朝鮮学校無償化をめぐる控訴審で言い渡された判決で、原告団は「不当判決」の紙を掲げた=大阪市北区(渡辺恭晃撮影)

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 朝鮮学校を高校授業料無償化の対象から除外したのは不当な差別で憲法違反にあたるとして、大阪朝鮮高級学校(大阪府東大阪市)を運営する学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市)が、取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁であった。

 高橋譲裁判長は、国に取り消しを命じて無償化対象に指定するよう義務付けた1審大阪地裁判決を取り消し、原告側の逆転敗訴の判決を言い渡した。

 全国5地裁・支部で起こされた5件の同種訴訟では初の控訴審判決。1審判決が出ている4件のうち唯一原告側勝訴とした昨年7月の大阪地裁判決が見直されるかどうかが焦点だった。

 高校無償化は民主党政権だった平成22年4月に導入。自公政権に交代した後の24年12月、下村博文文部科学相(当時)が朝鮮学校を無償化の対象としない方針を表明し、25年2月に文科省が省令を改正、大阪朝鮮高級学校などの朝鮮学校は対象から除外された。

 大阪地裁判決は、国が省令を改正して朝鮮学校を無償化の対象外としたのは「拉致問題解決の妨げになり、国民の理解が得られないという外交的、政治的意見に基づくものだ」と指摘。教育の機会均等の確保という趣旨から外れる改正であり、「違法、無効と解すべきだ」と判断した。

 その上で大阪朝鮮学園については「財産目録、財務諸表が作成されるとともに理事会も開催され、大阪府から学校教育法違反を理由とする行政処分を受けたことがない」とし、無償化対象として認められるとした。

 また、国側が、朝鮮高級学校が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)から「不当な支配」を受けているとの疑念が生じるとしていた点については、朝鮮学校の教育内容を「北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き、国家理念を賛美する内容の教育が行われており、朝鮮総連が一定程度関与していることが認められる」としながらも、民族教育の意義を踏まえれば「不当な支配」とは評価できないとしていた。

 朝鮮学校 在日朝鮮人の子供に母国語による授業や民族教育を行う学校で、学校教育法上は「各種学校」と位置づけられる。平成29年5月1日現在で高校生に当たる生徒は10校で1262人。大阪朝鮮学園の代理人弁護士によると、大阪朝鮮高級学校の今年度の在校生は257人。昨年度の卒業生は、32%が日本の大学、27%が朝鮮大学校、20%が専門学校にそれぞれ進学した。