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【社説】

大学入試英語 公平さに不安ないよう

 東大は二〇二〇年度から大学入学共通テストに導入される英語民間試験の成績提出を義務付けないと決めた。民間試験活用は国の入試改革の柱だが、公平さに不安を残さぬよう慎重に進めるべきだ。

 今の高校一年生がすでに対象となる制度変更だ。人生にもかかわる入試の方針は本来、可能な限りすみやかに示すべきだが、東大がこれまで決めかねたのは、いくつもの心配な点があるからだ。

 現在の大学入試センター試験の後継で始まる共通テストの英語で、「聞く・話す・読む・書く」の四技能を測る民間試験の活用が決まったのは、とくに話す力を測ることが目的とされている。

 だが文部科学省が認定したTOEICなど八種類の試験を公平に比較できるのか、住む地域や家の経済力などで受験機会の格差が生まれないかなど疑念は解消されていない。

 二三年度までは、入試センターも共通テストを作る併存期間とされているため、国立大学協会は、民間試験の結果に水準を設けて出願資格とすることや、共通テストの得点に加点するなどの形での活用をガイドラインで示している。

 東大は五神真学長が林芳正文科相に採点ミスなどトラブル発生時の国の責任を直接問うなどの異例の対応を経て、結論に至った。「現時点ですべての問題が払拭(ふっしょく)されたわけではない」(福田裕穂副学長)として、二〇年度については基礎的な英語力があることを示す一定水準の民間試験の得点を出願資格としたうえで、高校が調査書などで同程度の実力を証明することでも出願が可能とした。

 心配される負の部分を極力小さくすることに努めた方策といえる。方針を決めかねている他大学にも影響を与えるだろう。

 グローバル社会では話す力がますます求められるだろうという、改革の背景は理解できる。ただ小学校での英語教育もこれから本格化するという段階だ。大学入試という「出口」で拙速に成果を求めるのではなく、義務教育から大学に連なる一連の教育の過程で、話す力をどう強化できるのか、授業の工夫や支援にまずは軸足を置くべきではないか。

 民間試験の活用で、トラブルは起きるのか。起きた場合に、受験生に不利とならない解決が可能なのか。どんな学生が入学し、学びはどう変化したのか。二四年度以降の英語入試のありようを見定めるには丹念な検証を続けることが必要だ。

 

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