです。…めっちゃスパイシー。まさに辛口、ロンドンドライジンの風格です。
以上3種類のジンをブレンドして群馬オリジナルジンをつくってみようと思います。梨ジン10:ナスジン1:福耳からしジン2の比率でブレンドしてみました。メインはあくまで梨、隠し味にナスと福耳からしを入れたような感じですね。そして混ぜたものをウイスキーの空き容器に入れて完成です。ただの空き容器の再利用ですが、若干のウイスキーフレーバーも香りづけ程度に入っているということで。
これ試飲してみましたがいろんな味がしてマジで市販のジンっぽい完成度でとても美味かったです。ボタニカル1種の単独で飲むよりも、複数のジンを組み合わせた方が味に複雑さと奥深さがあって飲み飽きない美味さがあります。なにより本来捨てるものを利用してジンを漬けるっていうのがお手軽で楽しいですね。自家製ジンの作り方はまさに無限にあります。興味ありましたらプレミアムジンともどもぜひご自宅でもお試しください。
プロフィール
bad
1980年横浜生まれ、東京の下町在住。 趣味は写真。酒は人生。最近は娘の成長をブログに綴ってます。
ブログ:水蛇の背
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